32 輝花賢玉トゥインクルソファイア

 クロニクルクエスト? いったい何の事だ? 何時イベントが始まってたんだよ!? しかも、MVPで報酬はギフトボックスだと!?

 創天神殿に行って、お布施とお祈りしないと運営のサービスを受けられないとか。

 しかも、ハートマーク乱用して、またシステムメッセージに弄られてんのか?

 それにしても、神殿ねぇ? そう言えばまだ、一度も行ってなかったなあ。

 ピシッ! ピシピシッ! っと何かに亀裂の入る音が頭の左側から聞こえて来る。

 バキンッ!! 完全に割れた音がすると。


¶システムメッセージ

白銀の髪飾りが自力で真名を開放しました。

神器【輝花賢玉トゥインクルソファイア】が本来の力を発揮します。


驚きましたね! まさか神器が自ら真名を開放するとは、流石は叡智の神器と言った所でしょうか。エルナさんも驚きましたよね?


 いやいや、神器が自らの真名を自力開放!? 後、システムメッセージ……いや、創天の意思は何でこんなにフレンドリーなわけ? 謎だわ~。


『 様、ようやくお声をかけることが出来ますね。おや?  様? あなた様のお母様のお名前は、リファネ・      様です。ふむ? お父様の名前は、アールス・     様です。なるほど。まだ、かの大神の大呪の影響が非常に強く作用している様ですね』


 おいおい、いきなり頭の中に直接声が聞こえて来たと思ったら、何か色々気になる事を言いだしたぞ? しかも、なんか勝手に納得してるし。


¶システムメッセージ

プレイヤーエルナのネームロストが一部解除されました。


やったね! エルナちゃん、お母さんとお父さん名前が分かったよ! 良かったね!


 !? え? いや!? 何なんだよ! 色々起こり過ぎだろ! 後、創天の意思! 

 お前、とうとうちゃん付け呼びかよっ!


 ふうっ、エルナの名前はエルナ・リファネ・アールスね。しかもまだ完全ではないと。それと、頭の中いきなり直接話しかけて来たやつ。たぶん、さっき自力解放したとか云う神器、【輝花賢玉トゥインクルソファイア】だったか?

 おそらくそれが、話しかけて来たのだろう。


『落ち着かれましたか、エルナ様? では。改めまして、わたくしの名前は神器【輝花賢玉トゥインクルソファイア】。エルナ様専用に作られ、エルナ様がお生まれになられた時より身に着けている神器の一つであり、神器達の意思を束ねた総体意思の顕現である、神器精霊と言われる物でもあります。愛情を込めて、ソフィーちゃん♪ と呼んでくださいね♡ それ以外は応じませんからね。エルナ様』


 おおぅ、クールに話してると思ったらソフィーちゃん♪ の所だけやけにテンション高いなおい。しかし、神器の総体意思の顕現である神器精霊ねぇ?

 アレかな神器達から感じていた意思の様な物の集合体って事なのかな?

 それに、エルナが生まれた時から一緒にいる見たいだし、色々知っていそうだが如何なんだろうな?


 取り敢えず、話を聞こうと【輝花賢玉トゥインクルソファイア】に意識を向け呼びかける。


『トゥインクルソファイアさん、ソファイアさん、ソフィアさん、ソフィーさん』


 などと、呼んで見るが答えてくれない。如何やら本当にソフィーちゃんと呼ばないとダメらしい。


『ソっ、ソフィーちゃん♡』


『エルナ様、何か御用でしょうか?』


 うおおおっ! めっ、めんどくせええええっ!


『ええと、ソ、ソフィーちゃんは私が生まれた時から一緒に居たって事は、私の事を色々知っているって事で良いんだよな?』


『ええ、もちろんですよ。今のエルナ様が、ユウキ シズル様で在る事も知っていますよ? ですので、無理して私なんて言わなくても大丈夫ですよ?』


 何だと!? 俺の事を知っているだと!! まじか~。


『なんで俺が結城 静流だって知ってるんだ?』


『それは、記憶を封じられる前のエルナ様から直接お聞きしたんですよ。ですので、記憶が封じられていて、何も分からないはずのエルナ様が、意外な事にしっかりと考えて行動なされるので、きっと前世の人格が甦ったのだと、ソフィーちゃんはピン! ときました』


 あ、自分で自分の事をソフィーちゃんって言うんだ。

 そして、さらりと記憶喪失では無く封じられていると来たもんだ。

 しかし、エルナ俺の記憶があったのかぁ、そういえば事象改変がどうのこうのとか言ってたがアレか? DDSの仕業なのは間違いないよなぁ。

 おそらくエルナが記憶を持っていたのは、イメージクリエイトのキャラクターが転生者であると云う事と、プレイヤーがログインしたことによる変化を、周囲の人達があまり違和感を抱かない様にする為なのかねぇ?

 まさに転生者として、問題が起こらない様になっているって事か?

 これは他の転生者も同じなのだろうか?


『エルナ様とシズル様は、個別に存在が確立している見たいですね。ですので今のエルナ様の事は、シズル様とお呼びした方が宜しいかと思うのですが、構いませんでしょうか?』


 別にフルネームで呼ばれる訳でも無いし、このやり取りならば他のプレイヤーに聞かれる事も無い。エルナの意識の活性化を考えれば、それは俺にとっても悪くない事だ。念のため他の人達に、あまり俺の名前を言わないなら、そう呼んで構わないと伝える。


『なるほどね。エルナにどんな風に言われていたのか気になるが。俺の事はまあ良いとして。まず聞きたいのは、エルナの記憶が封じられてるって言うけど、ステータスに? 表示の物が有るけどそれ関係ある?』


『ステータスにある?表示は基本何も関係無いですね。CONDに?表示が有るなら多少は関係しているから?で表示されているんですよ』


 え? 関係ないの? それに、CONDの?表示の状態異常が何か知っている見たいだが?


『まず、エルナ様の記憶を封じている物ですが。大神の力で在る為、エルナ様のBALVが1800を超え、神に成らなければステータスに影も形も表示されません。何故なら大神とは力の次元が違い過ぎて、神に成って漸く本来の力を発揮する大神と、相対する事が可能になるからです。要するに、弱すぎると何をされているのか分からないと云う奴ですね』


 え!? それって、大神関連で何かあっても、ステータスには一切表示されないって事になるじゃん! しかも、話を聞く限り、大神には神に成らなければまともに戦えない言われている様な物だし、エルナは可能な限り早く神に成らないと行けないって事じゃないか!


『そして、CONDにある?表示ですが、大神の力とは別に同じ作用をする呪いを、エルナ様に掛けた者がいるのです。正確にはその者が大神の力を借りて、呪いを掛けたと云うのが正しいのですが。ですので、大神以外の力が関わっている為、一応ステータスに表示されているのだと思いますよ』


 うわ~、これはむしろ大神の力だけの方が厄介だったって事じゃん。

 だってそいつのお陰で、大神の力に上乗せして呪いを掛けて呪いの力は強くなったけど、ステータスに表示されるから何か異常が在るって分かるし、何か対処しようと考え行動できる訳だからな。

 大神の力だけなら気が付かないでいた訳だ。そうなると確実に詰んでたな。


『ところでシズル様? 何時まで水に浮いているんですか? そろそろ、エナ様とチナ様がこちらに来られますよ?』


『おっと、そうだった。ソフィーさ……ちゃん、話は宿に戻ってから聞こう』


『かしこまりました。シズル様』


 俺はパチャンっと水音を立てながら起き上がる。丁度人の姿になったエナとチナが空から降りて来た。


「エルナよ。どうやら大丈夫そうじゃな。チナの奴との繋がりが、一瞬切れたのでのぅ。何かあったのかと来てみれば、この世界在り様に巧みに偽装された大神の力による結界があって、とても驚いたのじゃ」


「結界が張られていたの?」


 奴らが現れる時、空に紅い月が輝いている。それが、大神の力による結界だったと云うなら、なるほど理解できる。


「うむ。お主らが中で散々暴れてくれたお陰で、結界が弱まっていたのでのぅ、簡単に破れて直ぐに中に入れたのじゃ」


 あの視界にノイズが入った時に、結界が破れてエナからのパーティー申請が、エルナに届いたと云う訳か。


「む~、エルナはひどいのじゃ。でも、エルナをちゃんと守れなかったわちもひどいのじゃ……」


 『プラネットバースト』の爆発が思ったよりも凄くて、爆発で吹き飛ばれた事をチナが怒って拗ねているのかと思ったが。如何やら先程のエジェマ戦で、エジェマにやられたのが悔しいと言うのが混ざった複雑な気持ちの様だ。


「ごめんね、チナ。思ったより爆発が酷くなちゃって、それにチナは酷くないよ。チナ頑張りのお陰でエナが間に合った訳だしね?」


 チナを抱きしめてよしよしする。見た目が完全に幼女だから、ついつい子供の見たいに扱ってしまうな。


「わちは子供じゃないのじゃ!」


 頬を赤くし照れ隠しでそう言うチナは、どっからどう見ても子供にしか見えないよな~。いや~、チナは可愛いな~。

 はっ!! これがぼ……じゃなくて父性ってやつか!!


「ふむ。チナが活躍できる様に、わしも頑張って格を上げんとな。それに、格を上げて最高位神に成れば、チナを一気にパワーUP出来るしのぅ」


「エナってそんなに格が高いの?」


「? わしの格か? わしの格は3253じゃ。お主と会った後、わしは急いで強くなった方が良いかも知れんと思ってな、パワーレベリングと云う奴を知り合いに頼んで行っていたのじゃ。格を上げて転輪神様の加護も得たしのぅ、お陰で結構な無茶が出来る様になったのじゃ」


 おおっ! エナはリスポン能力を持っているのか! それなら無茶も出来るしLVを上げるのも早くなりそうだ。しかも、知り合いにパワーレベリングして貰っている見たいだし、最高位神に成るのも早いかも?


「まあ、見ておれ、直ぐに最高位神に成るからのぅ。そしたら、チナも一気にパワーUPなのじゃ!」


「本当にわちも、ぱわーあっぷできるのかのぅ」


「本当じゃ、最高位神は上位分霊が作れる様になるのじゃ。もちろん、既におる分霊を昇格させる事も出来るからのぅ。バッチリなのじゃ!」


 物凄いドヤ顔でエナが言うには、最高位神の上位分霊とは本体の四分の三の力、つまり75%の力を持った存在らしい。これはかなり強いのでは?

 覚えておこう。後、わし凄いじゃろ褒めて良いんじゃよ、アピールをするエナをなでなでしてあげる。


「ささ、町に戻るのじゃ!」


 撫でられて満足そうなエナとチナと一緒に、ブエナの町に帰るのだった。

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