31 紅月の眷属 紅月狂化エジェマ・バルグストス戦

 自身の手で生み出した、超高熱の光の柱が徐々に治まり周囲の熱も引いて行く。

 辺りの地面はガラス化しており、肝心のエジェマは全身鎧だった所為か融解した金属が人型の跡を残すのみであった。流石にこれで死んでないって事は無いよな?


 これで終わったと思いチナの状態を確認すると、先ほどのエルナの攻撃の影響かは分からないが気絶状態が治っていた。気配察知を意識すると、チナらしき巨大な生き物がこちらに向かって来るのが分り一安心した。チナは結構な距離を吹き飛ばされて居た様で、戻るには少し時間が掛かりそうだった。

 俺は完全に油断していた。まだ、空に紅い月が輝いていると云うのに。


 ジャラララララッ! と言う音共にエルナの体が動かなくなる。

 以前状態異常を、何とか解除しようとした時以来、見る事のなかった例の鎖がその姿を現していた。あっ、これは不味い。直ぐに俺は身動きが取れないならと、自身の星輝が湧き出る心臓を意識して、全身に溜める様に星輝を練り上げる。

 そうしている内に、エルナに巻き付き拘束してる黒い鎖の中から、黒い鎖に紛れている紅い鎖が表に出て来る。表面に出てきた紅い鎖は、ジャラジャラと音を立て何かを探す様にその鎖を伸ばしていく。

 ハイ、これはもう四戦目確定って事ですね。分かります。


 紅い鎖が、エジェマの人型の金属の跡に辿り着くと、その人型の跡の心臓辺りに突き刺さる。紅い鎖がドクンッドクンッ! と脈動し、おそらくは紅月様と呼ばれる大神の力が、エジェマに流し込まれているのだと直ぐに分かった。

 そして、形を取り戻して行くエジェマに紅い鎖が巻き付き、空に輝く紅月から紅い光と共に大神の力が降り注ぐ。形を取り戻したエジェマが今度は変化していく。

 あーっ、やっぱりな。パワーUPして、もう一戦の流れだと思ったよ。

 エジェマが、物凄い力を注ぎ込まれて変化していくのを見ながら、こちらも星輝を全身に溜め込んでいく。鎖が出てきて直ぐに星輝を溜めだして良かったと思う。

 ナイス判断だ俺!

 しかしだ、エジェマがパワーUP完了した後、エルナは動ける様になるのか?


 とうとう、エジェマのパワーUPが完了したのか紅い鎖の脈動が止まる。

 蘇ったエジェマは大剣と全身鎧のデザインが凶悪な物に変わり、その体は一回り……いや、二回りは大きくなっている。

 紅月の眷属の特徴であろう、紅い月を思わせる瞳はより強く爛々と輝く。

 そして、エジェマの全身から禍々しく強烈な紅いオーラが滾り噴き出している。

 ん? エルナからエジェマに伸びた紅い鎖、まだ繋がったまんま何ですけど?

 しかも動ける様にならないんだが?


「対象ノ四肢ヲ……切断……シ、捕獲シ……再度封印……スル」


 おいおい、エルナをダルマにする気かよ。

 しかも、封印って其れやられたらどうなるんだよ? しかも、動けんし。


 エジェマは喋りが可笑しく為っただけでは無く、カクカクと不自然に体が動いている。空に輝く紅い月の光が、エジェマを操るマリオネットの糸の様に見えて来る。


 エルナとエジェマは鎖で繋がったままだし、もしかしてこのままチェーンデスマッチすんのかよ! しかも、まだこっちは動けないんだぞ!


 然う斯うする内にエジェマが近ずいて来る。やはり動ける様にならん。

 もしかしてこれ、自力で動ける様にしないと駄目なのか?


 エジェマが大剣を構え、エルナの足を薙ぎ払おうと力を込めた瞬間。


『のじゃああああああああああ!』


 チナの雄叫びと共にシュン、ズドーンッ!! とエジェマに、竜の姿のチナが突っ込んできた! いや~、助かった! チナが突っ込んで来てくれなきゃ詰んでたぞ。


「敵対……竜種ヲ……確認、神性ヲ……感知……危険排除……スル」


 突っ込んで来た勢いのまま、チナとエジェマが戦闘を開始する。げっ! 物凄い勢いでチナのHPゲージが減っていく。アステルリヴァイブを掛けてるとは言え、これは不味い早く動ける様にならないと。

 やはり、今全身に溜め込んでいる星輝を使うしかないか?

 でも、今までの様に一発の攻撃だけに使うのでは駄目だと直観が告げている。

 これは今こそ異世界物あるあるのど定番、身体強化を試して見るべきであろう。

 そもそも星輝は世界の根幹を支えるエネルギーなのだ、身体強化に使えないわけがない! と云うか身体強化じゃなくて全能力強化も行けるだろ!

 エルナの全身に溜め込まれている、途方もない量の星輝を練り上げ星煉し、エルナの全身全てを強化するイメージを行う。具体的には、超高密度に練り上げられ星煉された星輝で、細胞の一つ一つまで自身の体全てが出来ていると強くイメージする。


『超星身!!!!』


 オリジナルアーツとして星輝を使った全能力強化が発動した!

 それと同時にチナのHPゲージが0になる。一瞬焦るが、アステルリヴァイブが無事発動しホッとする。

 俺はエルナを動けなくしている、原因であろう鎖を引き千切る様に体を動かす。

 すると先まで、全く動かせなかったエルナの体がスムーズに動き、バキバキバキッ!!! ガッシーャン!!! と凄い音を立てて大量の黒い鎖が砕けた。

 たぶんこの黒い鎖は紅い鎖を何とかしないと、またエルナに巻き付いて来るんだろうなと思いながら翼を展開し加速、チナに追撃を掛けようとするエジェマに渾身のアーツを叩き込む!


「させない! 『白翼双炎斬!!』」


 白翼炎斬のつもりだったが、双剣で繰り出した為またオリジナルアーツとして発動した。真っ白に輝く炎の剣と化した双剣の軌跡が真っ白に輝く二つの大翼を炎で描きながらエジェマの横っ面を叩き切る!


 ジュッシュバンッ! と真っ白に輝く炎の双剣がその超高熱で、エジェマの左腕を鎧の中身ごと焼き切り、その攻撃の勢いは胴体にも及んだ。直ぐにチナに『アステルリヴァイブ』と『アステルセラフィア』を掛ける。


 さっきのアーツは自分でやって見て相当な威力だったが、紅月に強化されたエジェマは、ダウンはしているがまだまだ倒せそうにない。

 だがそんな事よりも、エルナと繋がっている紅い鎖が再び脈動を開始して、エネルギーをエジェマに送り込み、折角焼き切った左腕も鎧も元に戻っていく。

 もしかしてこの紅い鎖、エルナの星輝を変換してエジェマを回復しているのか!?


 ダウン状態から立ち直ったエジェマが攻撃を再開する。

 エジェマはやはり戦巧者で、攻めに回られると守りに徹するしかない。

 何とかアーツを駆使して、いなして居るがアーツの強化が何時切れるか分からない以上、こちらとしてはエジェマの攻撃に何時までも付き合ってはいられない。


 エルナのアーツで回復,復帰したチナが、尻尾から大量の水出し激しく渦巻かせ竜巻の様にする。


『竜尾暴流撃じゃ!!』


 チナの繰り出したアーツが、エルナに夢中になって攻撃するエジェマの脳天に、その竜尾ごと連続で叩き付けられる。


 ガンッガンッガンッガガガッ!! ガガガガガンッグワッシャアアアアンッ!!!

 とチナが繰り出した十二連続攻撃に、エジェマが滅多打ちされている間に、俺はIFOの必殺技だと思っているJOBアーツを使う。


『プラネットブレス!!』


 まずは『プラネットブレス』で、既に超強化されているエルナを更に超強化だ!

 地面から虹色の光が立ちの昇り、大量のエネルギーがエルナに流れ込み強化し力が漲って来る。星輝による全能力強化『超星身』は、星輝がエルナ自身に何の負荷も掛からない所為か、力が漲る感じがしなかったのだが、『プラネットブレス』は違うらしく力が漲る。力が漲り充実するこの感じ良いな!!

 そして、次にやる事はエジェマを狙うのでは無く、エジェマとエルナに繋がっているこの紅い鎖の破壊だ!


「私を縛る鎖を断ち切れ!『ツインシューティングスライサー!!』」


 シャンシャンシャンシャンッ! と言って感じで繰り出される素早くそして静かな連続斬撃が紅い鎖を切りつける。アーツが終了すると、エルナとエジェマを繋いでいた紅い鎖はバラバラに切断されていた。


 チナのアーツを受けて動きが止まっていたエジェマが、アーツを繰り出そうと闘気を漲らせる。しかしながら、エジェマが放っていた禍々しく強烈な紅いオーラが、明らかに弱くなっているのが見て取れた。それにどうも紅月に強化されたエジェマは、上手く思考が働いていないのかチナしか見えていない。

 ならば、隙だらけの奴にまだ使っていないJOBアーツを叩き込む!


月齢紅弧斬ムーンエイジ・クリムゾンッ!!!!』


「星の怒りを受けなさい! 『プラネットバースト!!』」


 エジェマがアーツを放つタイミングでこちらもJOBアーツをぶっ放す。

 一瞬エジェマが反応したが直撃は免れない。エルナの身長と同じくらい極太の、虹色に輝くビームがエジェマに直撃し大爆発する!


 ドッガァーン!!!! と大爆発した時、「Σのじゃ!」と言う声がしてチナが飛ばされた様な気がするが気の所為だ。うん。

 空を確認すると、光は弱まっているが今だ紅い月が空に輝いている。

 つまり、まだ終わっていないと云う事だ。


 爆発の粉塵がまだ舞い散る中、紅く光る剣閃がそれらを切り裂きエジェマが姿を現す。あのアーツ、連続攻撃タイプのアーツなのか! しかもまだ続いている!


逆月齢紅弧斬リバースエイジ・クリムゾン!!!!』


 マジか! こちらに向かいながら、おそらくは専用の連続コンボアーツをエジェマが発動しやがった! 当然あの攻撃は受けちゃいけない、幾ら自動復活効果のある『アステルリヴァイブ』を掛けてあるとは言え、エルナがあの大剣を持ったエジェマにkillされたら如何なるか分からないからだ。

 見た所エジェマのダメージは大きく、あまり回復している様にも見えない。

 ここで決める! 後一つあるJOBアーツと、『虹翼爆裂』二発に、『双翼虹波爆裂煌』のアーツを連続で叩き込む!


「これでも食らいなさい! 『ツインメテオインパクト!!』」


 まずは、エジェマの動きを止める為に初っ端からJOBアーツを繰り出す!

 エジェマの連撃アーツ『逆月齢紅弧斬リバースエイジ・クリムゾン』と、エルナの超加速二連撃JOBアーツ『ツインメテオインパクト』が正面から打つかる。

 超高速で飛来する隕石の如く加速して浴びせる二連撃はドガッゴギンッ! と一撃目で動きを止め、二撃目でドゴンッ! という重たい音立て相手の連撃アーツを上回りエジェマの足が地面にめり込んだ。

 しかし、エジェマは止まらないで、先ほど使ったアーツをまたもや繰り出す。


月齢紅弧斬ムーンエイジ・クリムゾン!!!!』


 エジェマの月の月齢を現すかの様な連続斬撃が繰り出される。

 こいつ無限コンボかよ!


『虹翼爆裂!!!』『虹翼爆裂っ!!!』


 こちらも左右のの翼から二連続で繰り出す『虹翼爆裂』をお見舞いする。

 極彩色の高熱の光を纏った翼の連撃は、二度の大爆裂となりエジェマを高熱の爆発にさらす。明らかに、大ダメージを受けているエジェマが止まらない。

 もしかしてこれって、ハイパーアーマーか!


 エジェマが、今までの物の比では無い程に、強烈な闘気と紅いをオーラ噴出し更なるアーツを発動する!


「ゴガアアアアアア!!! 『無限月齢紅弧斬インフィニティエイジ・クリムゾン!!!!!』」


 マジかよ! 文字通りの無限コンボアーツ出して来やがった!

 だが、こちらも引くわけにはいかない。そろそろ強化系アーツが切れそうだ、『超星身』はともかく『プラネットブレス』は、クールタイムがゲーム内で18時間とめちゃ長い、だから此処で決めるしかないのだ。


「これで終われえええええ!! 『双翼虹波爆裂煌!!!!』」


 先ほどの物より大きな、本日二度目の極彩色の超高熱の光の柱がこの星に突き立てられた。


 うわっ! マジか! アーツ『双翼虹波爆裂煌』の影響が引いて来ると、エジェマはまだ立っていた。それも、先ほどよりも更に闘気を漲らせ、紅いオーラは物理的な圧力を感じる程に高まっていた。

 あっ、これ今から奴が仕掛けるのが最大の攻撃だわ。

 不味い、そう思っていると視界に一瞬ノイズの様な物が走る。

 そして、何かが砕ける様な音が響きエナからパーティー申請が来た。

 はっ! となり俺は直ぐに了承する。


「ゴオオオオオオオオオオオ!!! 『絶・紅断斬月!!!!!』」


 まさに、エジェマが大剣を振り下ろすタイミングだった。

 空には既に紅い月は輝いておらず、その代わりチナの倍近くは在る竜が、空からこちらに向かって落ちて来た。


流星水竜撃アクアミーティア・ドラコダイブなのじゃあああああ!!!!!』


 巨大な水の塊を纏った竜の姿をしたエナが、隕石の落下の如くエジェマを押し潰すように落ちて来た。


 ドッシャアアアアアアン!!!! と大量の水が爆発するように弾け、そのまま巨大な水の壁となって周囲を押し流す。

 これって自然災害物の映画とかでよく見る大津波じゃねぇか!

 俺も大津波となった水に飲まれて流される。

 薙ぎ倒された樹々が、水流にもみくちゃにされる中、何度も当たりHPゲージが結構減ったのは、しょうがない事なのだろう。


 まあ、何にせよ。死ぬこと無く勝てたのだから良かった良かった。

 そう思いながら、ぷかーっと水に流され夜の空を見ていると。


¶システムメッセージ

クロニクルクエスト【侵略者の魔手】がプレイヤーの活躍により解決されました。

プレイヤーエルナが称号【世界を守る者】を獲得しました。

プレイヤーエルナがMVPに選出されました。

プレイヤーの活躍に応じて報酬が与えられます。

報酬はギフトボックスに送られます。後ほど、ご確認ください。


プレイヤーエルナはアナウンスシステムが解放されていません。

ワールドアナウンスでは匿名となりました。ご容赦ください。


エルナさん良くがんばりましたね♡ イベント報酬の受け取りやIFO内アナウンスなど、IFO内での運営からの各種サービスは、創天神殿でお布施とお祈りをして貰えれば、受けられる様になりますよ♡ 最寄りの神殿でお待ちしておりますね♡


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