16 依頼を受けてみた

 冒険者として初めて受ける依頼は何が良いか?

 依頼が貼り出してあるボードを見ながら考える。

 ここは無難に恒常依頼でも受けるのが良いか?

 それとも、昼近くになっても未だに貼り出されている、他の冒険者が受けなかった依頼を受けるかだ。


 一つ目の恒常依頼はスライムの討伐、Cランク以上が受けられるもので無理。

 二つ目の恒常依頼がゾムルとか言う名前の巨大な水陸両性のタニシの討伐で、Eランク以上で受けられる。これは簡単に倒せるならあり。

 三つ目の恒常依頼はポムポンと言う果実の採取で、各枝の先端に一個だけ実を付ける大粒のブルーベリーみたいな果実。Fランクから受けられる。

 これも見つけられたら受けるかな。

恒常依頼は出来たらやる感じで良いかな?

 冒険者カードには倒したエネミーの討伐数を記録する機能があるし、討伐は適当で大丈夫だろう。


 さて、不人気依頼はと。

 ジュエルフロッグの粘液結晶の採取、Bランク依頼でなんか面倒くさそう。しかも、半年も貼り出されてる見たいだし。まあ、受ける事も出来ないし論外だな。

 次はキンパークラブの捕獲、もちろん捕獲なので生きたままだ。Eランクの依頼だが俺は初心者だし、捕獲は難しそうだから無しだな。

 残りの依頼はこれで最後か、フォレストキューカンバーの討伐ね。Eランクの依頼見たいだが直訳すると森キュウリだが?

 小冊子を見てみると。なるほど、こいつはナマコなのか。

 このナマコはモンスターらしく、放って置くと土の養分を奪って周辺の草木が育たなくなる厄介なモンスターらしい。

 不人気の理由はナマコの持つキュビエ器官を攻撃に使って来るのが気持ち悪いとか色々あるようだ。

 これなら精霊魔法で簡単に仕留められるのでは?


 この依頼をよく見てみると、町の周辺にナマコが大量発生していて、特に町の結界周辺を重点的に駆除して欲しい様だ。

 要するに、このナマコが大量に結界の周りに居ると、結界内の畑にも影響が出るって事かな? しかし、そんなに沢山居るのか。

 門の近くしか見てないから気付か無かったのかな?

 ま、これは何かできそうな気がするし受けてみようか。

 それに報酬も3万エアなら十分な額だしな。

 ちなみに、討伐場所が指定されている依頼にも冒険者カードは対応して折り、討伐場所を記録する機能も有るので、依頼主も冒険者も不正などが難しく為って居る。

 この機能はきっと運営が、ゲームによくある討伐数のカウントを分かり易くするために組み込んだのだろうな。


 早速、この依頼を受けるため受付に持って行き、エルナの専属になったカチュアさんに受理してもらう。


「エルナ様、この依頼を受けてもらうのはこの町にとって非常に助かります。気持ち悪くて実入りもイマイチ。その上町にとって非常に厄介の力を持ってる。この不人気依頼を受けてくれるのは本当に助かります」


「ええと、が……がんばります」


 どうもこのナマコいつも大量発生状態になるまで放置されがちな様である。

 で、大量発生すると広範囲攻撃魔法を使える上位冒険者が、適当に処理するらしいのだが。

 どうも今それができる冒険者が居ない見たいで、ダメもとで複数パーティ向けで出していた依頼のようだ。

 つまり、あの3万エアはパーティで分けることを踏まえての金額の様だ。

 パーティは六人までだし確かにそうなると微妙なのかな?

 まあ、俺はソロだしエルナがやるなら報酬は元の五倍出すそうだ。

 やはり、範囲攻撃魔法が使えると思われているからだろうな。実際使えるしな。

 なので、他のナマコ討伐の依頼用紙が全て回収された。


 カチュアさんから、主に結界周辺のどの辺りにナマコが居るのかを聞き、東門の冒険者用の出入り口から外に出る。


 教えられた場所に行くと長さ3m直径60cmは有ろうかと言う極太の巨大ナマコがゴロゴロいた。

 そいつらは、攻撃能力を備えたキュビエ器官を使い、地面から何かを吸い上げている様に見えた。

 それに、周りの木や草からも生命力の様なものを吸っている見たいだ。

 とりあえず、まあキモイ!

 それにキュビエ器官はそんな風に使わねえだろ!

 やっぱ異世界モンスターって事か。


「凄く沢山いるし、この光景はかなり気持ち悪いなぁ。うん、直ぐに片付けちゃおう!」


 前回はちょっと精霊さんに任せ過ぎだったように思うので今回話具体的に俺がイメージしたものを精霊さんに伝えて精霊魔法を使ってみよう。


「精霊さん、土地を枯らすあのナマコたちを逆にカラカラにしちゃって!」


 精霊さんに送るイメージはあのナマコがカピカピに干からびるイメージだ。


 MPが消費されると光を伴う熱を持った風が突如として吹き荒れる。

 風に触れたナマコは焼け焦げる様に急激に乾燥していく。

 力尽きたナマコは光の粒子になって崩れ去り、その後には緑色の石と何かドロップアイテムらしきものが残っている。

 ドロップアイテムどう見ても只の乾燥ナマコに見える。

 指輪に収納すると、やはり乾燥ナマコだった食用って書いてあるけど。

 石の方は異世界物あるあるアイテム魔石だった。

 どうも土と命の属性を持った魔石の様で、おそらくは先までナマコが吸っていた物がこれなんだろう。


「いよっし! どんどん行っちゃおう!」


 どんどん結界周辺に居たナマコどもを干物に変えていく。

 途中ナマコのドロップには見えないキラキラした綺麗な石を回収したのだが。

 それは、ジュエルフロッグの粘液結晶だった。

 確かこれ、Bランクの依頼の品だよな?

 こんな簡単に手に入ってしまったが良いのだろうか?

 とりあえず、ラッキーと思って置こう、後でカチュアさんに聞いてみよう。


「教えられた所は全部回ったと思うし、恒常依頼の物も探して見ようかな?」


 タニシは見かけなかったのでいいとして、ポムポンの果実がどんな味がするのか気になるので、ポムポンの木を探す事にした。


 小冊子によるとポムポンの木が有るのはザトスの森だと書かれている。

 この依頼が恒常依頼なのは、この果実が割とお高い果物だという事と、薬の素材としての価値がある上に年中取れるとなれば、恒常依頼にも成るという訳だ。


 森の中を探すと、所々開けた所がありその中心に木が生えている。

 どうも中心に生えているのは同じ種類の木ばかりで、細い枝が皆真上を目指すように伸びていた。

 葉っぱを一枚とって収納してみるとこの木がポムポンの木であると分かった。


「これがポムポンの木だって分かったけど。どの木も実が付いてないよね? これは、他の生き物に食べられちゃってるのかな?」


 またポムポンの木を見つけた。

 すると案の定と云うか、木の周りには体の大きなサルの群れが居た。サルたちは何やらしきりに上を見るので、俺も上見るとカラスの様な鳥が上空を舞っていた。

 見た目はカラスの様だが、サイズは現実のカラスの三倍はありそうだった。


 どうもポムポンの木の果実を狙っている、生き物の群れ同士がにらみ合っている状態の様だ。


「流石にあそこに加わるのは無いわね。それにしても、ポムポンの果実の採取難度Fランクは嘘じゃないの? なかなか実が付いてる木が見つから無いし、あんな状況にも為るなら割と危険度が高い様に思うんだけど?」


 とりあえず、この木は無理だな別のを探そう、何より今が他の木を探して果実を手に入れるチャンスだろう。それに無用な殺生はしないってね。


 そのあと何本か空振りしたが、まだ手を付けられていないポムポンの木を見つけ果実を採取することができた。


 せっかく手に入れたのだから一個は食べてみたいよね。このポムポンの果実、大きさはキュウイフルーツに近いサイズだ。かぷっと行っとこうか。


「は~むっ」


 カプッ! 噛みつくと張りのある皮が一瞬の抵抗を見せた後、ぷちゅんっ!と口の中で弾ける。味はブドウに似ており美味い、口の中で噛むたびにぷちゅんっ!と弾けるのが面白いアプリン程ではないが美味しい果物だ。


「ふっふ~ん♪ なかなか美味しいじゃない♪」


 よく考えたらエルナは昼を食べてないしもう直ぐ夜になる。

 今まで空腹を感じなかったのは本来エルナは食事をとる必要が無いのだろうか?

 なんか食べるのは何らかの理由でエネルギーが足りない場合か、趣味みたいな物の様な気がするな。


 それじゃあ、急いで町に戻ろうかな。それを飛べば直ぐだろうしね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る