15 ブエナの町の周辺情報とネズミの死骸処理
冒険者としての初依頼を受けたい所だが、その前にやる事がある。
それは、このブエナ町の周辺情報の確認だ。この町が、一体何処の大陸の何と言う国に在るのか、ブエナの町に一番近くての大きな都市は何処かなど。
周辺の地形や気を付ける事に、討伐対象に為りうる魔物やモンスター、採取対象になる様な植物鉱物など調べる事が沢山ある。
さっと見るだけだが、何も見無いのと見るのでは大違いだ。
なので、まだ部屋にいるカチュアさんに事情を話して本でも貸して貰おう。
「エルナ様、どうかなされましたか? 冒険者ギルドについて、まだお聞きに為りたい事があるならどうぞ仰ってください」
「カチュアさん、実は私つい最近始めて異世界転移を経験しまして。エルアクシアに戻ってきたら、このブエナの町の近くだったんです。けれど私はこの町の事はもちろん、町の周りの事も何にも知らなくて。この町が何処の大陸に在り、何と言う国に属しているのかも知らないんです」
カチュアさんは一瞬とても驚いた顔をしたが、直ぐに平静の顔を取り戻した。そして、異世界転移した者が、自分が知らない場所に戻って来る事も在るのかと何やら納得している。
「それは大変ですね。 エルナ様が宜しければ、私がお教えしましょうか?」
まず、ブエナの町はプティサルーンと呼ばれるこの星に三つある浮遊大陸の一つで一番小さい大陸だ。そして、ブエナの町はこの大陸に在る五つの国の一つ、ジュナ皇国と言う国に属している様だ。
俺の知るプティサルーン浮遊大陸と云えば、第三次大神大戦の最後に第三次に至るまでの全ての大戦の裏に居た。
【総べては見えざる繰糸の天幕】の別名を持つ大神アッガムスルートが自分が逃げる為に、【身隠し道隠し行き先隠しの外法道】の別名を持つ大神ユルグングルークユスを自らの内的世界から取り出し。
グランサルーン大陸と呼ばれていた大陸を真っ二つにした上に、次元放逐をしようとしたのを止めたことで出来たのがこのプティサルーン浮遊大陸だ。
ちなみに、浮遊大陸と言われる物はこの世界には元々存在しておらず。
世界変遷と呼ばれる異世界と交流を持つことで、その異世界の力をこの世界が新しいシステムとして、取り込む事で世界がバージョンアップする現象の事で。
浮遊大陸は第二次世界変遷後に徐々に出来上がったとされる、おそらくは【空界】の影響で出来たのだろう。
ブエナの周辺には、水竜ブエナに管理された五つのダンジョンが有るとの事。
その為この町は、ダンジョンからの恩恵と観光業で成り立っている。
ダンジョンが出現する様な場所は、モンスターが比較的出現し易く。冒険者にとっては管理されたダンジョンと、町周辺に出るモンスターと云う、まさにこれぞ冒険者の町という感じで有名である。
ちなみに、この世界ではモンスターと魔物は全く別の物である。
魔物はこの世界に元より居る動植物などが、魔力などの力の影響で特殊な力を得た物で、主に魔力の影響で力を得た物が多いため魔物と呼ばれている。
モンスターは第一次世界変遷により現れる様に為った物で、世界のエネルギーの循環が滞る事により現れる歪み化身である。
この歪みの化身であるモンスターは倒す事で、簡単に世界のエネルギー循環不順を解決できる。
その上に人々が簡単に利用できる資源やドロップアイテムを残す、ファンタジーゲームによくあるやつだ。
ちなみに、ダンジョンは土地や空間がモンスターに成った物で【歪界】の影響で出来た物である。
神であるエナがワザとダンジョンを出現させ、資源として有用な物は残して後は普通に討伐するらしい。
何でワザとかと言うと、神は世界の管理者なのでワザとでもない限り、長く住んで居るからと言ってダンジョンは出現しないからだ。
北には湖に湧き水を供給しているシレーネ山脈、南の方はザトスの森と呼ばれる動植物が豊かな森が有る。
南の区画にある東門から続いてる街道を進むと商業都市テナーンが在るとの事。
ちなみに、湖の名前はブエナ湖ではなくユナン湖と言うらしい。
そうして、町周辺の話をあらかた聞くとカチュアさんが「少々お待ちください」と言い、また応接室から出て行った。
「エルナ様に、これを渡すのを忘れてしまう所でした」
カチュアさんが戻って来ると小冊子を持って折り、それをエルナに差し出してくる。
「こちら、ブエナ周辺のモンスターと魔物、それと主な採取物をまとめた冊子です。どうぞお受け取りください」
カチュアさん曰くこの冊子は新規登録した冒険者皆に渡す物との事。
なので、ありがたく受け取ることにした。
早速、何か自分が出来そうな依頼を探そうと思ったが。
指輪に収納していたヒートペインラットの頭に胴そして、その血の事を思い出した。こんなネズミの死骸なんて、何時までも持って居たくは無いし、冒険者ギルドで引き取ってもらえるだろうか?
早く処分したいので訊いてみる事にした。
「あのう、カチュアさん。ヒートペインラットってご存知ですか?」
「ヒートペインラットですか? 知っていますよ。危険指定されているDランクの魔物ですね。彼らは集団で行動し非常に獰猛です。体液にほんの僅かでも触れると、まるで火で炙られた様に激痛と熱が出ます。遠距離攻撃の手段がないと、もれなく地獄絵図ができる魔物ですね」
やっぱりこのネズミ碌なもんじゃなかったな。
魔法で片づけたのが正解だった様だし、ますます、このネズミの死骸を早く処分したくなったぞ。
しかし、Dランクってどのくらい強いんだ? 小冊子に書いてありそうだな。
「実はブエナに来る前に魔法でそのネズミの群れを退治したんですが。その死骸を持て余していて、処分したいんです」
カチュアさんは一瞬動きが止まった後「流石エナ様が見込んだ方ですね」と小声で言いつつ。
「エルナ様はもしかして特別な収納魔法かアイテムをお持ちで?」
「あ~、はい、持ってますね」
話を聞くからに危険なネズミの死骸を所持していて、何の問題も無いのだから特殊な収納だと思うのは仕方が無いだろう。
「という事は安全にヒートペインラットの死骸を保管して置けると?」
「まあ、そうなりますね」
カチュアさんはしばらく何かを考え「分かりました。直ぐに、準備させますのでお待ちを」と言い応接室からでいて行った。カチュアさんには何度も応接室と往復させて済まないなあと思う俺だった。
カチュアさんが三度戻って来て開口一番。
「エルナ様、解体室の準備が出来ましたので付いて来て貰って宜しいでしょうか?」
おおぅ、どうやらエルナが安全にネズミの死骸を所持していられる所為か、只処分するという事では無くなりそうだ。
カチュアさんの後を付いて行くと部屋中シートで覆われた部屋に来た。おそらく、ここが解体室なのだろう、汚染を防ぐために部屋中シートで覆った様だ。
部屋の中には先客が折り、防護服と思われる物を身に着けた怪しい集団が居た。
カチュアさんは「私は防護服を着けておりませんので」と部屋に入らなかった。
いや、俺も着けてないんだが? まあ、僅かに触れるだけでアウトなネズミの死骸を回収して、全然平気にしているエルナは大丈夫だと思われたんだろうけど。
やっぱりあれは防護服かと思いながら、しょうがないので俺だけ入る。
「あんたがエルナさんかい? とりあえず、そこに一匹だけあのネズ公出してみてくれ」
一番手前に居た防護服の人がそう言うので、指差した台の上にヒートペインラットの頭と胴を指輪から出す。
綺麗にに首だと胴が別れたヒートペインラットの死骸だ。
少なくとも、一日は経過しているが、エルナから見ても鮮度にが落ちたように見えない。エルナは解体スキルを持ってるから何となくそう言うのが分かるのだ。
「ほぅ、首を一撃か。しかも、今仕留めたつっても可笑しくない位、鮮度が良いじゃねぇか」
プロの目から見ても鮮度が良いらしい。
この指輪の収納には時間遅延とか時間停止が付いてるのかもな。
「でよ、全部で何匹持ってんだ?」
「それを含めて三十六匹に、後は血が10lありますね」
「なるほど群れを潰したのか。良いだろう全部見せてくれや」
俺はネズミの死骸とその血を全てを出した。
防護服を着でいるので分かり難いが、解体師連中の中に研究者が混じっている様で、皆ネズミの死骸を詳しく観察して、これでこのネズミの毒の研究が進むとか言いている様だった。
ほどなくして、エルナは解放された。
何でもあのネズミその厄介な毒の性質の所為で、解毒薬や抗毒薬の研究が進んでおらず駆除にも困っていたらしい。
なので、あれだけの数が手に入ったのはギルドにとって運が良かったそうだ。
ちなみに、あのネズミ普通は死骸が残らないそうだ。
何故なら、火魔法の遠距離攻撃でまとめて焼き払うからだ。
なんせ焼き尽くしてしまえば、流石に触っても激痛や熱が出る事も無いからだ。
まあ、だから研究が進んでなかったのだが。
毒を魔法で何とかできないのかって? そりゃ対処可能な魔法は在るが、薬が有るのと無いのでは大違いだろう?
ヒートペインラットは頭と胴は一匹2000エア、血は10lで50000エアの合計122000エアで引き取ってもらえた。
ちなみに、小冊子で確認した所、Dランクの強さの目安は大体BALV300以上~600以下となるらしい。
う~ん、カンストと思われるLVが高い所為か。Dランクと言う、下位から中位に上がったばかりのランクなのに、同じランク内で随分とLV差があるもんだ。
ついでにランクも一つ上げて貰えた。
早くもEランク冒険者と言う訳だ。
しかし、装備が本体みたいな状態なのにランク上がって良いのかねぇ?
これで、正真正銘やって置くべき事はやったので依頼を受けてみようと思う。
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