13 冒険者ギルドでカードを貰った

 ギルドの入口はしっかりとした重厚な扉があるが、開きっぱなしで薄っすらと簡易結界の様なものが張られている。

 人の出入りが激しいから扉は開きっぱなし。かと言ってそのままだと、暑かったり寒かったり虫が入ったりする。だから簡単な結界を張ると。

 そして、しっかりとした重厚な扉は何あった時に、シェルターの役割をするという事だろう。


 そんなギルドの入口を通り抜けると。

 エントランスホールになっており、入り口から見て右手側に、冒険者と思われる人達が張り出されている依頼書を見ていたりする。

 どうも、一番混む時間帯はとうに過ぎている様で依頼書はまばらの様だったが。

 左手側にはテーブルとイスがあり、そこで何やらパーティを組んでいると思わしき人達が、仕事の打ち合わせをして居る様だった。

 正面に各種受付窓口が並んでおり、冒険者新規受付窓口と書かれた受付の列に並ぶため俺は窓口に向かった。

 しかし、こう言う観光地でも新規冒険者になろうって人は結構いるもんだなぁ。

 俺だけでなくて良かったよ。

 あ、そうそう受付の人は皆入口から見ても分かる、ギルドの制服らしき物を来た綺麗な女性だったよ。


 俺が歩き出すと。ギルドの中が静かになった。不思議に思って周りを見ると、みんな何かに驚いたような表情をして息を飲んで居る様だった。

 いやいやいや、いくら美少女だからってこの反応は可笑しいでしょ!

 驚き過ぎでは? 

 新規窓口の所まで歩いて来て列に並ぼうとするが、これから冒険者になろうという若者たちが、サッと身を引いて順番を譲ってくれ結局並ぶこと無く順番が来た。

 いやいや、やっぱり可笑しいでしょ! 本当にいいの?

 周りを見る、どうぞ! どうぞ! と自分が先に受付をしようという人がいない。

 なんだかズルしたみたいだなぁ。と思いつつ受付嬢さんに話しかけるのだった。


「冒険者ギルドにようこそ! こちらは冒険者新規登録受付窓口なります。新規登録でしょうか?」


「冒険者の新規登録をお願いします」


「新規登録ですね。かしこまりました。私はエルナ様の新規登録を担当するカチュア・マレットと申します。それでは、こちらの用紙にお名前に性別,年齢,JOB及びLV,加護の有無をお書きください。全て書く必要はありませんから。分かる所、教えていただける所だけでいいですよ」


 ほうほう、分かる所だけでいいのか。ありがたい。

 名前はエルナと、性別は当然,女性と、年齢は一応16と出てるし16歳と。JOBは分からないから書かない。加護は有ると。書き終わったので受付嬢さんに渡す。

 受付嬢さんは、灰色がかった銀髪で後ろの髪は軽くまとめてあり、前髪を左に流して髪留めで止めている。

 琥珀色の瞳にアンダーリムのメガネをかけた美人さんだ。エルナもかなり凄い物を持っているが、この人はそれを超えるものを持っている何がとは言わないが。

 それにしても、周りの人にジッと見れらているのは気になるよなぁ。


「なるほど。加護をお持ちですか。でしたら、こちらお越しください」


 そう言うと受付嬢のカチュアさんが席を立ち、新規受付を他の受付嬢の娘に任せて俺を奥に案内する。

 周りのこれから新規の冒険者になろうとしている人達や、冒険者と思しき人たちが「やっぱりなぁ」とか「オーラが違う……」など言っているのは気になるが。

そのまま奥に行くのだった。


 奥の応接室に通されると受付嬢さんが改めて名前を名乗る。


「では改めまして、この町でのエルナさんの専属担当受付になりましたカチュア・マレットです。よろしくお願いします。エルナさん」


「え? 専属? まだ登録してないんじゃ!?」


 おおっと! いきなり専属とは一体どう言うこっちゃ?

 まあ、ギルドに入ってから何か周りの様子がずうっとおかしかったが。

 それでもいきなり専属とは話が飛び過ぎでは?


「それはですね。順番にお話しますね」


 そう言って、右手でメガネのフレームを持ち上げる仕草をした後話始める。


「先ずですね。エルナ様の事は、エルナ様がこちらに来る前に情報が入っておりまして、エルナ様が冒険者ギルドに来る事は分かっておりました」


 なっ、なんだってー!

 いや、なんでエルナが来ることがリークされてんだよ……。


「え、えーっと」


「分かります。困りますよね。ですが、エルナ様はこの町の守護神である、エナ様が気に入られたお方なので仕方ないのです」


 むむっ! エナは水竜ブエナだと思っていたが違うのか?


「えっと、エナが守護神ってどういう事何でしょう?」


「エナとは、この町の名の由来たる水竜ブエナ様の人のお姿の時の名前です。守護神とは、比喩では無く神格を有する神の一柱だからですね」


 ほ~、水竜ブエナは神に至っている神竜だったのか。

 え? 公開設定資料で神話を重点的に読んでたのに知らないのかって? そりゃ知らないよ、何せこのエルアクシアには、【創天の戒め】より以前からいる全盛期の大神達と大戦争やってた神々が約2000柱。

 そして、戒め以降から現在に至るまでさらに約2000柱、合計約4000柱以上の神々がこの世界に居るのだから流石に覚えられないって!

 それに、それなりに有名な神じゃないと載って無かったようだしね。


「エナがこの町の水竜さんなのかなぁ、とは思っていましたが神様でもあったんですね」


「ええ、ですのでエルナ様がエナ様に気に入られ、エナ様自ら案内を為されているという情報は直ぐにギルドにも入って来ておりました。こちらに伺うとの事も」


 なるほど~。だからギルドの中の様子がおかしかったんだな納得。


「それでは、登録のお話をいたします」


 そうそう、登録しないとな。


「先ずエルナ様は加護をお持ちの様なのでお話します。この世界に敵対するような存在の加護でもない限り、試験なしで新規登録が可能です。ですので、差し支えなければどの様な加護をお持ちなのかお教えください」


 ふむふむ、だからいきなり専属とか言い出したのかな?

 エナが気に入っていて加護が有るとなればこの世界に敵対する様な者の加護であるはずがないと。

 そんな所かな? とりあえず加護の事を言いますか。


「転輪神様より回帰の加護を授かっています」


「まあっ! それは凄いですね! 転輪神様の回帰の加護となれば、将来は有望なのは間違いないですね!」


 え? 称号に回帰の加護なんてなかったって? いやいや、この加護はちゃんと持ってるんだよ。登録終わったら説明するよ。


「ええ、転輪神様の加護があれば寿命以外で死ぬ事は先ず無いですからね。冒険者は向いてると思います」


「はい。確かに転輪神様の加護なら冒険者は向いていますね。ですが、まずは冒険者ギルドの規定などのお話をさせていただきます」


 所謂、冒険者ギルドにおけるルールの話と世間一般に冒険者ギルドがどの様な立場にあるのかという話であった。

 依頼には期限があるとか、依頼期限に仕事を完了できなかったらとか。ギルド側にも依頼主側にも不備がなかったか調べたう上で違約金の話とか。個人で仕事受けても良いがその場合はギルドは保証しないとか。

 あとは一般的な常識を持った行動を心掛ける事や、冒険者ギルドは国際組織だから問題行動が酷い人は、カードを取り上げられ除名されるとかである。

 それらを聞いた上で冒険者になるのかと聞かれたので、もちろん、YES! と答えた。


「それでは、手続きをして参りますので、少々お待ちください」


 カチュアさんは手早く必要書類に記入し、書類を持って応接室を出て行った。


 カチュアさんが戻って来るとトレイの上にカードを載せて持って来ていた。

 これが異世界あるあるお馴染みの冒険者カードか!


「エルナ様の新規登録手続きは無事終わりました。こちらが冒険者ギルド証明証カード。皆様が冒険者カードと呼ぶものです」


 カチュアさんがカードを見せてくれる。

 おおっ! これが冒険者カードかテンション上がるなあ!

 あれ、まだ自分が書いた最小限の情報の事しか載ってないぞ?


「カードのご説明をいたします。カードに触れると自動的にエルナ様の生命力と魔力それに魂の波長を記録し。その後にギルドの規定による冒険者ランクや冒険者としての活動の情報が記録されていきます。ギルドにお越しいただくと自動的にギルドネットワークのデータバンクに情報が更新されるようになっております。この事から冒険者カードは信頼性の高い公式な個人の身分証明証となっています」


 なるほどね~。確かに身分証として申し分ないな。

 カードの情報を偽ったり誤魔化したりするのは難しそうで、ギルド側も細工なんかで不正を働くのは難しそうだ。

 ちょっと気になるのは、魂の波長を記録するという事はプレイヤーの事がある程度判別できるのでは?

 その場合、キャラクターを二体作って、その両方でゲームをしているプレイヤーはどう判断されるのか? という事だ。気になるよな。


「それでは、エルナ様カードをお受け取りください」


「それじゃあ」


 カードを受け取る直ぐにカードの変化が起きる。

 白色のシンプルな文字だけのデザインだった物が、青色をベースにキラキラとした金属粒子が浮かび上がり、さらに金の縁取りが現れる。

 カードは光の加減で様々な種類の青色に変わり、それと一緒に金属粒子がキラキラして豪華で綺麗なカードになった。カードにはFのマークが表記されている。


「エルナ様、改めまして冒険者ギルドにようこそ! この町にいる間よろしくお願いしますね」


「こちらこそ、カチュアさんよろしくお願いします」


 その後は、冒険者のランクについて教えて貰ったり依頼の受け方など聞いた。

 ランクは一番下がFランクで一番上がGGGランクとなる。間がどうなってるんだとか思うだろう。なのでこう為っている。

 F<E<D<C<B<A<S<G<GG<GGGと言うランク分けである。

 ちなみにGランクはGODのGで神の事。SランクとGランクの差は神格を得たのか得て無いのかだけが違いである。


 登録も終わったし。回帰の加護を語ろうか。

 ちなみに、エナのお蔭で登録料は無かった。

 正確に言えば受け取って貰えなかったんだけどね。

 本当は2000エアもするらしい。

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