11 ブエナの町でお買い物とのじゃロリ美幼女

 〈水竜ブエナの町へようこそ!〉という看板が、町の入口へと通じる大きな道に立っている。この前見たような轍道ではなく、きちんと石畳で舗装された道、つまり街道に出たという事だ。ほほぅ、この湖には水竜が住んでいるらしい。いきなり、ファンタジーでお馴染みドラゴンがいる町かぁ。ドラゴンに会えるかどうかは分からないが、ちょっとテンションが上がるな。

 何でちょっとかって? そりゃ、美少女の方がテンション上がるだろ!

 はい、と言う訳で俺です。


 町の入口が見えて来た。家々が並んでいる所まではまだまだ距離があるが。結界の境にあたる所に門と詰所の様なものがある。門の前には馬車や旅装の人達が並んでおり、町に入る手続きをしている様だった。

 俺もそこに並ぶ事にした。門の横にも看板があり〈水竜ブエナ見学ツアー受付中〉などと書かれている。どうやら水竜ブエナは気性が穏やかな竜の様だ。ここは、観光業がメイン産業の町なんだろうなぁ。

 あ、先から文字が読めてるの気になる? 基本的な言語はスキルとか関係なく、話せるし読めるし書けるんだよ。0次スキルとか云われる事もあるらしいけどな。


 並んでいる人達から、ガン見されているのを感じながら順番が来るのを待っていると。ようやく、俺の順番が来たらしい。

 門の所には受付があり、眼鏡かけた気難しそうな青年が受付を担当している様だ。

 青年はエルナ見て一瞬驚いたように、はっ! と息を止めたが、直ぐに気を取り直してこちらに質問してくる。


「ブエナにはどの様な御用で来られましたか?」


 どんな用で来たか、か。とりあえず、本当の事を云うか


「異世界転移現象で戻ってきたら。このブエナの近くに転移して来たようなのです」


 受付の青年はまた驚き何かを察した様な顔をして「それは、大変でしたね」と言ってエルナを労う言葉で答えるのだった。嘘は言ってないよ?


「何か身分を証明できるようなものはをお持ちですか?」


「実は異世界で、無くしてしまった様なんです」


 え、これは嘘だろって? 記憶が無いから分かりません。


「それは仕方がないですね。ではこちらにお名前記入して貰って宜しいでしょうか?」


 渡された紙にエルナと書き相手に返す。


「ふむ、エルナさんですか、分かりました。では、あちらの詰め所に行ってもらい。犯罪などを犯していないか、判別を受けてもらいます」


 おお、これは異世界物あるあるの謎技術で犯罪歴とかを調べる奴じゃん! これが異世界か! ゲームだけど。


 詰め所の中にある部屋に案内される。俺以外にも判別を受けている者が居た様で一人一人順番に判別をしている様だ。

 エルナの番が来て部屋の中に入ると。中には女神と思しき像と、その像の前に置かれた、白い水晶の柱の様な物が有るだけの部屋だった。

 一人一人チェックするのは犯罪者が居た時に捕らえ易くするためだろう。使い方は聞かない直観のお蔭で分るからだ。


 白い水晶の柱の様なものに近づき手をかざす。この判別装置の使い方はそれだけだ。

 手をかざすと白く光る。

 何も問題と判断されたようで町の結界を通る事が出来るようになった。

 あの女神像のはおそらく大神テナステュリスであろう。

 【映し解き明かし開明す照魔鏡】の別名を持つ大神テナステュリスは、その別名からも分かる通り鑑定などの奇跡の御業を持つとされる大神だ。

 エルアクシアに住んでいるらしいので、そのうち会えたりするのだろうか?


 俺は公開設定資料は大神や神々の神話などを重点的に読み込んでいたからな。

え? 何でかって? そりゃファンタジーで神とか大神とか言ったら絶対美少女か美女以外ないでしょ!! と言う訳でこんな知識があるのさ。どうもこれエルナの知識スキルにも反映されてるっぽいんだよなぁ。

 それに人と話す前は、エルナも緊張してたけど。いざ話し始めたらエルナの緊張なんて直ぐにどっか行ったな。


 そうして、門を潜り抜け結界の中に入る。ようやくセーフティゾーンに入れたと思っていいのかな?

 結界の中は草原が広がっており、放牧されている家畜達がのんびりと過ごしていた。所々結界の中継点と思われる金属で出来た柱の様な物が立ち、草原の先には小麦畑が広がり、他にも作物を栽培しているのが見えた。

 早々、現実と全く同じ動植物が普通にいるそうなので小麦畑であっているはずだ。アプリンとは別に、ちゃんとリンゴが有ると云うのも確認した。アプリンはまんまリンゴ味だったからな。何で確認したかって? そりゃ、アプリンを確実に大量購入するためだよ! まずはアプリン買わないと。


 ようやく町中に入ったぞ。水竜ブエナのキャラクターグッズやそのブエナをモチーフにした食べ物の屋台などが並んでいる。いや、まんま観光地だな。この道は特に外から人が来る街道だから余計にそうなのだろう。

 水竜饅頭とかまんま水饅頭である。饅頭は1個10エア、日本円で100円位である。ちなみに、通貨はエアで1エア大体10円位である。


「おじさん、水竜饅頭二個ください」


 水竜饅頭を買うため20エアを取り出しおじさんに渡す。


「おっ……、おう! お嬢ちゃん毎度あり。お嬢ちゃん凄く綺麗だから、おじさんオマケしちゃうよ」


 何とおじさんは水竜饅頭を買った数と同じ分袋に入れてくれた。おお! 何かオマケし貰えたぞ! これが所謂、美人は得するってやつか!

 とりあえず、一つを残して指輪にしまう。もともと一個だけ食べて残りは後で食べようと思っていたからね。

 ハムッと、水竜饅頭食べると。ひんやりと冷たくてプルンとした食感に、イチゴの様な酸味と甘さを感じる、果汁のたっぷり入ったソースが口の中に広がる。餡子ではなかったか、予想とは違ったがこれはこれで良いな。


「水竜饅頭美味しかったな~♪ さ、アプリン買わなきゃね」


 町の人にアプリンが売っているお店を教えてもらい直ぐに向かった。

 その道には町の人達の生活のための市場が開かれていてヨーロッパのマルシェ? 見たいな光景だった。

 そんな市場の一角に屋台ではなく店舗を構えているお店。

 〈水竜の御用達 果実のサルマン商店〉と書かれた看板のお店が、アプリンが売っていると言われたお店だ。


 サルマン商店は店の外からでも分かるくらい、これでもかと果物が並べられており、果実の甘い香りが実に良いお店だ。アプリンは外にはなかったので店に入る事にする。外に並んでいる果物も様々な物があったが、店の中には現実でも見かける果物がちらほらと見かけられた。

 そんな果物たちの一角を大量のアプリンが占拠していた。

 通常のリンゴ味のアプリンの他に紫色の葡萄味にオレンジ味、色は通常のアプリンと同じだがイチゴの柄のような模様したまんまイチゴ味のアプリン。どうやらアプリンは味が分かり易い見た目をしているらしい。

 あ、水竜饅頭に入ってたのはアプリンではないよ? 最初からソースが入ってたわけだし。


「アプリン~♪ アプリン~♪」


 ウキウキしながらアプリンを吟味してると。


「なんじゃ、えらい楽しそうじゃの~、おぬしアプリンが好きなのかのぅ?」


 おおぅ、唐突にのじゃロリ美幼女に話しかけられたぞ。そしてパッと見どう見てもヒューマンではなかった。

 少し暗めの艶々の水色の長髪にガーネットを思わせる暗赤色の瞳、ぷにっとした白い肌に二本の立派な金色の角が両側頭部から生え、髪と同じ色のゆったりとした服に髪と同じ色の艶々鱗の尻尾がお尻から生えている。

 身長は120cm位だろうか6~7歳くらいに見える。ドラゴンニュートかな?


「うん♪ そうなんだよね~♪」


 おっと、まだウキウキ気分が抜けてないぜ。


「そうかそうか、わしもアプリンは好きじゃが、わしのおすすめは此れじゃ」


 そういってのじゃロリ美幼女が差し出したのは、さくらんぼの様な見た目をしているけど、イチゴの仲間であるチェリーベリーだ。あ、植物学のスキルが仕事してる。

 

「それじゃあ、試食してみようかな」


 おすすめされたチェリーベリーを試食する事にした。


「うむうむ、試食は大事じゃな、店主わしも試食したいのじゃ」


 店の店主がはいはい、という感じでチェリーベリーを持ってきた。明らかに美幼女には試食というには多すぎる量が持ってこられた。

 う~ん、もしかしてこの子が水竜ブエナなのだろうか? 店の看板に店主の慣れた様子と、けれども大切にしているのを感じる態度といい。そんな感じを受ける。

 まあ、チェリーベリーの試食をするんだけど。


「はむっ」


 むむっ! これは、やはり水竜饅頭に入っていたソース使われた果物に違いない。

 饅頭に入っていたソースも良かったがこのベリーその物の味も良い! 幾らでも食べれちゃうやつだなこれは。

 のじゃロリ美幼女もチェリーベリーをパクパクと食べて幸せそうである。


「店主さんアプリン各種100個にチェリーベリーをこの子と私に100個づつお願いします」


「随分と買いますね~。しかもこの子の分もですか? よろしいので?」


「あの子に進めてもらったチェリーベリーがとても美味しかったですし。あの子もアレだけじゃ足りないでしょ?」


「はっはっはっ、なるほどね。確かにあの子にはアレだけじゃ足りないだろうね。はい、それじゃあ30400エアになるよ」


 という訳で、お支払いをする各種アプリン100個、計500個は30000エアで1個60エアだ。チェリーベリーは1個2エアで400エアか、アプリンって結構高いんだなぁ。果物界の万能選手だから仕方ないのかな? あと、メロン味のアプリンも買ったんだよね。

 チェリーベリーは、水竜饅頭の値段から考えると妥当なところかな。

 品物を受け取って、あの子にあげる分のチェリーベリー以外を指輪にしまい。あののじゃロリ美幼女に話しかける。決して餌付けではないよ?


「ねえ、君。君の進めてくれた果物とっても美味しかったよ。だからこれ、お礼にあげるよ♪」

 

チェリーベリーの入った袋をのじゃロリ美幼女に渡す。


「おおっ! なんと! 良いのか? これは嬉しいのう」


 チェリーベリーの入った袋を貰って、瞳をキラキラさせて喜ぶのじゃロリ美幼女。めっちゃなごむわ~。


 さて、アプリンは確保したし次は異世界物お馴染みの冒険者ギルドだろうか。それとも先に宿の確保かな?

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