9 ログアウトと待機ルーム

 漸くまともに喋れるようになった所だが。そろそろ、現実で自分をケアしないとな。


 で、ログアウトしようと思うのだが。プレイヤーキャラクターである来訪者たちは良いとしても、同じプレイヤーキャラクターである転生者は、ログアウト中どうなっているのか気になると思う。

 なので、ログアウトについて公開設定資料より語っておこうと思う。


 まず、知っておいて貰いたいのは、この世界では異世界転移することは珍しくないという事である。

 何故なら、IFOには数え切れないほどの、他世界と異世界が在るからである。

 少なくともこの世界エルアクシアには現在二つの他世界と、プレイヤー達の世界を含む七つの異世界と交流がある。

 なので異世界に転移するというのは、この世界の人達にとっては割と知られた有名な事象である。


 さっきから他世界とか異世界とか言い分けているが。

 これにも、ちゃんと理由がある。

 他世界とはこの世界エルアクシアと基本の構造が同じ規格の世界の事である。

 エルアクシアと同じ規格の世界を星界という。

 星界はIFOにおける一番最初に誕生した世界の形であり、後から生まれた世界はこの星界の在り様を独自に変えたものである。

 なので他世界とは同じ規格の別の世界という事である。

 別世界という言い方でも良いかな。


 異世界と呼ばれる世界はエルアクシアに友好的な物だけで、俺達プレイヤーの故郷の異世界テラ以外に六つある。

 世界の規格はそれぞれ、【歪界】,【幻界】,【空界】,【巨界】,【海界】,【祝界】と呼ばれるものである。

 さらにエルアクシアに敵対的な大神が作り出したとされる、いくつもの異世界が在り規格も七つは確認されている。

 他にも無管理世界と呼ばれる大神が世界を作った後に、神が訪れ無かった世界があり其れこそ数限りなくある。


 そして、そんな異世界に大神や神が加護を与えた者達。

 通称【加護持ち】は、大神や神など所為など含め様々な理由で異世界に転移する。

 中でも異世界テラへ転移するのがログアウトである。

 ちなみに戻ってくるのがログインだ。


 異世界転移は加護持ち特有と云えるが、異世界に行くこと自体は加護がない者も行く機会はある。

 故にログアウトで転生者キャラが、突然エルアクシアからいなくなっても、驚きはするが仕方がないものと思っている。

 もちろん、直ぐに戻ってきたり長期間戻って来ない事。そして、帰って来ない事も含めて、仕方がない事であると認識している。


 ついでに、プレイヤー達の故郷である異世界即ち、テラは近年正式にエルアクシアと交流を持つことになった異世界である。

 そもそもプレイヤー達の故郷である異世界テラは、遥か昔からエルアクシアと繋がっていたらしい。

 IFOの大神達が作り出した世界が起源ではない。異次元の法則を持った魂が少なくとも、【創天の戒め】と云われる大神達の活動抑制のための、弱体化が行われる遥か以前よりエルアクシアに流れて来ていたとされる。

 この異次元の法則を持った魂がプレイヤーキャラクターの転生者である。


 来訪者は60年前テラの技術により、エルアクシア側に器となる仮初の肉体を作りだし、それに精神体を送り込み憑依させるエンパシーリアライザーと云うテラの装置と。それを管理するシステム、アバターシステムが完成して来訪者がエルアクシアに現れた。

 その来訪者達が、エルアクシアとの正式な交流持つ条約を結んだ。

 それで、やって来たのがプレイヤーキャラクターとしての来訪者である。

 来訪者のログアウトは文字通り元の世界への帰還とされている。

 ちなみに、来訪者は仮初の肉体だが、子供を産ませるのも産むのもできる仕様である。来訪者ですらそうなのだから、転生者は言うまでもなくだ。


 さて、夕飯にはまだ早いが俺の体が、尿意と空腹が既に限界だとLDバイザーを通して訴えている。と言う訳でログアウト!






 ナビには悪い事をしたが待機ルームから急いで出て現実の用事を済ませて来た。

 風呂にもしっかり入って来たぜ。

 そうして、再び待機ルームに戻って来た。

 先は急いでいてスルーした事と待機ルームの詳しい説明を聞こうと思う。


「ナビ、先は急いでいて、すまなかったな」


「結城さん、事情は把握しておりますのでお気になさらず」


「そうか、じゃあついでだ。結城さんじゃ、堅苦しいだろ。名前で呼んでくれ」


「分かりました。静流さん」


 やっぱり、ナビが人の姿をしていたら和服が似合うおっとりした美女だな。個人的には美少女が良いが、美女も良いものだと思ってるよ俺は。


「さて、ナビ先の事と待機ルームの説明を頼む」


「はい、承りました」


「まず、静流さんの言う先ほどの事とは、待機ルーム機能の一つ、リボディシステムです。リボディシステムはIFOプレイの為にプレイヤーの皆さまが、お作りになられたキャラクターのお姿に、この待機ルームでも為れるというものです。IFOでは2体のキャラクターをお作り頂けますので、リボディシステムも対応しております。使用方法はとても簡単です。リボディと意識するだけでキャラクターのお姿になります。元に戻る時も同じです。キャラクターが2体いる場合は為りたい方を意志するだけです」


「ほほう、そうなのか。やってみるか」


 リボディと意識するだけで、何時でも美少女に為れるとか普通に凄いな。

 待機ルーム内でなら、周りを気にせずエルナをじっくり見れるわけか。

 良いな! 良し! リボディ!


「おおぉ、ほんとに変わったぞ。声もIFO内で聴いたエルナの物だ。喋りは、いつもの俺だな」


「IFO内ではないので、ロールアシストシステムが働いていないのです。ですが、使えない訳ではありませんよ。それにIFOのキャラクターに成れるだけではありません。キャラクターだけを待機ルーム内に出現させる事もできます」


「へぇ~、そうなんだ。まあ別にここで、ロールアシストシステムを使ってもな。でもエルナだけを出す事もできるのか。いいね!」


 これ、出現させたキャラクターを遠隔操作で自分の思った通りに動かせるらしい。ふ~む、これエロい事できちゃう奴やん。

 いや~、自分の作ったキャラに中の人が、アレな事ができる仕様にするとは倒錯的すぎん? 運営何考えてるの? これも、人体じ……やめとこう。ま、という訳で、俺は紳士なのでこの問題はスルーして待機ルームの他の説明を聞く。


「ナビ、待機ルームの他の機能の説明を頼むよ」


「はい、では待機ルームの他の機能の説明いたします。待機ルームでは、スマートフォン,パソコン上で行える全ての作業が行えます。お仕事,勉強,SNS,IFO以外のゲーム,アプリ,動画配信はもちろん、生放送も可能です。そして、IFO内程ではないですが。時間加速により現実世界の倍の速度に加速して、現実世界の倍の時間をご利用可能です」


 ほう、待機ルーム凄いじゃん。これは便利だな~。

 しかも、これ簡単にIFOのキャラで動画配信者デビューできるな。

 いや、しないよ?


「そして、最後に有料で様々なサービスが受けられます。こちらになります」


 有料サービスねぇ? お、これはナビにアバターを与えらるのか。

 あ、もちろんIFOのアバターシステムとは違うよ。

 それに待機ルーム内で自分のキャラやナビに、色んな衣装を着せる事ができる、所謂コスプレ衣装も有料サービスで買えるらしい。


「今度ナビにアバターを買うよ。あとエルナの衣装もな! もちろんナビの分もな!」


「よろしいのでしょうか?」


「遠慮しないでくれ、飛びっきりの和服美女にするから! それと公式掲示板を見ようと思う」


「はい、かしこまりました」


 早速IFOゲーム外公式掲示板で情報チェックしようと思う。

 あと、ナビは美少女感溢れる和服美女にする予定だ。


 公式掲示板をパッと見した所、俺と同じような理由でログアウトした人達が情報を上げている。やはり、来訪者と転生者も差は明らかだった。

 まず、目に付いたのが来訪者にはログインボーナスがあるという事。

 ログボ有るんかい!

 当然の如く最初から課金サービスが受けられるという事。うん、知ってた。

 生産などがミニゲームをやる事で簡単にできる。ミニゲームはなかったなぁ。

 LVUPやクエスト報酬などで、SLPつまりスキルラーニングポイントが貰え、ポイントを使ってスキルを覚えたりできる。

 アイテムボックスを持っている。来訪者同士のみのゲーム内掲示板が使える。

 課金すればいくらでも容姿,性別,種族,ステ振りやスキルの取り直しが可能など。

 やはり、これも設定にある通り生体ロボットに違いないからだろう。


 転生者は色々ある見たいだが。公開設定資料にあった通り、現地民と同じ仕様で来訪者の様なゲームライクな感じでは無いと。

 新しいスキルなんかは修練して習得するの物だし。

 アイテムボックスはそれをイメージしてキャラを作っていれば持っているが、基本的には無しで修得は出来るかもしれない。

 それに、転生者もゲーム内掲示板が使え、それは現地民の加護持ちと転生者だけが使える物らしいと云うのと。

 転生者や現地民から見て来訪者は奇跡の様に物を作り、戦いでは致命傷を物ともせず戦い続けるバーサーカー見たいな奴らとの事らしい。

 後、フレンドは皆使える。


 あー、俺が使えない機能は掲示板とフレンド機能か。

 あと、気になったのはスキルLVが上がった時に覚えるアーツは、その人がどの様な戦闘でどんな風に戦っていたかで、覚えるLVもアーツ自体も違うものになるという事と。

 あくまでも、自然に覚えるアーツは基礎でしかなく。あとで、教えてもらうなり自分で工夫するなりして、幾らでも覚えられるという事。

 これは魔術や魔法も同じであるという事。如何やら、自分で作ったアーツや魔法などは皆、オリジナルアーツに登録される様で自分で作るのが本命の様だ。

 ちなみに、自分で作ったオリジナルアーツを流派として広めることが出来るらしく。現地民の流派がその様にして広まったことから間違いないらしい。


 なるほどねー。だからシャワーアローのアーツを覚えたのか。

 気になる所はこんなものかな?


 さて、今は午後9時、IFO内では1月18日の朝6時か。本日二度目のログイン!

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