7 俺はまだ戦闘してないから!
今だ朝は来ない森の、中首なしネズミ達の血で地面が染まり。むせ返る様な血の匂いが辺り一面広がる。はい、そんなスプラッタを見せられてるのは俺です。
この辺り一面の、ネズミ達の死骸をとっとと回収しよう。解体のスキルは持っているが、全くする気にならない。
指輪の力を使い、見える範囲の死骸を一気に回収する。すると指輪の一覧に、ネズミの名前らしきものが表示される。
赤熱痛鼠の頭(ヒートペインラット)×36
赤熱痛鼠の胴(ヒートペインラット)×36
赤熱痛鼠の毒血(ヒートペインラット)10l
やっぱりこのネズミ、噛まれたりしたらヤバい奴じゃん。しかも、血が大量に入ってるな? 地面に染み込んでいなかった分の血が、回収されたのかな?
さて、とりあえず片付いたけど。念のために、ここら一帯にクリーンだ! ネズミ達の死骸が転がっていた。辺り一面が清潔になる様にクリーンの魔法を発動!
しゅわっ! と白い光が広がると、地面に染みた血と匂いが綺麗に消えた。
「ふっふん、うまくいった」
辺り一面を綺麗にしたとは言え、もう此処にいる気は無い。とっとと移動しようと思う。にしても、全く眠くならないな。お腹がすく位だし、眠くならないのは不自然だからな。
これもやはり、エルナが封じられてた所為で、散々寝てたから眠くないとか?
まあ、今眠くないのは好都合だし良いか。あれ? でも、トイレにも行きたくならないな? ふむ、考えても仕方ないな。
とりあえず、森は抜けたいな。発見や追跡のスキルを使って、人の痕跡を見つけ人里まで行けないだろうか?
う~ん、無理か。と云うか、せめて明るくなってくれたら良いんだけどな~。
そもそも、何処か分からない場所から、衝動的に移動してきた所為で、方角もよく分からないなぁ。となると、これはもう直感しかない。スキルにもあるし? って字が違うな? エルナのスキルは直感じゃなくて直観だ!
これと直感は似てるが、全くの別物だったはず。確か直観は自身の今までの経験や知識を基に直接的に判断するだったか? 上手く思い出せないが、エルナには確かにこの世界の記憶も知識も経験もある。ということは、この直観使えるのでは?
さて、直感のスキルもとい直観のスキルを使用して、森から抜け出すぞ!
直観のスキルを意識して、この森から出て人の居る場所に行きたいと思うと。直ぐに、自分がどの方角を向いているのか分かり、南西の方角に行けば大きな湖と、その畔には町があると感じた。
おそらくエルナはこの辺りの空を飛んだ事が在るのだろう。
おお! 直観すげえ! 直ぐに分かったぞ! とっとと森を抜けるぞ!
あ、でもエルナが封じられている間に、何かあったら今も有るか分からないか。
まあ、でも行くぞ!
早速、移動を開始する。森が暗くともエルナ自身が、照明になっている様なものだから、気楽に歩みを進めて行ける。
しかし、この直観のスキル凄いな。このスキルが有れば、戦闘も問題なく出来そうだし。空を飛ぶのは少し怖くもあるが、問題なく飛べそうなんだよな。
それに、頭を悩ませていた事が、すんなりと解決した所為か。自分でも分かって居なかった、無意識下の不安が取り除かれたのだろう。
心なしか楽しい気分で、森を進んで行けるのだった。
そろそろ、森を抜けそうな気がしていると。エルナから見える空の端の方が、朝焼けの色に染まってきていて、ようやく夜が明けるのだとホッとするのだった。
程なくして、森から原っぱに出た。原っぱの中に道はないかと探すと。轍道を見つけて、やっぱり直観すげえ! と為るのであった。
それと、やはりここら辺は温暖な地域なのだろう。この星の1月はやっぱり冬のはずだし。森の下草も原っぱの草もみんな青々してるしな。
ちなみにIFO内では1月17日となっている。
さて、人里への目途が立つと、やはり検証がしたくなる。
そう、まずは戦闘だ。まあ、精霊魔法でネズミ達を惨殺したみたいだが。俺自身、何が起こったのか分からない内に終わったし。
あれは、戦闘ではないと思う。ちゃんと近接戦闘もしてみたい。
そう、俺はまだ戦闘してないんだよ。うん。
はい、言い訳完了。手ごろな獲物を探して狩るぞ!
武器となる物は幾つか有るが2次スキルまで育っている双剣術が、おそらくエルナのメインの武器だろう。
しゃらっと腰に佩いた二振りの剣を抜き放つ。
両手に持った二振りの蒼い剣が、日の光を受けて輝いていた。
う~ん、カッコイイ!!
感慨にふけるのは止めて気配察知を意識する。
直ぐにより詳しく周囲の気配を感じる様になる。近くの手ごろな気配の持ち主に、気配希釈を意識しながら移動する。
見えた。俺の視界に映るのは、幾つものキノコが集まって、不気味な人型になった様な物だった。
こいつは所謂、ファンガスっていう奴だろうか? 赤,黄色,オレンジ,茶色,黒といった傘を持つのキノコが、寄り集まって人型になった物だ。
こいつに、正直接近戦を挑むのは微妙にいやである。
と言う訳でこいつには近づ来たくない。
剣ではなく、弓で攻撃しようと思う。
左手に着けている星弓のブレスレットを意識すると見る間に美しい星々デザインされた。上部から青グラデーションして、蒼に変わり下部に行くにつれ白くなる。そんな色をした弓になる。
所謂、ロングボウって奴で長さは大体162cm位だろう。
う~ん、デカいなこれ。サイズ固定だろうか? ん? なんかサイズ変わりそうな気がするな?
次だ。え~っと確か、和弓と違って、洋弓は矢を左側につがえるんだったか?
おっと、矢はどうしよう? 星矢ノ剣帯が、矢を用意してくれそうな気がするが。右手に着けてる雷槍のブレスレットが、自分を使えと言ってるような気がする。
それに、流星の双剣も自分達を使えと行ってる気がするな? 君ら矢になるの? そんな訴えがあるので、じゃあ、どうせなら、まだ姿を見てない槍を使って矢を放とう!
雷槍のブレスレットに、意識を集中すると全体が金色の槍になる。
長さは2m50cm位で穂先は80cm柄は170cmだろか。まあこれ、矢に為るらしいので、長さが伸び縮みしそうだ。
完全一体型の黄金の槍で、穂先とその下部,石突とその上部に山と雷と水が彫られている。
うん。やっぱりデカいし、金色って派手だなあ。そうなると双剣はたぶん鞘があるから、刀身が伸び縮みしないのかな? おっと、思考が逸れた。
ではこの槍が、矢に成ることを意識する。すると見る間に2m50cmの槍が約63cm程の黄金の矢に変わる。さて、射てみますか。
よたよたと動き周る。ファンガスと思われる、人型のキノコの集合体に向けて弓を構える。
矢をつがえ、弓を引く。胸に弦が当たって擦れて痛くったりするのかな? と思ったが。アーチェリーのチェストガードの様に、薄く青白く光る膜が胸を守る様で平気なようだ。
ここで、初のアーツの使用だ。使うのは確実に当てるためにターゲティング,ターゲットサイト、ついでにクリティカルサイトも使用して射る!
シュパッ! と放たれた黄金の矢はバチバチとスパークしながら元の槍に戻り、ファンガスに命中しカッ! と光ると。
ダアアアアアアン!! ゴロゴロッ! という雷が近くに落ちたかの様な轟音が遅れて聞こえて来た。
いつの間にか、槍は手元に戻ってきており。ファンガスとその周辺の草が消し炭になっていた。原っぱが火事に為らなくて良かったね。
それにしても、LVが上がる気配が全くしないなぁ。
「おーばーきるだね……」
良し! おれはまだせんとうしてないぞー……、はい! 次の獲物を探そう! 先の雷の様な大きな音に驚いて、生き物達の気配の大半が逃げてしまったが。逃げずに残っている奴もいるので、そいつに今度こそ近接戦闘を仕掛けたいと思う。
今度こそはと、見つけたのは……兎だ! 黒いつぶらな瞳と緑色の体毛をした。大型犬位の大きさの厳つい二本の角が生えている兎だ!
ちょっとデカいのと、厳つい二本角というのを除けば、異世界あるあるの定番だろう! 良し、今度こそこいつに近接戦闘を仕掛けるぞ!
再び流星の双剣を抜剣する。行くぞ!
俺は目に優しい緑色の兎に躊躇なく駆け出す。
もちろん強めに気配希釈意識してだ。
もっちゃ、もっちゃと暢気に草を食べてる兎の首に、剣を振り下ろそうと脚に力を入れようとした瞬間。
脚にうまく力が入らずに盛大に転んだ。全ステ70%ダウンしているとはいえAGI約7660のスピードで転んだのである。
「みぎゃっ!」ドカンッ! メキメキッ! ズーンッ!!
兎を通り越して背景になっていた森の木に激突したのだ。
激突した木が、派手な音を立てて倒れたその傍で。俺は、うおおっ! とっても痛いぞ! と、思わず鼻を抑えて身悶える。
視界の端に表示中のHPゲージが減るが直ぐに回復する。
いや、回復するの早いな!
まだ痛いけど。え、兎? 兎ね、奴は逃げたよとっくにな!
「う~、まだいたい……」
俺は鼻を摩りながら考える。
ここに来て、運動機能低下の状態異常効果にある、体にうまく力が入らないが出たのか?
それに時間経過で回復するはずでは? 回復してる感じがない。
何よりエルナの装備の事を考えるともっとおかしい。どう考えてもエルナの装備から得られる回復能力はめちゃくちゃ高い。
と云うか下着四点セットの力が、HP,MP,SP常時回復にダメージデバフ含む各種状態異常耐性にその回復、デスペナルティ軽減効果もある。
それが能力を共有して効果を増幅しているのだ。
つまり過剰なまでの耐性と回復能力があるということだ。だから一時的運動機能低下も直ぐに治ると思っていたのだが。
どうも、そうは行かないらしい。
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