6 焼肉と精霊魔法
まだまだ、お腹が空いている俺は、まず指輪から万能調理台を取り出して設置する。なんとこの調理台、照明にテーブルと椅子が付いてる。
これで、エルナにだけ見えている光ではない。
本当の明かりが周囲を照らす事になった。
次に、解体調理ナイフ,万能フライパン,岩塩,胡椒を出し、フライパンはおそらくコンロと思われる場所に置く。
調理台の、所謂まな板にあたる所に牙猪の肉の塊をどんっ! と出す。この肉を見る限り非常に脂がのっていて、焼くための油は必要なさそうだ。
岩塩は、プレート状になっていたので、焼き肉にすることにした。岩塩プレートを熱して、その上で胡椒を振った肉を焼く。
お好みでたれ代わりに、細かく切ったアプリンを肉で挟んで食べれば、最高ではなかろうか?
牙猪の肉をなるべく薄く切って行く。ある程度の量を切ったら、胡椒を軽く振る。今度はアプリンを取り出し細かくカットする。肉とカットしたアプリンは、皿を出して乗せて置く。
あ、ナイフは勝手に綺麗になってた。これもそうだが、基本持ち物は普通ではないのだろう。
さて、フライパンの上に岩塩プレートを置く。
そして、たぶんコンロであろう物の、下部に付いているスイッチを入れる。
しゅぼっ! と音を立てて火が付いたので、やはり、コンロであっていたのだろうと安心した。岩塩プレートが温まるのを待って、いよいよ肉を焼く。
それにしても、やけに手際よく出来るのは、スキルの力なんだろう。俺はリアルでは、料理なんて簡単な物すら全くしないからな。
さあてと、どうやら岩塩プレートが十分に温まったので、肉を乗せて焼いて行こうと思う。箸を取り出し。薄く切った肉を、熱せられたプレートの上に乗せて行く。
最初にじゅわっ! と音が上がりあとは、ジュゥ、ジュゥッと火が入る。すると肉汁がふつふつ出て来る。
ひっくり返して程よく焼けたら、最初の一枚をパクリと口に入れる。
うんめぇー!! 薄切りにして油を落としたのに、まだこれでもかと出る肉汁が口いっぱいに広がる。
しっかりとした牙猪肉の濃いめの味が、岩塩の旨味ある塩と、胡椒のピリッとしたアクセントが利いていて、非常にマッチしていて最高だ!!
脳汁溢れるとはこの事か、ファンタジー肉めちゃウマである!!
「むふ~っ、はぐはぐ、おにく、さいこう……!」
次々と肉を焼いて食べて行く、おっと、まだアプリンを挟んで食べてないじゃないか! 細かくカットしたアプリンを、アツアツの肉で挟んで口の中に放り込む。
瞬間、アプリンの果肉が溶け、牙猪肉の肉汁と旨味を激増させる! あふれる肉汁の旨味が脳天を突き抜ける!!
「むふーっ!! あぷりんにく、さいこう……!!」
Σはっ……トリップしちまったぜ。切り分けられた肉と、細かくカットしたアプリンはもうない。綺麗に食べられていた。
カットアプリンの肉挟み、もっとしっかり味わいたかったが。また記憶が飛んでしまったか。やれやれ、だぜ。
ふぅ、肉800gにアプリン2個、胡椒少々を使い。岩塩プレートは、表面を綺麗にすればまた使えるっと。
じゃあ、片づけようかな。しかし、片付けると言っても。箸と岩塩プレート以外は綺麗になってる。
この万能調理台どうなってるのか分からないが、水が出るしお湯も出る。オーブンもあるようだし、お菓子作りのためかな?
まあ、それはともかく水とお湯が出るので、水で箸を洗い。お湯で岩塩プレートを洗い、こげの酷いところはナイフで擦って綺麗にする。
岩塩プレートを乾かすため、始めて魔法を使う。そうウィンドだ。
手に魔力を集める。これはスキルが働いている所為か、すんなり出来た。
あとは岩塩プレートが乾くように、暖かく乾燥した風が出る様に、イメージして魔法を発動!
ぶわっとドライヤーの様な風が出る。何気に初魔法うまくいったぞ!
そして、俺は気付いたよ。魔法にクリーンとかリフレッシュとか、掃除したり綺麗にしたりできそうな魔法があると!
ま、まあ……清掃のスキルLVを、上げるためにやったと思えばな……。
片付けも、万能調理台を仕舞うかどうかを悩むだけになった。
そう、万能調理台には照明が付いてるからな。
もし人が来たら。これを出してないと真っ暗な森の中に、息を潜めている怪しい人になってしまう。
まあ、この万能調理台が、森の中にあるという不自然さの方が、まだマシというだけなのだが。
む? 何か沢山の生き物気配が、こちらに近づいて来るぞ。
あぁ、そうか。焼き肉の匂いの所為か! あんな盛大に肉を焼いて、こんな森の中で、何もないなんて逆に無いよな~。
と言う訳なので、万能調理台を仕舞い。近くの大きめの木の上に登る。
これも持っているスキルが仕事して、割と簡単に木の上に登れた。
たぶん、軽業のおかげだろう。木の上で、気配希釈を意識して息を潜める。
だんだん、沢山の生き物の気配が近づいて来ると、森がざわつき出す。
無数の生き物の足音とヂィゥ、ヂィゥッ、ヂィゥ! ヂィィヂィゥッ!! という鳴き声が聞こえてくる。
そして、そいつらの姿が見えて来た。
奴らはこの真っ暗な森の中、ギラギラと瞳を真っ赤に輝かせ。
俺のいた場所に向かってくる。
奴らの見た目はパッと見、デカくて赤いネズミである。もっとよく見てみよう。
ふ~む、大きさは大体、中型犬より少し大きい位。全体的に赤いが、鼻の先,耳の中程から上,前脚,尻尾だけ、ネズミらしく灰色をしている。
なんだか、真っ赤な所為か、齧られたり引っ掻かれたりしたら、凄く痛そうに思える。
むむ? 何か思い出せそうだ! 思い出すんだ俺! 思い出すんだエルナ!
「ごぶりんは120せんちくらい……?」
うん。全く関係ねー!!
え、なに? アプリンとゴブリンの語感が似てるって? ダジャレか!
それに、この世界の長さの基準メートル法なのかよ! 初めて知ったわ!
ふーっ、疲れたぜ。とにかく、あのネズミどもを何とかしよう。ここに留まるのも、移動するのも。あつらが邪魔なのは変わらないしな。
じゃあ、どうやって倒そうか?
エルナが感じる、あのネズミの強さは別に大した事がない様だが。
何せ俺はフルダイブVRの初心者で、しかも、初心者には難易度が高い夜の戦闘だ。できるだけ簡単に終わらせたいな。
俺のエルナが使える。スキルや魔法で、それができそうなのは精霊魔法だと思う。何気に4次スキルだし、精霊魔法なら、周りに被害を出さずにやれそうだしな。
「せいれいさん、せいれいさん……あのめいわくな、ねずみたちを、もりにひがいがでないように、やっつけて、おねがい☆」
どうだ、俺の渾身のお願いは! 魔力が消費されるのを感じたから、発動したはずだ!
一瞬、森がざわっとする。次の瞬間。先ほどまでヂィゥヂィゥッ、ヂィゥヂィゥッと五月蠅かった。あのネズミたちの声が止んだ。
いったい何があったのかと、木の下を見ると。そこには皆、等しく頭を落とされ。首から血を吹く、ネズミたちの死骸が転がっていた。一言いってスプラッタである。
うむ。グロイ俺はこのグロさになれる事ができるのだろうか?
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