第3話

 後日、渥海に家に呼ばれた。「何故?」こればかりは男共との教訓があるので尋ねたら「恋人らしい振る舞いを研究する為、二人だけの特訓が必要になるわ」との返答に悩む内に、手を握られ連行された。乗り気ではないながら座布団に乗せられ、お茶が真打ち登場する。茶葉しか入っていないよな等と冗談を言えば座布団もう一枚くれるかね。

 そう思ってぼぅっとしていたら渥海に押し倒された。突然の熱量に流石の私も「うっ」声が出た。釦の外れたワイシャツから薄っぺらい胸が漏れる。こりゃ玲の好みには及ばないだろうな。そんなことよりこの状況、何の意味がある?窓にも扉の奥にも玲や双は現れていないことを迫るキスを躱して確かめた。見下ろす渥海は苦い顔で訊く。

「何故避けるの?恋人の練習でしょう?」

「粘液酌み交わす程は気を許していないので」

「……出て行って!」

 来てくれと言ったのは誰だろうと疑問に思いつつ大人しく退散した。かなり怒鳴られたから今度こそコンビ解散に一口賭けた。しかし「ごめんなさい。先を急ぎ過ぎました」私は負けた。渥海とは暫くこの傾向が続くことを察したので、何が起ころうと気に掛けないことにした。それは元々だけど。その後何度も家に誘われたが露骨な接触は自制してくれた。躾と欲の狭間に舌を垂らす犬は惨めに映った。

 同じ頃、双は玲の家でセックスしていた。長い付き合いだから珍しいことではないのだろう。双は疲れた顔で長い吐息を流し込む。玲は「あー気持ち良かった」満足そうにベッドから立ち上がった。

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