第35話「砕け! ジャーントロボッッ」

第三十五話「砕け! ジャーントロボッッ」





 東京ソラツリーを登り始めた貪る者。

 その直ぐ近くの東京ソラツリーファーストチケットセンターの天井をぶち抜き、狙いすました様にベストな位置に落ちてきた黒い塊に取り付いている年若い少年が、腕時計型コントローラーに向かって叫んだ。


「立て! ジャーントロボっっっ!」

「ヴァ!」

 

 黒い塊はゆっくりと両腕を開き、上半身を起こし、立ち上がり始めた。

 その姿はグングン大きくなり、やがて10階建てのビル相当にまでなる、全長30メートル体重1,500トンの無骨な人型ロボットになった。

 光の加減で黒い塊のように見えたそれは、青銅色の濃紺のボディで、腕・足・頭・胸にアクセントカラーの赤色が入っている。

 全体的に丸みを帯びていて、太く・重厚な鎧を着たエジプト系の戦士のような出で立ちだ。

 スフィンクスのような形の顔もその姿も特徴的だが、背中に背負っている2本のボンベタンクのようなロケットエンジンもかなりのインパクトだ。

 その全身全てが重さとパワーに満ち満ちている。

 

 ジャーントロボの顔には揉み上げの位置には怪異的なステップ式のハシゴが設置してあり、ロボの操縦は何故かその鉄のはしごに片手一本で掴まって、動かしている。

 動かしているのは地球防衛軍のブカブカのジャケットを着た背の小さな隊員だ。

 少年はよほど腕を鍛えあるらしく、ほぼ30メートルの高さの位置で、ロボがどんなに激しい運動・接近戦による激しい衝撃を受けても、常に片手一本で微動だにせずに掴まっていられるのだ。

 

 彼とそのロボこそ、地球防衛軍茨城支部が極秘裏に基地の防衛費を横流しして建造した「ジャーントロボ」だ。

 パイロットも厳選して基地内で一番背の低い隊員を起用しているこだわり様だ。


「戦え! ジャーントロボ」

「ヴァ!」


 ジャーントロボの特徴は何と言ってもこのアバウトな命令。

 言葉少ない適当な命令で、ロボは操縦者の意思を完璧に読み取って動くのだ。


 先ずはソラツリーによじ登っている貪る者の脚を胸部ワイヤーアンカーを発射してふん捕まえ、バイク駐輪場に叩き付ける。


 次に振り返りざま胸部小型ミサイル多連ランチャー2門の内、1門で呀王が立っている道路に向かって第二東武器館ごと爆煙の炎に包み込む!

 ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴゴゴン

 道路と第二東武器館と東部伊豆崎線の陸橋は見事に爆砕された。


 しかしそのミサイル攻撃を呀王はジャンプして躱していた。

 そのままロボに向かってミサイルキック。

 ロボはよろけて倒れてしまい、併設されている水族館は火花とコンクリートのケムリを大量に巻き上げ、壊滅的ダメージを受けた。


「パンチだ、ロボ!」

 水族館を破壊しながら倒れたにも関わらず、ロボの顔横のステップに掴まり続けている隊員が叫んだ。

 

「ヴァァ!」

 背中のロケット噴射を点火し、瓦礫も駐輪しているバイクも自動車も吹き飛ばしながら、ビルの中から身体を強制的に持ち上げ、呀王にパンチを打つ。

 呀王よりも10メートル高いジャーントロボ渾身のパンチは、打ち下ろしの形になるので、体重が乗って更にパンチの威力が増す。


「ウガァァァァァァ!!(気力バリヤー!!)」

 呀王が十字ブロックの体勢を取り、全長18メートルの巨大な獅子は金色のオーラに包まれる。

 威力を半減させる気力バリヤーは、魔龍グクールのブレスにも耐えた必殺技だ。


 ZZZZZUGAN!!


 十字ブロックの上からでもお構いなしに殴ったパンチは、ダメージを半減させられたとは言え、威力はそのままに呀王を吹き飛ばす。

 

 ソラタウンから南に飛ばされた、逆三角形の上半身だけ異様にデカい金色の獅子は、道路を越え堀を越え、植えてある河津桜をへし折りながらその後ろに建つ喫茶店やラーメン店を尻で押しつぶして止まった。


 ジャーントロボがパンチを打った瞬間を狙ってオルグ・ハイの貪る者が後ろからバスタードソードでロボの頭を叩き付ける。

 ガイイイイイイィィィィィン

 が、バスタードの刃はロボの鋼鉄の肌を通せず、弾かれてしまった。

 

 操縦者を第一に守るように設計されているジャーントロボは、(あらゆる状況下の中で)操縦者の危機を感知した場合に限り、最大50倍のパワーで行動する事ができる様にプログラムされている。

 

 操縦者の直ぐ横を剣で叩いた所為であろう、貪る者はそのトリガーを引いてしまった。


 ロボは爆発的にロケットを噴射し、先ほどよりも数倍のスピードで1,500トンの体重を上空に持ち上げ、上昇しつつ腰部80mm無反動スポンソン砲4門でオルグ・ハイを掃射、急降下して全体重を乗せたキックを放つ。

 その動きの方がステップルに掴まっているだけの操縦者にはヤバい気がするが、気のせいだ!

 スーパーロボット相手にそんな細かいところを気にしていてはダメだぞ。


 大の字の状態でキックを食らった貪る者は、そのまま半壊している水族館にジャーントロボごとめり込んで埋まっていく。

  

 飛びこんできた呀王が、黄金の爪でジャーントロボの背中を1回・2回、クロスでひっかく。

 たまらずロケットを吹かし、水族館を超えてソラタウン広場まで移動するロボ。広場は軽く踏み潰 された。


「ロケットバズーカを使うんだ! ロボッッッ!」

「ガァァァ!」

 

 茨城支部の隊員は容赦なく命令した。

 ロボは必殺兵器である「背部ロケットバズーカ」の発射態勢に入る。

 背中に背負っている巨大ボンベのような円筒形の筒が上下に割れ、上部パーツが肩に乗る。

 筒の先端が開き、砲身が伸びる。

 キィィィィィィィィィン

 砲身の先端にエネルギーが集約されていく。


 ZZZZUGOOOOOMMMMMM!!!!


 呀王・貪る者、2体のモンスターが並んでいる場所に超高エネルギー弾はソラツリーの一部を消し飛ばし、その向こうの水族館や東京ソラツリー駅・フレイムガーデンなど、辺り一面を焼き尽くした。

 どっちが悪役なのか判らないくらいの暴れっぷりだ。


 ロケットバズーカの砲撃はソラタウン西部を蒸発させたが、2体は立っていた。

 全身を燃え上がらせながらグッと腰を落とし、十字ブロックの体勢を取っている呀王がエネルギー弾を受け、その後ろに貪る者が隠れていたのだ。

 呀王は自身の最大スキルである「気力バリヤー」「熱血バーニング」「身体能力超アップ5倍掛け」を同時に発動させていたのだ。彼の後ろの一部だけが蒸発を逃れて残っている。

これこそが魔王ゴウラが一目を置く彼の能力だ。最強状態の間であれば、魔王を凌駕しているかもしれない。


 この最強状態は長くは持たない。超エネルギーを放出して硬直している今がチャンスだ。

 気力バリヤーを解いて一気に攻めに転じる呀王。


 速い!


 ジャーントロボがカウンターパンチを合わせるが、インパクトの瞬間、呀王は最小限のステップで身体ごとパンチを擦り抜け、その腕を取って、パンチの力を投げの力に流用して、背負い投げる。

 30メートルのロボはソラツリー向かってに投げ飛ばされ、投げの威力が加わった1,500トンのボディがソラツリーの網々の外装にめり込む。

 衝突の衝撃に耐えられず、メシッッッと音を立ててソラツリーの脚が埋まっている地面が少し盛り上がった。

 

「ウゴォォォン!(ゆくぞ、友よ!)」呀王が天空に向かって叫ぶ。

「ウギャァァァオ!(おうよ!)」貪る者も呀王に応えて天空に向かって雄叫びを上げる。

「「グッギャッギャァァァォン!(ダブルハイパースラッシュ!)」」

 

 20メートル前後の2体の巨大モンスターは空高くジャンプし、上空からの重力加速度を付けてジャーントロボに渾身のスラッシュを2方向から決める。

 身動きの取れないロボは防御態勢を取りバリヤーも張っていたが、クロスガードしていた右腕は切り落とされ、胸にもザックリと切られた跡が残っている。

 手首に樽を付けたような特徴の、10メートル近くある腕が真下にズシンと落ち、地面にめり込む。


 ロボは胸と目から血のようにも見える機械油か何かを流している。

「う・・・撃て! ロボッッ」

 少年隊員もボロボロで、顔面から血を流しながら、たどたどしくロボに命令する。

「ヴァ!」


 ジャーントロボの両肩には異様に大きな球体のような肩ガードに付いている、その球体のシャッターが『ガシャンッッ』と開き、肩部大型ミサイルランチャーが現れ、ランチャーに『ジャキン!』と片側3基ずつのミサイルの弾頭部分が装填されて、大型ミサイルが発射態勢になった。

 

 シュゴッッ、ドシュッッ・シュゴッッ、ドシュッッ・シュゴッッ、ドシュッッ


 3基の大型ミサイルが左右同時に次々と発射され、ロケットに点火してそれぞれの目標である呀王と貪る者に向かって飛んでゆく。

 同時にロボは背中のロケットを噴かしてソラツリーからの脱出を試みる。

 ロボの上からは全長634メートルの世界一高い電波塔の自重が一部のしかかっているので、背中に食い込んでいてなかなか抜け出せない。


 DOOOOM! DOOOOM! DOOOOM! DOOOOM! DOOOOM! DOOOOM! 


 左肩は呀王・右肩は貪る者をロックオンしており、それぞれに着弾して爆発する。

 大型ミサイル6基の爆撃により、【東京ソラツリー西】から【おしなり橋】付近までの道路・水路・ビル群は瓦礫と化し、火災を誘発して黒煙をモウモウと上げている。

 この攻撃で貪る者は片腕と片足を吹き飛ばされ、その場に大量の血を流しつつ『ドウッ』と倒れた。水路に彼の血が流れていき、血の川になっている。


 しかし、反応もマックスになっている呀王は後方にジャンプして爆風をいなしており、そのまま南西のビル群を踏み潰しながらジャーントロボの東側に回り込み、まだソラツリーに挟まれてもがいているジャーントロボの首を狙って、必殺の波動を黄金の爪に送り込む。

 必殺を込めた体当たり気味のダッシュスラッシュがジャーントロボの首を跳ね飛ばそうとした時、

「超伝導ハイパーヨーヨー、ループ・ザ・ループ」

 呀王の顔よりも少し小さい、直径3.5メートルの真っ赤なヨーヨーが2つ、ギュウウウウウンと飛んできて黄金の爪を弾いた。


 更にヨーヨーは左右交互にギュンギュン飛んできて、呀王の腕・頭・身体をバシバシ叩く。


 ヨーヨーが飛来する方向を見ると、ヨーヨーで「ループ・ザ・ループ」をしながら飛んでくる人型巨大ロボが飛んで来るではないか。


「超伝導ヨーヨー、ダブルカッッッタァァァァ。ウォーク・ザ・ドッッッッグッッッ」

 巨大ロボが両手に持っていた2つのヨーヨーをガシッと合わせると、何故か一回り大きい1つのヨーヨーに成り、『ジャキン!』とノコギリ状の刃がヨーヨーの全周に生えた。

 その大型ヨーヨーを地面に向かって投げつけると、ヨーヨーは地面に降りてからどどどどどどどどっと呀王の方に転がっていき、下から上に呀王の身体を切り刻みながら駆け抜け、巨大ロボに戻っていった。初歩のヨーヨー技、『犬の散歩』である。


 予測の付かない攻撃で大ダメージを負ってしまった呀王は、血を流しながら一旦倒れている貪る者に駆け寄った。タイムリミットが来ており、先ほどからスキルの効果が消えているため、一気に動けない。


「超伝導、ケーンーカァ、ゴマぁぁぁぁぁぁ」


 常温で超伝導をしている「ケンカゴマ」が巨大ロボの胸からたくさん飛び出し、2体のモンスターを取り囲む様に道路やビルの上で回り始めた。

 ケンカゴマの外縁には、ノコギリ状のカッター刃が,羽のように飛び出しており、近くのケンカゴマや障害物に当たると飛び上がって攻撃してくる。

 何だかよく判らない攻撃が呀王と貪る者を襲った。

 ケンカゴマは先ほどの巨大ロボとは別方向から来た、似たような巨大ロボの胸から発射されており、何発も連射できるのが特徴だ。


 地球防衛軍のエースロボ、【超伝導ロボ・コンウォーリアーV】と【超伝導マシーン・ボルテッカV】だ!!!

 ちなみに前者の『V』は『ブイ』、後者の『V』は『ファイブ』と読むぞ!

 

 



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉


 前回に引き続き大好きな今川監督作品『ジャイア〇トロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』より、ジャイア〇トロボです。

 最後の最後に衝撃(笑撃)の事実、父親が最後の言葉を言い切る前に事切れてしまった為に、父の無念(遺言)を果たす為に地球を破壊寸前にまでおとしめたのに、「あんたが最後まで喋らなかった所為でうっかり地球壊しかけちゃったじゃねーか!」『勘違いだった!』と言う事実に打ちひしがれてしまうシーンは必見ですw

 ぜひ観てください!!


 最初から最後までとにかくかっこいいです!理屈なんかどうでもいい感じが最高です。



 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、♡で応援。


 ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


 応援して頂けますと頑張れます。



 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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