決戦の章

第34話「溢れるゾンビ!」

第三十四話「溢れるゾンビ!」




「華・タイフーン!」

 

 ジュピターの周囲にピンクの花びらが渦を巻いて、襲い来るオゴブリンライダーや2メートル級のジャイアントをバラの嵐が包み込む。

 手のひらから乱れ飛ぶバラは非常に美しく見えるのだが、その花に触れると動きが封じられ、同時に花びらの嵐は閉じ込めた者を鋭く引き裂くのだ。


「ぴぎゃゃ」

「ぎょぎょええぇぇぇ」

「ひでぶううううう」

「負けそー」

 空耳? どこかで聞いた事のあるセリフを吐きながら倒れていくモンスター軍団。


 地球防衛軍側が圧倒している様に思われるかもしれないが、そうでは無い。周囲に群がる魔物の数は、むしろ増えていく一方だ。

 ヒーローたちの数は圧倒的に少ない。


「田中隊員、佐藤隊員、応答せよ」


 二人が腕に着けている腕時計型通信機から、三戸目院司令長官(仮)の声がした。


 A子は実況を続けつつ左腕を口元に持ってきて、通信機のアンテナをピッと伸ばして通話開始のボタンを押す。

 腕時計型通信機からホログラムが飛び出し、三戸目院司令長官(仮)のバストアップが投影された。


「支部長! 配信中はA子B子と呼べじゃん」

「君も私のことは長官と呼んで欲しいんだが・・・」


「それで、どうなさったのですか? 長官。今大変な状況なので手短にお願いします」


「おお、ありがとうB子くん。もう直ぐそちらに増援がたくさん到着するはずだから、今暫く頑張ってくれたまえ」


 ZUSIIIIIIIIIIIIINNNNNNN!


 ビルの向こうで何か黒い巨大な物体が落ちた。

 ソラツリーの広場の辺りだ。


「丁度来たようだな。アレが防衛軍茨城支部が、基地の防衛費を私的流用して、茨城支部長の趣味で極秘裏に開発していたロボだ」


「長官、何か聞いてはいけないワードが2つ3つあったような気がしますが・・・そんなことより、今チーム・ミヤノが大変な状況なので一旦切ります。オーバー」

「あ! 待・・・」

 ホログラム水戸目院は視界から消えた。


   

 チーム・ミヤノの二人・宮野隊員とカメラマンは、乗り捨ててあるワゴンタイプの車を盾にして、モンスターに抵抗していた。


 二人は声を掛け合い、時間を合わせてマシンガン型光線銃で弾幕を張り、3秒撃ってしゃがむ・3秒撃ってしゃがむを繰り返した。

 波のように押し寄せてくるトラ・ライオン・像・ゴリラに似た魔獣の群れから、謎の光弾や石や脱糞したての糞が飛んで来る。


 仲間だった音声さんとレフ板くんは少し先で抱き合ったまま倒れている。

 音声さんに噛まれたレフ板くんが、彼女をガッチリと抱え込み、「僕の意識がある内に二人の頭を撃ち抜いてくれ!」と懇願したためだ。

 

 ミヤノ隊員は泣きながら二人を撃った。

 カメラマンも泣きながらカメラを回し続けた。


 チーム・ミヤノの場合、LIVE配信はしないので、見せられない部分は加工が効く。

 後日。ミヤノはこの動画の編集中に、仕方が無かった事は言え、自らの手で二人の仲間に手をかけてしまったことをぶり返し、泣きながら編集作業をしていた。

 その編集の後、ミヤノとカメラマンは地球防衛軍を去った。


 

「ジュピター・オーク・エボルシオン!!!」

 霊殿の象徴とされる『オークの葉の冠』を付けて掛け声を発し、身体を回転させたジュピターから木の葉が舞い散り、そこから緑色の閃光が無数に発生し、縦横無尽に駆け巡った。

 

 『オークの葉の冠』で電撃能力を強化したジュピターが、群がる魔獣どもに同時攻撃を加えたのだ。

 『ジュピター・オーク・エボルシオン』は、一発一発の威力は弱いが、一度で広範囲の攻撃が可能で、同時に幻惑の効果があり、敵の目くらましとしても使えるのだ。

 

 セーラー服ジュピターの第4期必殺技が炸裂し、溢れてきた魔物が減った瞬間を見逃さずに、A子とB子がJK美少女戦士たちとチームミヤノに合流を果たした。


「悪霊撃滅! ソウルフル・ファイヤーっっっ」

 セーラー服マーズが胸元から取り出した御札の束を、目の前に迫るキラーマンティス・アルミラージ・メガテリウムに投げ付け、胸の前で印を結んで無数の炎を召喚する。

『悪霊撃滅』は魔を滅する聖なる言霊を込められた薄いヒラヒラの和紙が、プラスチックのカードの様にビシッッと成って無数の敵に対して一枚一枚正確無比に飛んで行くという、私がマジシャンだったら『ぜひその技を伝授してくれ』と土下座をしてでも習得したいビックリな技だ。


 何とか魔獣軍団の波を乗りったのも束の間、魔獣よりも足の遅い亜人軍団の波が来た。

  更に悪いことに、体力回復のために周辺で逃げ遅れた人間を食いに行っていたリリーラも帰ってきて、上空でホバリングしている。しかも分身体2体も合流して、今は身長が5メートルにもなっているでは無いか!


「アッハッハッハッハッ。お前たち、特にアタシにキズを付けたお前とお前!(A子とB子を指さす)お前たちは許さないからね。せいぜい苦しめ!」


 ビル2階建て相当になったリリーラが上空から右手を一振りすると、先ほどセーラー服戦士が必死に倒した魔獣軍団の屍の山に紫色の光線が降り注ぎ、ヤツらリビングデッドと成って立ち上がった!

 足元に転がっていた死体も数知れないので、距離感がヤバい!


「何であの幼女があんなにデカく成ったのか判らないけど、一連のゾンビ騒動はアイツの仕業っぽいわね」

 B子の分析が入る。


「ええ?! あのデカ幼女性格チョー悪いじゃん!」


 光線銃のバッテリーを外して目の前のオオカミゾンビに投げつけつつ、ジャケットのポケットからスペアバッテリーを取り出して交換するA子。

 そのままマシンガンの引き金を引きっ放しにして右に左に撃ちまくる。

 今はどんなド下手くそが何処にどう撃っても、100発100中で敵に当たるフィーバー状態だ。


「ボルケーノ・マンダラァァァ」


 ここでセーラー服マーズの大技が炸裂!

 彼女が右一刺し指を天に向け、ゆっくりと時計回りに円を描くと、その指を追って炎が円陣を描き、曼荼羅の梵字が浮かび上がる。すると、八つの炎の輪が掌から連続して発射され、周囲の敵を切り刻み始めた。


「おい、お前ら、あんな化け物に喧嘩売ったのか?」

「あんたもさっき見たでしょう? さっきまであんなにデカく無かったわよ! 元からアレだったら当然逃げてるわ」

 マシンガン型光線銃を撃ちまくりながら、B子がミヤノに食って掛かっている。


 幸い大量生産されたゾンビ犬やゾンビライオンなどは旧型の様で、動きが緩慢だ。防衛隊員4人の光線銃とセーラー服戦士の技でギリギリ押し留められている。


 しかしゾンビの群れの向こうにはコボルト・ホブゴブリン・リザードマン・5メートル級のジャイアント系モンスターも混じった亜人軍団が迫ってきている。

 そしてここに居る者みな、疲労の色が濃くなってきている。

 このままでは瓦解するのが目に見えている。


「ツインクール・エール」

 

 突然セーラー服ちびムーンがクリアランスカリヨンの鈴を掲げて叫び声を発した。

 その声に反応し、上空にユニコーンペガサスが召喚される。


「お願いペガサス! みんなの夢を守って!」


 ちびムーンの願いを聞き入れたペガサスは、金色の光を発してちびムーンを包むと、ちびムーンが持っているロッドが金色に光り輝く。


「これは! セーラー服ちびムーンの必殺技が出るのかぁぁ」


「ムーン・ジャスティス・メディディメンション」


 ちびムーンの強化された金色のロッドから、同じく黄金色の光が爆発的に広がり、溢れる聖なる光が群がるゾンビに降り注ぎ、不浄なるゾンビを焼き尽くす。


「ちびムーンちゃん大活躍だァ。ゾンビめっちゃ減ったじゃん。ちょっと希望がもてたかも」


 A子は、迫り来る亜人軍団と上空のリリーラのことは一旦置いといて、努めて明るく振る舞った。

 それが幸をそうしたのか、遂に援軍が現れた。


 オーク・ゴブリン・トロール・ サイクロプスなど、おどろおどしい亜人種の怪物たちの前に、二人の男が立ち塞がった。

 一人はチャイナ服を着た老人。

 一人はジージャンを着た若者だ。

 特筆すべきはその二人がヒーローでは無く、生身の人間だと言うことだ。


「おじいちゃん危ないから逃げて!」

 少し向こうに立つ無謀な二人に、A子は大声で呼び掛けた。


「貴様たちこそ、ココはわしらに任せてさっさと下がるが良い。ゆくぞ、弟子よ」

 チャイナ服の老人が叫ぶ。


「待って! もしかしてあのお方は・・・まさか!? A子、私たちは助かったかもしれないわ。彼らの戦いは必見よ」

 B子はあの二人に心当たりがあるようだ。



 亜人軍団を前に、二人の男がポーズを決めながら叫び出した。


(二人) 「「流派りゅうは極東無敗きょくとうむはいは!』」

(若者) 「王者の風よ!」

(老人) 「全新ぜんしん!」

(若者) 「系列けいれつ!」

(二人) 「「天破侠乱てんぱきょうらん」」

(二人) 「「見よ! 極東きょくとうは、あぁかぁくぅ、燃ぉえぇているぅぅぅぅぅぅ!!」」


「「ドぉぉぉりゃァァァァ」」

 決めゼリフを終えた二人は残像で何十本にも見えるほど腕をグルングルン回し、まるで顔の周りにグルリと腕が生えた様な状態になり、そのまま敵に突っ込んでいった。


 彼らは強かった。

 正に千切っては投げ、千切っては投げという勢いで敵の数が減っていく。

 武器攻撃も魔法攻撃も気合いで弾き飛ばし、5メートル級のサイクロプスもワンパンチだ。

 

「つ、強い・・・。あの二人、何て強さなの? 世界にまだこんな強い人が居たなんて! あーし今、めちゃ感動してるじゃん!!」


 極東無敗とその弟子は、向かうところ敵無し。亜人軍団は200体くらいが押し寄せて来たであろうが、この二人はことごとく撃破した!

 しかもその全てがワンパンチだ。


「こ、これはいったい、何が起こっているの?・・・凄すぎるんですけど。あの人たち人間なの?」


 目の前で繰り広げられているあまりの出来事に、A子のマシンガンも実況も止まったままだ。


「間違いないわ。伝説の拳法『流派・極東無敗』の使い手、【マイスター・エイジア】よ。私もここまでとは思っていなかったわ。流派極東無敗は、『天と地の霊気を父母とし、天地自然の大いなる力をうけて生まれた拳法』で、精神の力をもって肉体の限界を超越することを基本としているらしいわ」


 B子がそう言った矢先、モンスターどもが侵攻してきている方角である右手の12階建てのビルが、ゴガーン!と音を立てて真っ二つに割れ、瓦礫が上から降ってきた。

 破壊されたコンクリートがモウモウと白い粉塵を巻き上げ、辺り一面を真っ白に染め、息をすると口に砂利が混じるような状態だ。


 土煙の向こうから18メートル級のミノタウロスが5体、巨大な戦斧をぶん回しながらやってきた。


「し、師匠! あんなヤツら、一体どうしたらよいのですか?」

「こぉの、うつけもんがぁぁぁぁぁ。だぁからお前はアホなのだぁぁぁぁ」


 彼らの前に立ち塞がったミノタウロスは、浅草でガンダムーンと激戦を繰り広げたミノタウロスの別部隊だ。

 ガンダムーンが2体掛かりで倒した強者だ。とても人間がどうこうできる敵では無い。

  

「こんなものは、こうすれば良いのだぁぁ!!」

 マイスター・エイジアはそう言ってミノタウロスの足下に寄って行き、足から背中に向かってパンチを打った。

 打ったパンチは衝撃波となってミノタウロスの身体を駆け巡り、背中が裂けて天空から血飛沫をザバーっと降らせたではないか。

 殴られた全長18メートルのミノタウロスは電線を引き千切り、街灯やビルを押しつぶしながら、スローモーションのようにゆっくり『ドウッッッ』と轟音と地響きを起こしながら倒れた。

 

「そうか! その手があったか! 破っっっっっっ!!」


 弟子が師匠をまねて別のミノタウロスにパンチを放つと、やはりそのミノタウロスも背中から血飛沫を噴き上がらせて絶命し、一撃の下に沈んでいった!


「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????」


 なんと! 彼らは生身で、しかもパンチ一発であのミノタウロスを倒したのだ!! 

 A子もB子も、セーラー服戦士たちもリリーラも含めて、その場にいた全員から素っ頓狂な声が上がり、目玉と舌が外に飛び出している。


「あの人たち、本当に人間なの??? ロボ要らないじゃん!」


 そんな実況をしている間にも大手を振ってやってきたミノタウロスは、たった二人の男に一掃されてしまった。 

  

「ぬぬぬぬ、シュッショックーのくせに生意気なことをしてくれるじゃ無いの。死んだ者どもよ。再び起きて働けぇい!」


 あまりの出来事に一瞬我を忘れてしまったリリーラだが、気を取り直して殺された亜人軍団をまとめてゾンビに変えて再利用する。もちろんミノタウロスも蘇った!!

 いわゆる再生怪人だ。


「むむ!? デビルG細胞か? おい、バカ弟子よ。アレがデビルG細胞の力で蘇ったとしたなら、放っておくワケにはいかん。アレをやるぞ!!」

「あ、アレですか? 師匠!!」

「そうだ! あれだ!! ゆくぞぉぉ」


 二人の格闘家は道路の真ん中に横並びに立ち、左右対称に印を結んでゆく。

「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 二人の気合いはマックスにまで高まった。

(弟子)  「超級っっっっ!!」

(エイジア)「覇王っっっっ!!」

(二人)  「「幻影けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっっっっっっっ!!!」」


 師匠と弟子が完全なユニゾンで放ったその技は、巨大なエネルギーの渦となり、道路を埋めていたゾンビをまとめて焼き尽くした。 


 ゾンビどもは死に間際に『また観てくれよなぁぁぁ』って聞こえる叫び声を上げながら爆散していった。 




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉


『Gガ〇ダム』好きなんです。


と言うか『今川監督』が好き。


『ジャイア〇トロボ』も好きっす。


いいですか?

Gガンは愛で地球を救った唯一つのガ〇ダムなんですよ!

そう言われると凄く思えるでしょ?


もし観る機会があったら、最後数話は最後まで一気に見てください!

感動の嵐でボロッボロに涙を流しながらの状態で、最後大爆笑できます!!


感情おかしくなるわ! 


 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、♡で応援。


 ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


 応援して頂けますと頑張れます。



 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

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