「地球防衛軍サイド」
第30話「とうきょうソラツリー侵攻」
「地球防衛軍サイド」
第三十話「とうきょうソラツリー侵攻」
垂直離着陸機に変形した地球防衛軍のパトロールカー『流星号』は、浅草上空を旋回してガンダムーンの戦闘をライブ配信した後、自慢のジェットで全長634メートルの【ときょうソラツリー】に向かっていた。
時間が経つにつれ、空は魔王城上空に発生した『黒い太陽』の勢力が増してきていて、
薄暗かった空はいよいよ暗くなり始めた。
魔の力が強まっているのだ。
浅草から東京ソラツリーまでは目と鼻の先で、流星号であれば一瞬で着いてしまう距離ではある。
しかし、現在はライブ配信の下準備の為と言って、少し休憩時間を貰っている。
流星号はオートパイロットで浅草上空を周回している状態だ。
「そう言えば、詩衣子からメールが来てたわ。読むね」
備井子はポケットからケータイを取り出して、詩衣子からのメールを読む。
「詩衣子の部屋にメッシー君の奥さんが乗り込んで来たって言ったでしょ? その後メッシー君と大喧嘩した奥さんが逆上して、バッグから包丁を取り出して『お前みたいな若くて乳がデカいだけが取り柄の女に! 悔しぃぃぃぃ!』って突っ込んで来たんだって。でも今年入ったばっかの新人とはいえ、あの子も地球防衛軍で常に訓練してるから、素人が何とかできる相手じゃないのよね。柔術で投げ飛ばして無力化した所を取り押さえて、警察に突き出したんだって。奥さんが警察に連れて行かれる時に『お前、一生許さないからなぁ!』って怒鳴って来たから、『あたしだって、『ただ飯』食わせてくれるだけの中年男に、家まで押しかけられて結婚してくれって迫られてて困ってたんだよ。お前がもっと女を磨いて、あのジジイをつなぎ止めておかないからこういう事になるんだよ! 人の所為にするな!』って言ってやったそうよ。その直後に避難命令が出て、今関東支部に向かってる最中だって」
「アイツ派手なプライベートを過ごしてるじゃん。そこまで腐ってると逆に天晴れだわ」
「でもあの娘ってこんな娘だっけ? おじさまキラーなのは確かだけど・・・」
詩衣子のメールに違和感を感じた備井子だが、その疑問を司令部からの通信が打ち消した。
休憩終了だ。
「臨時司令本部よりチームABCへ。現在東京都全都民に避難命令が発令中です。そちらからも目視できているかも知れませんが、モンスター軍団は東京ソラツリーを目指している模様。ドラゴンタイプのモンスターが都心周辺の五箇所に設置した亜空間ゲートから、かつてないモンスターの大軍が吐き出され続けています。浅草に居るあなたたちが一番近いので、大至急ソラツリーに向かってください。詳細データは転送中です」
「とうきょうソラツリーならあーしら今向かってるとこじゃん」
いつも通りお気楽に応える英子。
「避難状況はどうなっているの?」
チームの良識、備井子が真面目な質問をする。
「現在一時避難所として提供していただいている場所として、特務機関ネルブが所有する箱根の地下深くに造られた第二新東京市と、二千年女王が所有する地下大空洞にある大団地の二箇所があります。実質二千年女王の大団地だけで数は十分に足りていますが、ネルブの方が遠くても施設が良いので、そちらも人気です。二千年女王の地下大団地の入口は関東平野中のいたる所に設置されていますので、東京中の都民がスムーズに避難誘導されています」
「二千年女王の大団地ってさぁ、『The 公団住宅』って感じで、築40年超えのボロボロの団地じゃん? 住むならネルブっしょ」
「まぁたあんたはそう言う事言ってぇ。二千年女王のブラックリストに載ったら、いざと言う時助けて貰えないわよ。二千年女王の地下大空洞って言ったら、関東平野全部をカバーしているのよ! 判る? 関東平野全部よ? 東京都・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・神奈川県全部カバーしているのよ? そこに住んでいる人全部の住宅を用意してくれているのよ? そこに文句言ったらバチ当たるわよ? あんた」
「えぇ!? 関東平野全部の人の住宅を二千年女王個人で用意してくれてんの? めっちゃ金持ちじゃん!」
「そこよね。あんたのポイントは。二千年女王は個人経営じゃ無くて『二千年女王』って言う遥か昔から続いている組織なのよ。ちなみに同じ組織が世界中の都市の地下にあるわ」
「何のために?」
「もしもの時は都市ごと宇宙に脱出できるのよ。東京の場合は関東平野全部がズボッと宇宙に飛び出すらしいわ。同じ様にニューヨークやパリや世界中の都市を、都市ごと宇宙に脱出する準備をしているらしいのよ」
「すげ〜クレイジーな計画じゃん」
「それが計画じゃ無くて、もう遙か昔に完成しているのよ。地下大空洞は実は大空洞船って言う宇宙船なのよ!」
「マジで?」
「マジよ。だから英子、あんまり二千年女王の悪口は言わない方が良いわよ。地球が壊れる事態になった時に、宇宙船に乗せて貰えないかもよ」
「めっちゃやべ〜じゃん。配信では絶対言わないようにするよ」
「お二人とも良いかしら?」
「やっべ、まだ繋がってたじゃん。いーよ、何?」
「水戸目院支部ちょ・・・」
オペレーターが水戸目院からの伝言を伝えようとしたところで、傍に居た本人がムリヤリ割り込んで、彼女からマイクを奪った。
「支部長ではない。司令長官(仮)である。田中隊員、佐藤隊員、今現場は大変な事になっている。くれぐれも無理をしないように。生きて帰ってくる事が君たちの仕事だ! 解ったな?」
熱血水戸目院はカッと目を見開いて、血の涙を流しながら訴えた。
「あーハイハイ。了解したじゃ~ん」
血の涙を流している水戸目院の全力の心配を他所に、英子は面倒臭いのでサッサと通信を切った。
敵はその時点での『黒い太陽』勢力範囲ギリギリだった、隅田川の北側にゲートを設置したので、現在怪物どもは隅田川を超えてソラツリーに大挙して迫ってきている。
ゲートが開くと同時に魔王城周辺に漂っていた瘴気もまた、一気になだれ込み、魔界のパワーは急激に高まった。
東京都民の大半は地下鉄の更に奥深くに設置してある、二千年女王の地下大空洞に伸びる坑道に逃げ込んでいたが、中には逃げ遅れた者も多く、子供ほどの背丈のゴブリンやグレムリンの集団に撲殺された上に、小さい口で無数に食いちぎられた者も居れば、5メートル10メートルを超す巨大なモンスターにわしづかみにされ、頭から食いちぎられた者も居る。
モンスター軍団は、基本的には『兎に角高いところ』であるソラツリーを目指しているが、『肉が食いたい』という一時欲求を満たすためだけに行動をしているモンスターも多く、ゲートから出て直ぐに隊列を離れて、逃げ惑う人間を襲いに走ったヤツも相当数いる。
ソラツリーを目指している軍団は、魔王軍の大本命の侵略者たちだ。
ゲートから吐き出され続けているモンスターはざっと三十万強。
逃げ遅れた人間たちはあっという間に湧き出るモンスターに捕食され、その数を減らしていった。
何台ものパトカーがバリケードを組んで、警察官たちが果敢に5連発リボルバーの『M360J SAKURA(サクラ)』で応戦するが、無限にさえ感じられる小型モンスターを数十体倒したところで、まさに『焼け石に水』で、パトカーは大型モンスターに軽く蹴散らされ、警察官も為す術も無くモンスターの濁流に呑み込まれていった。
先頭は魔獣軍団の毛むくじゃら団長【ウガルルム種 呀王】と、いつもタッグを組んで先陣を切っている亜人軍団長【オルグ・ハイ種 貪る者】だ。
普段はこの2軍団でいつも行動しているのだが、今回は少し違う。
貪る者の肩には死霊軍団長【始祖ヴァンパイア リリーラ】の分身体が乗っていて、3軍団の混成チームになっている。
いつもムッツリしている貪る者は、密かに片思いをしている(つもりの)リリーラが肩に乗っているので、かなり興奮している。
見た目はツインテールの幼女であるが、三万年以上を生きる不老不死の始祖ヴァンパイア『ロリババァのリリーラ』は、『ムッツリスケベ 貪る者』の自分への恋心を利用して、コイツの手柄を横取りするつもりだ。
隅田川は【海精 ネーレーイス】と【水精 ナーイアス】によって水を分断され、水が無くなったところに【ミノタウロス】【デュラハン】【アヌビス】【ケンタウロス】【ケルセト】【クリュサオル】などの隊長級に成長した10メートルクラスのモンスターが突入して干上がった隅田川を埋め尽くし、そいつらを踏み台にして【ゾンビ】【リザードマン】【ケット・シー】【ダークピクシー】【レプラコーン】【グレムリン】【ホムンクルス】などの2~5メートルクラスのモンスターが川を渡っていく。
少し遅れて、空にも一杯の魔物が黒い瘴気を吐き出しつつ、制空権を侵食していくがごとく、雲霞の大群で埋まっていく。
【グリフィン】【ピッポグリフ】【ガルーダ】【ロック】【ウィルオーウィプス】【レイス】【スペクター】【ワイバーン】【ヴィーヴル】、幻想世界のモンスター勢揃いだ。
中でも言問橋からソラツリーにまっすぐ向かっている様に見える合わせて4車線ある言問通りは、道幅が広く侵攻し易いので、呀王と貪る者をはじめとして、【パフォメット】【ヒッポグリフ】【ラミア】【イフリート】【ボルダゲー】【エンプーサ】【ナックラヴィー】などの15メートル以上ある中隊長以上の軍団の行進は圧巻だった。
彼ら超大型モンスター軍団は、メインで立ち並ぶ3階建てのビルを遙か下に見下ろして軍団は進む。
たまに出てくる12階建てや10階建てのマンションには、好戦的なイフリートやパフォメットが行進する周辺を壊しながら侵攻している。
想像していたよりも『シュショックー』の数が少なく、イラついているのだ。
進軍していくと、もう少しで空ツリーに到達するという小梅通り西の交差点で、5階建てや10階建てのビル群がその行く手を遮るように建ち並んでいる。
その一番手前の高さ15メートルの5階建てのビルの屋上に、6つの人影が現れた。
「ギャオレッド」『カキーン』
「ギャオイエロー」『カキーン』
「ギャオブルー」『カキーン』
「ギャオブラック」『カキーン』
「ギャオホワイト」『カキーン』
「ギャオシルバー」『カキーン』
6人の戦士はヘルメットを取った状態からクルッと回りながらヘルメットを被り、次々と三脚にセットした自撮りカメラの前で、上半身のみのポージングを『カキーン』の音に合わせて決めていく。
「「「「「「命あるところ、正義の雄叫びあり! 百動物戦隊、ギャオレンジャー!」」」」」」
ドカーーーーーン!
ビルの屋上で6色のケムリが爆発音と共に大きく弾けた。
爆発音を聞いて、その後ろのビル群の影から【ギャオライオン】【ギャオイーグル】【ギャオシャーク】【ギャオバイソン】【ギャオタイガー】【ギャオウルフ】をはじめとしたメインのゴッドパワーメカと一緒に、【ギャオエレファント】【ギャオジラフ】【ギャオベアー】【ギャオボーラー】【ギャオコング】などなどなど、総勢二十六体のゴッドパワーメカがぬっと顔を出した。
そのほとんどのゴッドパワーメカは全高17~24メートル前後で、全長30メートル級であるが、【巨大ギャオライオン】【ギャオリゲーター】【ギャオファルコン】は全高50メートル前後で、全長70~80メートルと言う、とんでもないデカさを誇っている。
全高1.2メートル全長2メートルの【ギャオウルフローダー】も数に入っているぞ!
オモチャを買い揃えなければならないお父さんは大変だ!!(号泣)
ちなみにゴッドパワーメカには、それぞれ魂が宿っていて勝手に動く!
そしてレンジャーを乗せることによって、2倍のパワーを発揮できるようになるのだ!!
その彼ら「百動物戦隊ギャオレンジャー」が、魔王軍の進軍を止めるべく立ち上がったのだ。
今ここに、決戦の火蓋は切って落とされたのだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〈あとがき〉
さて、いよいよ舞台は最後の地、東京都心に持ってきました。
小説の中で漫画やアメコミっぽい表現をふんだんに使ってみようかと思い立ったこの話しですが、正直、本当にこれで良いのだろうか? と言う文面ですねw
何て言うか・・・
助けてド〇えもん!
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。
宜しければ、♡で応援。
★★★で応援をよろしくお願いいたします。
みなさまの暖かい応援をお待ちしております。
応援して頂けますと頑張れます。
応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。
誠にありがとうございます。
感謝しております。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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