第28話「Battle in 魔王城 その4」

第二十八話「Battle in 魔王城 その4」



「ジャイダー!!」


 魔王城もろとも爆散する超次元戦闘母艦パピロス・バトルフォーメーションを見て、バトルジャイドルの中で絶叫するマニー。

 その衝撃波は前線から少し離れている力なく飛んでいるバトルジャイドルにも届き、木の葉のように衝撃波に押されるがままクルクルと姿勢制御を無くしていた。


 マニーの正面モニターが光量オーバーで真っ白になっている中、バトルジャイドルの10メートルほど手前に、不意に何かが出現した。


 あれは・・・【超次元マシーン・ブルボーグ】だ!

 ジャイダーは生きていた!


 パピロスが魔王城に激突する寸前、不思議空間を移動可能なバイク・ブルボーグに乗り込んだジャイダーは、パピロス内から即座に不思議空間に入り、爆発を回避しながら脱出してきたのである。


「ジャイダー!! ジャイダーよく無事

で・・・」

「あぁ、マニー。俺は無事だ。バトルジャイドルへの着艦を求める」

「OK。後部ハッチ開きます」

 こんな時でもポーズを取って大きく頷いてボタンを押すことは忘れない。


「マニー!」

「ジャイダー!」


 バトルジャイドルのコクピットに上がってきたジャイダーは、出迎えたマニーときつく抱き合った。二人が熱い抱擁を交わしたした後、ジャイダーは言った。

「スカイジャイドルを呼び戻そう。俺たちはまだ戦える」

「OK!」


 宇宙刑事の炎はまだ、消えていない。




 ついに魔界の大地にまで登ってきたシュショックーどもが、その汚らしい土足で我が魔王城の前に立っている。身の程知らずが。


 魔界最大級クラスである我の身長でも余裕の高さを誇る、高さ40メートルの平屋建ての魔王城よりもデカい角張った恐竜族が、シュショックーどもには味方についておる様だ。

 味方についておる?・・・そうでは無いな。

 あの恐竜は生物では無さそうだ。


 体当たりで自爆を仕掛けてきた空飛ぶ城と言い、シュショックーどもは動く城を建築するのが得意な様だ。しかも城を空に飛ばせる事もできる。

 あの技術はぜひ欲しいものだ。


 などとこれからの展開に頭を巡らせていた時、七色にキラめく極彩色のビーム、『ギガ・バスター』がメガガッジーラ1号の口から魔王目掛けて照射された。


 あわや直撃かと思われた刹那、ゴウラの右裏拳が一閃。キラめくビームは魔王の手の甲に弾かれ、その軌道を大きく反らしたのだ。

 反れたビームはゴウラの右側に居た取り巻き何名かを道連れに、ゴウラの右床に大穴を開けた。


「ビーム曲がったぁぁぁぁ?」


 地球防衛部所属・チームカジのユウキ隊員は、全高50メートルのメガガッジーラの操縦室から実況録画を続けている。


 よもやビームがパンチで曲げられるなど、誰が思っただろうか?


 魔王の反撃が始まった。


 ゴウラはゆっくりと右手を顔の前に待ってきて、恐竜型の空飛ぶ城に向かって『パチン!』と指を弾いた。


 彼の王の指先からは小さな炎が生じ、ミサイル艦ガッジーラに向かって飛んで行った。

 生じた炎は急速に成長し、直径20メートルを超える大火球と成っている。

 初級魔法『ファイヤーボール』だ!

 しかしその炎の魔法は、もはや究極に極められており、芸術の域にまで達しているレベルだ。


 BOBOBOBOBOBOBOBOBOBO


 火球の炎はボボボボボっと風切り音を鳴らしながら飛ぶ。飛ぶスピードは少し遅い。


『パチン!』『パチン!』『パチン!』『パチン!』『パチン!』『パチン!』『パチン!』・・・・・・・・・・!!!


 魔王は指パッチンを鳴らし続けている!

 彼にとって初級魔法『ファイヤーボール』の魔力消費量は、無いに等しい。


 巨大な火炎弾の塊が、分厚い炎の壁と成ってメガガッジーラを包み込む。


「WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING」

「「「「ぐあぁぁ!!」」」」


 ガッジーラの操縦室には乗組員の悲鳴と警告音が鳴り響き、警告灯が真っ赤な明滅を続けている。

 室内は灼熱地獄と化している。


 しかし元々対ガッジーラ超決戦兵器である【メガガッジーラ1号】は、ガッジーラの必殺技である『ラウラニウム・ハイパー熱線』に耐える為に開発された金属『NT-1』に、人工ダイヤモンドをコーティングした、最強の装甲で守られている。


 だから、地獄の劫火で焼かれたメガガッジーラではあるが、メカは耐えきった。

 コクピットにはかなりの熱が回ってしまったが、なんとか全員無事だ。



「ぜーっ。ぜーっ。みんな見ているか? アレが敵の親玉っポイぞ。もの凄い攻撃だ。パピロスを破棄した龍と、正面に居る悪魔のようなモンスターは、地上に出現している怪物とは比べものにならないほど強い。桁違いな強さを感じるぞ」


 ユウキが実況をしていると、ガッジーラの横を一つの影が猛スピードで横切っていった。


 ゲッP2だ!


 ゲッP2はマッハ3で移動できる。並み居るデーモン・グレーターデーモンを『ゲッpビジョン』と言う高速移動時に使える分身の術で交わしまくり、一直線に魔王に向かっていった。


「ふむ。こざかしいわ!」


 魔王は巧みに近づいてくるゲッP2に対し、指を一本突き出して呟いた。


「地獄の炎よ、剣と成れ!」


 指先から吹き出た赤黒い炎は20メートルほどの火柱の形を取り、直ぐに幅広く薄い形に変えながら、黄色・白・水色と変色させ、幅広の両手剣のような形に成った。

 剣の芯(指先)は白い炎の輝きを放っている。

 炎の剣の完成だ。


 魔王は突っ込んでくる全高38メートルの銀色の物体に、神速の剣を振るう。

 あわやゲッP2は炎の剣に焼き切られ、真っ二つに成ったと思われた。

 ゴウラ自身も『仕留めた』と感じた。

 しかしそれは影だった。


「ゲッpマッハ!」

 

 影分身を魔王に切らせたゲッP2は、自らは最高速のままドリルで魔王の足下に穴を掘って城の中に飛び込んだ。


「ゲッPタイフーンッッッ!」

「うおっ!?」


 魔王が立っている真下から尖った頭のゲッP2が左腕のドリルを掲げながら、竜巻を纏って『ボコォォォッ』と飛び出し、瓦礫と化した屋上は竜巻に巻き込まれてつぶてとなって魔王を襲う。同時に魔王自身も竜巻の力で不安定に浮き上げられて、グルグルと回転に飲み込まれた。


「風の魔法か。やるではないか。ならば、コレはどうか?」


 竜巻に巻き込まれながらも炎の剣を突き刺そうともがくゴウラ。

 しかし、剣は空を切るばかりだ。


「ええい、まだるっこしいわ!」

 業を煮やした魔王が、再び地獄の炎を呼び出す。

「炎よ、在れ!」


 再び召喚された赤黒い炎は、今度は竜巻に巻き込まれてあっという間に炎の竜巻と化した。

 これなら纏っている竜巻を解除しない限り、ゲッP2もダメージを食らい続けることになる。


 ガオオオオオン!


 メガガッジーラが吠えた。メガガッジーラ1号はガッジーラをリスペクトとして造られた機体であるため、必殺武器を使用するときには一旦大きくのけぞって吠えなければならないのだ!


 メガガッジーラの胸部がバコッと観音開きに大きく開き、高圧電磁光線が魔王ゴウラに向かって撃たれた。『クルスアタックビーム』だ。

 同時に鼻から火炎弾を放つ『デスファイヤー』、両肩から『パラライジングミサイル』が発射された。


 ゲッPロボのゲッPタイフーンで翻弄される中、魔王は不覚にもパラライジングミサイルで麻痺毒を食らってしまい、大岩をも一撃で爆砕するクルスアタックビームによって左足のふくらはぎの一部を吹き飛ばされてしまった。


 そこをゲッPロボ最強の握力を誇るペンチのような右手『ゲッpアーム』でゴウラの左肩をガッチリ掴み、そのままネジ切ったっっ!!!


「やったぜ! 我らがゲッPロボが敵大将に大打撃だっ!! どうだ、地球防衛軍の力を見たか!?」 ユウキ隊員は大興奮で中継を続けている。


 GUOOOOOOOOOOO!!!


 かろうじてくっ付いてはいるが、千切られた左肩から血をドバドバ流し、怒りに顔をゆがめ激高する魔王ゴウラの咆哮は、轟音となって辺りに響いた。


 魔王の咆哮を合図に、一瞬の遅れを取り戻したデーモン・グレーターデーモン部隊が挟み撃ちの形で戻ってきて、氷・炎・雷などの多種類の魔法でメガガッジーラとゲッpを攻撃し始めた。


 そのデーモンたちの攻撃を盾に、魔王は一旦引いた。

 打たれ弱いのか魔王?


 デーモン部隊の後ろには、ガリガリムとの死闘を制したグレーテストモジンガーが距離を詰めてきている。

 モジンガーはガリガリムとの死闘により、胸の放熱板と右膝から下を失っている。

 大きな裂傷も含めて機体中傷だらけだ。


 戦闘はしつこく再生するウルトラレックス・ガリガリムとの長期戦になり、最終的にガリガリムの脳天にモジンガーブレードを突き立て、『ダブルサンダーブロークン』のカミナリをブレードに落としてやって、やっと不死身恐竜を倒せたのだった。



 防衛軍は気付けば前後左右上下、全方位をモンスターに取り囲まれていた。

 魔王城爆砕の時、あまりの衝撃で驚いて飛び出してきた後詰隊も含めて、城内に居た全てのモンスターが城の外に飛び出してきており、旗艦メガガッジーラ1号目掛けて一斉攻撃を始めた。

 その戦列には先程敗走してきた恐竜軍団も加わっている。


「外は魔法攻撃の嵐だぜ。でも安心してくれ。地球防衛軍の中でも屈指の防御力を誇る機体ばかりだ。そうだ! このメガガッジーラ1号がミサイル艦と呼ばれる理由を知っているか? ・・・うむ。そうそう。沢山の種類のミサイルを機体中から発射できるからだよな。でも、それだけじゃないぜ! なんとメガガッジーラの中にはオートマチックミサイル工場が内蔵されていて、どこまでもミサイルを供給できるんだ! 凄ぇだろ?」


 ユウキの解説の通り、メガガッジーラとゲッp2の全方位を取り囲む数万の敵に対して、全方位同時にミサイルを撃ち続けているが、弾切れの様子は無い。


 飛行系のモンスターにはパラライジンングミサイルを集中させている。




 モンスター軍団が肉の壁となって魔王とゲッp2の間に割って入り、ダメージを食らった魔王様を彼のロボットから引き剥がす。


「魔王様、こちらに」

「うむ」

 ナンシーが近付いてきて、【虹のクウォータースタッフ】を振って治癒魔法をゴウラに掛ける。


 魔王の左肩の損傷は見る間に繋がり、傷もあっという間に癒えていく。


「未知の敵と戦う事は、いつも心が踊るな。きっとグクールのヤツめも楽しんでおるだろう。我も少し本気を出してみるか」


 敬愛するゴウラのその言葉に、ナンシーはウットリと熱い視線を魔王に向ける。


「それでは、久方ぶりにあのお姿になられるのですね?」

「うむ。ナンシーよ、この城はもう要はなさぬ。魔王城の兵力を最低限残し、お前は残りの全軍と共に先行している【呀王】と【貪る者】に合流するが良い」

「は。仰せのままに」



 『サンダーブロークン』を自らのグレーテストブースターに落とし、カミナリの力をエンチャントしたウイングブレードでモンスターを切り刻みながら突き進む、『サンダーブースターアタック』を使ってグレーテストモジンガーが合流してきた。

 ゲッP1にチェンジしたゲッPロボも『ダブルトマホークブーメラン』で敵集団に穴を開けながらメガガッジーラに合流した。


 モジンガーとゲッpを加えたとは言え、まだまだ3万体はくだらない数がひしめいているモンスター軍団の猛攻は続いている。

 そしてその上空には大きく弧を描き、ゆっくりと旋回している魔龍王グクールが、高みの見物を決め込んでいる。


「ゲッピィィ、ビィィィィンムェッッ!」

 ゲッpの必殺技、腹から出るビームだ!


 ガガガガガガ!!


 ミサイルが、ゲッpビームが、サンダーブロークンが、魔王城周辺に固まっているキマイラやジャイアント系モンスター、スペクター・錆食い等の魔法生物をまとめて薙ぎ払う。


 地球防衛軍の中でも防御力の高いスーパーロボット系の3体だからこそ絶え間ない攻撃にも耐えているが、それもそろそろ限界だ。

 そう感じていたその時だ!


 攻撃が止んだ。


 次の瞬間、こめかみに指を当てているポーズの魔王ゴウラが、突然メガガッジーラの目前に現れた。テレポートだ。


 魔王は4枚の羽を広げ、空中に浮遊している。


「やぁ諸君。第2ラウンドと行こうではないか」

「アイツ、傷が無くなっている!? 不死身か?」


 肩が千切れそうになるほどのダメージを与えたはずだ。

 しかしヤツにその痕跡は無い!


「破っっっっ!!!」


 ゴウラが裂帛の気合いを入れると、全身から金色の闘気が吹き上がり、その闘気によって黒い髪の毛がブワっと逆立ち、金色のツンツン頭に成っている。


「スーパーゴウラ、ギアセカンド! シュショックーどもよ、格の違いを思い知れ!」


 地球防衛軍の面々には、魔王が何を言っていたのかは解らなかったが、彼の者が何かをこっちに向かって喋っている様だという事は判った。


 そのあと、不意に消えた。


 消えた瞬間、彼はメガガッジーラの真後ろに出現して、その愚鈍な胴体に回し蹴りを決めたのだった。


BAKOOOOOOOOOMMM!!!!





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉


軽い気持ちで「その1」「その2」と付けてしまいましたが、まさかまだまだ続くとは・・・・


 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、♡で応援。


 ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


 応援して頂けますと頑張れます。



 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



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