第27話「Battle in 魔王城 その3」
第二十七話「Battle in 魔王城 その3」
全高430メートルの超次元戦闘母艦パピロスに対して、14分の1しかない、全高30メートルの黒い龍はたった1匹でやってきた。
先程まで取り付いていたモンスターどもは一斉に離れ、今は遠巻きに囲んでいる。
「貴様の強さ、我に見せてみよ!」
グクールは羽を目一杯広げ、天に向かって咆哮し、一直線に城のごとき巨大な敵に向かっていった。
パピロスの背中にあるウイングからのパピロスビーム・左手のパピロスレーザー・胸からのパピロスミサイルに加えて、モジンガーの様に胸の放熱装甲板からパピロスファイヤーも同時発射してきた。
歴戦の勇士ジャイダーは、迫り来る敵に危険を感じ取ったのだろう。たった一体のドラゴンに全力攻撃だ。
漆黒の恐竜、エンシャントブラックドラゴン・グクールは、光の速さで飛んで来るレーザーをバレルロールで躱し、ミサイルと熱線をブレスで無効化しながら、爆煙をかき分けてあっという間にパピロスに取り付いた。
細かいミサイルや対空砲火が乱れ飛ぶ中、パピロスの左手から放たれたレーザー光線が魔龍の顔の横を掠め、鼻が少し焼けた。
イラッとしたグクールはすぐさま反転して巨大ロボの左手首に尻尾を叩き付ける。
グクールの全高よりも少し小さいパピロスの右拳は、魔龍王の一振りで根本からスパッと斬られて落下していった。
魔龍王グクールにとっては単なるテイルスピンだが、破壊力は超必殺技級だ。
テイルスピンだけじゃない。何気無いパンチやキックですら、彼の場合その一つ一つが超必殺技級の破壊力を持つ、『ラノベの最強チート転生勇者』のごとき反則級の怪物なのだ。
魔龍王と呼ばれる由縁である。
左手首を切り落としたグクールは、パピロスの胸の辺りに居る。
パピロスの胸は放熱装甲板の真正面で、熱線砲の格好の餌食だ。放熱装甲板は30メートルのグクールをも余裕で包み込む大きさだ。
大口径の熱線が、魔龍の姿を掻き消すほど大量に放たれた。
一瞬で彼の龍の視界全てが、真っ赤な炎に染まる熱戦が照射され、グクールはそれを避けられなかった。
熱線砲の直線上に居たドラゴン軍団の数体も逃げ遅れて焼かれ、内2体が焼け焦げて墜落した。
魔界最古の龍、エンシャントブラックドラゴンの棲み家は、魔界において『地の果て』と言われる大活火山だ。
光が届かず、大地も木も水も荒れ果てた荒涼とした魔界に置いてさえ、『地獄のような光景』と言わしめるほど灼熱が支配した世界、それが『地の果て』だ。
大活火山の火口は常に1000℃以上の熱を蓄えており、ドロドロに焼け溶けた大地である『溶岩』で満たされたプールとなっている。
その火口を根城にしていたグクールにとって、熱線などそよ風に等しい物だった。
つまり彼は、熱線を『避けられなかった』のではない。
『避ける必要が無かった』のだ。
よって無傷。
BAKO!! BOKooom!
からのパンチ&キック。
一見何の変哲も無いパンチが、パピロスの鎖骨の辺りに「ボコッッ」と炸裂して、グクールと等身大の大穴を開けた。
蹴り上げた足が、放熱装甲板を一撃で甲板から引き剥がし、捲れて落下していった。
ドラゴンのラッシュは続く。グクールはその長い首を後ろに反り返らせ、大きく息を吸った。
DOGGOOOOOOOOM!
ドッゴォォォォォォォム!!
魔龍は禍々しくも真っ黒いブレスを吐き出した。
飛行中に出したそれよりも長く大きなブレス攻撃だ。
ブレスはいとも簡単にパピロスの装甲を貫通してみせた。
黒いブレスの中ではキラキラバチバチと放電現象が起きていて、パピロスを貫通した部分の穴を更に広げ、内部の電子機器を破壊したくさんの内部爆発を誘発させた。
超次元戦闘母艦パピロスは先の一撃で機関をやられ、各所で小規模な爆発起こし、炎と煙を噴きながら大地に落下していった。
「なんて強さだ。あの一瞬でこのパピロスが破壊されるとは・・・」
ジャイダーは意を決して操縦桿を握った。
「機関全開! パピロスよ、もう少しだけ耐えてくれ!」
68000トンと言う巨大質量を持つパピロスはまだ動く。
もう飛行することは叶わないが、落下しながら姿勢制御で魔王城に体当たりすることはできるはずだ。
パピロスのフルファイヤアタックを防いだあの不思議なバリアも、この質量を受け止められないだろう。
「良し、軌道に乗っ、うおっ!」
バーニアを吹かして軌道修正が完了しそうになった時、上空から追いかけてきたグクールの体当たりが炸裂し、パピロスの横っ腹がひしゃげ、弾き飛ばされて軌道が大きくズレたのだ。
それでもジャイダーは再度瞬時に軌道を修正し、安定するのも待たずにメインバーニアに火を入れた。
「エンジンフルスロットル! 亜空間ドライブ圧力弁閉じる。亜空間ドライブエンジン内圧力上昇確認。目標敵基地」
グクールは完全スルーだ。
まだ生きている両ウイングのパピロスビームを撃つ。
もしかしてバリアが無くなっているかもしれないと、一縷の望みをかけてみたが、やはりまだバリアは有効状態だ。
バリアまでの距離を確認。そのためのビーム攻撃だ。
パピロスビームはそのままを撃ち続ける。砲身が焼け溶けようが構うものか。
モンスターどもが特攻するパピロスに光線やら体当たりやらを仕掛けてきているが、黒龍のようにパピロスの軌道を変えるほど非常識なダメージを与えるモンスターは居ないようだ。
魔王城激突まであと少し。パピロス最後の攻撃を完成させるまで操縦桿は離せない。100%確実にぶち当てるまでだ。
片側が捲りあがって使えなくなっているが、もう片方のミサイル発射口は何とか開いた。
いけるぞ。
「やめて! ジャイダー!!」
魔王城に一直線に突っ込んでいくパピロスを遠く、戦闘空域から離れたところで目視したマニーが叫ぶ。
が、ここでは声も通信も届かない。
胸から最後の一発になったパピロスミサイルを撃つ。少しでもバリアにダメージを与える為だ。
全長1キロ以上ある魔王城バリアに、激突直前にミサイルを噛まし、パピロスは胸から体当たりをした。
バリアが甲板にめり込む。
フルスロットルのまま固定されているエンジンは、超次元戦闘母艦が真っ二つにへし折れていくのも構わずに、グイグイその船体をバリアに押し付ける。
臨界点を突破した亜空間ドライブエンジンが爆発した。
それはパピロス本体でのたくさんの内部爆発を誘発し、最後に大爆発を起こして超次元戦闘母艦パピロスは砕け散った。
「ジャイダァァァァァァァァァ!!」
超次元戦闘母艦パピロスはマニーが見ている前で爆散した。
遠く離れているこの場所からでもハッキリと確認できるほど、大きな火柱が上がり、遅れてもの凄い衝撃波が到達した。
ジャイダーは死んでしまった。
訓練生の頃から一緒だった相棒ジャイダーの死に、マニーは泣き崩れた。
魔王城が建っている半径10キロの魔界の大地にもひびが入り、魔王城の5分の1程度も爆発の衝撃で粉々に崩れて瓦解した。
魔王のバリアはついに破られた。
同時に魔術の媒体である戦闘用祭壇が、ビシッッと音を立て、二つに割れて倒れた。
魔術の逆流だ。
逆流は魔法陣の周りでバリアにエネルギーを注入し続けていた、ゴウラ直属の神官兵『ゴウラ隊』43名の内26名にも起こり、上半身が風船のように膨らんだ後に弾け、辺りに盛大に血しぶきを振りまいた。
「我が神より賜った祭壇が! おのれ、地上の下等生物どもめ。この代償は高くつくと思え。グレーターデーモン召喚」
グレーターデーモンキングであるゴウラは、全高20メートルのグレーターデーモンを10体召喚し、使役することができる。そして召喚させたグレーターデーモンはそれぞれが全高15メートルのデーモンを10体召喚し、使役することができる。
ここに110体のデーモン族軍団が召喚された。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〈あとがき〉
いい加減グクールやゴウラの活躍するシーンを書きたくなっていたのですが、なかなか思うように話が進められないです。
次回やっと魔王が動かせます。
今まで隅っちょで魔術ばかりしていたので、『本当に強いのか?』って威厳の無い魔王でした。
単純にパワーファイターのグクールに比べても遜色ないくらい強く描けたら楽しいです。
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。
宜しければ、♡で応援。
★★★で応援をよろしくお願いいたします。
みなさまの暖かい応援をお待ちしております。
応援して頂けますと頑張れます。
応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。
誠にありがとうございます。
感謝しております。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます