第26話「Battle in 魔王城 その2」
第二十六話「Battle in 魔王城 その2」
恐竜軍団の副軍団長である、全高20メートルを誇る大怪獣ギガノトプスのアンギャは、めちゃ焦っていた。
「クッソー、ナンシーのヤツめ、こんな時にガリガリムの大バカ野郎を殺しちまいやがって。アイツもアイツだ、戦闘でしか役に立たないクセに、死んじまうとは情けない」
巨大な怪獣が地団駄を踏んでいる姿はコケティッシュでもある。
ついさっきガリガリムが倒した敵に似ているが、そいつよりも明らかに一回り大きいヤツが攻めてきている。どうやらヤツは雷の魔法を使うらしい。
他にも変なヤツがもう一匹と、俺たちの仲間っぽい姿をしているが、俺たちよりも倍近い大きさな上に空を飛んでいる、見るからに俺たちの仲間じゃないヤツがいる。
アレはヤバい。ラプトルがゴミ粒みてぇだ。
幸いドラゴン共が交戦中だ。
その調子で潰し合ってくれたら良い。
あのデカいのは置いといて、雷ヤローと一戦交えて、隙を見て俺だけでも逃げる。
決まりだな。
恐竜軍団の中では一番頭が回る副団長は、敵の力量を見て既に逃げる算段をしていた。
「パタゴティタンども、火炎弾であの黒いのを撃て。プテラノドンの援護をする」
自身が騎乗しているパタゴティタンも含めて、全てのパタゴティタンに火炎弾を発射させた。
「グレーテストブゥゥゥメラン!」
グレーテストモジンガーが胸に付いている赤い三角の放熱板をベリっと剥がし、一度大きく振りかぶる。そこから名前の通りブーメランを投げる要領で投げる。見事なサイドスローだ。
グレーテストブーメランはクルクルと水平に回転しながら空を飛び、全高2メートル弱・翼を広げると全幅7メートル弱のプテラノドンの群れを、ガガガガガガっと斬り裂いてモジンガーの手に戻ってきた。
「ノーブルミサイル・二ースパイクキック・バックスピニングキィィィック」
おへそからミサイルを発射し、膝からジャキンッッとスパイクを出して真横のプテラノドンを突き刺し、そのまま振り向きざまの回し蹴りで周囲のプテラを薙ぎ払う。
「コージー君、大丈夫か? 返事をしろ! コージー君!」
群がるプテラを蹴散らして、コージーが操縦するジェットパイルダーの救出に行きたいグレーテストモジンガーの【鶴 魏鉄弥(つる ぎてつや)】だが、敵の猛攻がそれを邪魔している。
それでも上空のプテラノドン・地上からの火炎弾攻撃を掻い潜り・打ち払って、墜落しているジェットパイルダーの横に降り立った。
魏鉄弥がコージー機を拾おうと屈んだその時だ。
ガバッと開いた大きな恐竜の口が、グレーテストモジンガーに頭から食らいついた。
恐竜軍団長・ウルトラレックスのガリガリムだ。
「何が起こった?」
グレーテストは恐竜の口の中でもがき、両手でガリガリムの顎をこじ開けようとしているがビクともしない。
「おい! お前生きていたのか? 頭半分削れてただろう!? 脳みそ半分削れたら流石に死んどけよ」
副軍団長のアンギャが、『いくら何でも死んだだろう』とばかり思っていたガリガリムが生きていて、尚且つ消し飛んだ顔が元に戻っている状況を見て戦慄を覚えた。
やっとこのバカから解放されて俺の時代が来たと思っていたのに・・・この暴力バカは殺せるのか?
ナンシーに殺られて倒れた後、俺がトドメに胴体を細切れに切り刻んでおくべきだったのか?
色々な考えが頭を巡った。
「ざずがのオデも死ぬかとおぼったぜ。だがな、オデの脳みそはコンパクトにでぎているんだ!」
どうだ! と言わんばかりに自慢を噛ましてくるガリガリム。
しかし、うっかり喋ってしまったのでグレーテストを吐き出してしまっている。それには全く気付いていない。
「おい、逃げられているぞ! 単に脳みそ足りないだけなのに『コンパクト』って、ものは言い様だな? ってか突っ込みどころが多すぎて、何をどう突っ込んで良いか解らんわ! とりあえず死んどけてめぇ」
アンギャは勢い余って、ついホンネが口から出てしまった。
「何だか分からんが仲間割れか?」
モジンガーは今がチャンスとばかりにジェットパイルダーを右手で拾い上げ、左手は前方に突き出す。
「ドリルプレジャーパンチ」
左手首に収納されていた風切り翼が展開し、左手首はロケット噴射で飛んでいく。その際、羽の力で手首はグルグル回りながら飛んでいくので、Zの『ロケット式パンチ』よりも貫通力が増しているのだ。
「ゲッピィィィ、トマ、ホォウウウクッッッ」
上空で恐竜たち相手に無双をしていた【ゲッP1】が、グレーテストモジンガーの状況を確認して、斧を取り出した。
収納スペースとか関節部分は複雑だとか、そんな細かいことは全く気にしないゲッPロボが、首と肩の間から二振りの斧を抜き出し、
「トマ、ホォウウウクッッッ、ブウウウウウメランッッッ!」
裂帛の気合いと共にガリガリムに投げつけた。
全高38メートルのゲッPロボが使う斧は、それ自体で約10メートルにも成る代物だ。
その斧がグルングルン縦回転をしながら、ザクザクッと全高25メートルのガリガリムの背中に突き刺さる。
「GUGABYorJOっぎえjホアッッッ」
声にならない声を出して叫ぶガリガリム。
グレーテストはその隙にダッシュスクランブルで空を飛んで逃げることができた。
「ゲッピーキィィィィック」
ガリガリムに刺さっているトマホークをターゲットに、ゲッPロボが上空から降下しながらのキック。刺さっている斧を身体にめり込ませる。
ガリガリムは大量の血をまき散らしながら、左腕を肩から切り落とされた。
それでもガリガリムは振り向きざまにゲッPがキックしてきた足を、残った右手でガッチリ掴み、スキル『剛力』で半分握り潰しながら爪をめり込ませる。
実に単純なスキルだが、力技しか脳の無いガリガリムには最高に相性の良いスキルなのだ。
ゲッP1の足に指を突き刺したガリガリムは、250トンのゲッPを振り回し、地面に叩き付ける。
「オープンゲッピ!」
地面に叩き付けられる瞬間、3機に分離して難を逃れる。しかしベア号は捕まったままだ。
そこにメガガッジーラ1号機が着陸した。
全高50メートルの圧倒的なサイズを持つメカ恐竜は、着陸するだけで地上に居る小さな怪獣(2~5メートル)をたくさん踏み潰した。
ミサイル艦であるメガガッジーラは全身からミサイルを乱射しまくっている。
口から・鼻から・両手の指先から・膝から・首から・足の指先もミサイルになっている。
ガリガリムも爆炎に包まれ、衝撃でベア号を離してしまった。
「強い! 強いぞ、メガガッジーラ! グレーテストモジンガーよりも数段大きい首長竜でさえ、オレたちの下に這いつくばってるぜ! そしてこのミサイルの雨! 古代の恐竜が現代の兵器に敵うわけ無いだろう!」
メガガッジーラのコクピットから見る壮観な光景に、ユウキの中継も自然と熱が籠もる。
魔界では圧倒的な暴力を振るった恐竜軍団だったが、スーパーロボットの前では為す術が無い。
メガガッジーラ周辺に広がる爆煙の嵐によって、恐竜は淘汰されていった。
更に追い打ちとばかりに、口から極彩色のビーム『ギガ・バスター』を発射。
ギガ・バスターは先頃宇宙から飛来した宇宙怪獣【メカキングギッドーラ】のレーザー光線砲を解析して作られた試作段階の武器だ。その威力はすさまじく、恐竜どもをなぎ払うように吐かれた七色のレーザーは周囲を埋め尽くしている恐竜軍団を消し炭に変えていく。
「機長、機体温度が急速に上昇しています。このままでは直ぐに危険レベルに達してしまいます!」
ギガ・バスターを掃射し始めてわずか5秒の出来事だ。
「何だと!? ギガ・バスターは危険すぎるのか?」
「オーバーヒート! 機関緊急停止!」
副長が悲鳴を上げる。
機長の判断が一瞬遅れたために、メガガッジーラのエンジンはオーバーヒートを起こしてしまい、安全装置が作動してしまった。
ギガ・バスターは過ぎたる兵器だったのだ。
「ヤバい! 突然真っ暗になっちまった。機長、何が起きたんだ?」
撮影用のライトを準備しながらユウキが聞いた。
「ギガ・バスターだ。まだ完全では無かったらしい。とてつもない量のエネルギーを一気に供給してエネルギー変換を行った為に、エンジンが悲鳴を上げちまった。たった10秒の照射もできなかった。副長、復帰にはどのくらい掛かりそうか?」
「15分、いえ、10分待ってください」
「敵のただ中で10分か! 相手が恐竜だからと言っても何が起こるか解らんぞ?」
「予備電源に切り替わります」
「よし、私も機関室に行こう。少しでも冷却時間を縮めるのだ」
メガガッジーラの乗組員たちはかなり焦っていたが、圧倒的な虐殺の前に手も足も出なかった恐竜軍団副団長アンギャは、団長のガリガリムを差し置いて、「今がチャンス」と全軍撤退を命じた。
魔界では圧倒的な重量と暴力で、並み居る敵を蹂躙してきた恐竜軍団だったはずだ。
それがどうだ? 30000体居た軍団が、見るまでもなく激減している事が判る。
魔王城に戻って、魔王軍に合流するべきだと考えたのだ。
その際、「アイツなら死なないだろう」という予測の元に、アホのガリガリムは放っておかれた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〈あとがき〉
なんか書き終わったらエライ長くなっていたので、急遽2話に分けました。w
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。
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みなさまの暖かい応援をお待ちしております。
応援して頂けますと頑張れます。
応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。
誠にありがとうございます。
感謝しております。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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