「魔王軍サイド」

第25話「Battle in 魔王城 その1」

「魔王軍サイド」


第二十五話「Battle in 魔王城 その1」



 ジャイダーが超次元戦闘母艦パピロス銃型形態から放たれる、超次元波動砲ビックマグナムで魔王城を直接攻撃した為、あまりの衝撃で「何事か?」と身長30メートルの魔王ゴウラと、同じく30メートルの魔龍王グクールが様子を見に屋上に上がって来た。


 魔王は上空の様子を見るや、背中のマントを翻した。

 その背中には普段マントで隠されていて見えない、四枚の翼がコンパクトに折り畳まれており、翼の真ん中には8メートルの戦闘用祭壇がホルダーによって収納されている。


 戦闘用祭壇は死の神である【深淵の神・ハデデス】から、使徒の証としてさずけられた八角形の青い石柱で、底面は突き刺せる様に鉛筆の様に尖っている。

 石柱の表面には、ビッシリとルーン文字が彫り込まれており、神代世界の材質で出来ているので、何処にでも突き刺さる。


 ゴウラは背中から戦闘用祭壇を抜き放ち、魔王城の屋上に突き刺した。

 途端、石柱を中心に魔法陣が広がっていく。


 10メートル級の魔力の強い魔族を集めた、魔王ゴウラ直属の神官兵『ゴウラ隊』43名が、祭壇を中心にグルリと並び、石柱に魔力を注ぎ始めた。

 戦闘経験値が高い彼は本能的に危機を察知し、準備を整え終えていた。ヤル気だ。


 その時、グクールが驚愕の声を上げた。


「アレは一体何だ?」


 ゴウラがグクールの見る方向を向くと、魔王城を撃ってきた、何の形か解らない空に浮く巨大な空中要塞(パピロス銃型形態)が、更に変形している。


 どうやら人型の形態に形を変えている様だ。


 城が空を飛ぶ事自体、魔界では有り得なかったことだが、その城が変形するなど前代未聞だ。

 流石の魔王も魔龍も、驚きを隠せないでいた。


 マスターリッチゾンビのナンシーは、先程のモジンガー撃退時もそうであったが、普段からヨレヨレのシャツとボロいジーンズを履き、その上から白衣を羽織っていると言う服装で、髪もボサボサでオシャレなどは全く考えていない腐女子だ。


 しかし、ゴウラが屋上に上がって来たと見るや、ナンシーは反射的に転移魔法で自室に戻った。

 部屋に戻るや否や、腐女子はドレッサーの前に座ってボサボサの髪にミストをぶわァァっと吹き、全力で髪をとかす。

 ファンデーションもパパパパパパンと顔に叩き、チークを軽く入れ、血色の悪い死体顔があっという間に生気を取り戻していく。

 ツケマ付けてカラコン入れてデカ目にし、真っ赤なルージュを塗って完成だ。


 ウォークインクローゼットに飛び込む。


 着ている穴が空いたシャツとGパンを脱ぎ捨て、黒いレースの下着に履き替え、シースルー気味のピンク色したロングドレスを着る。

 性能よりも見た目重視の、虹色の宝玉が付いたクウォータースタッフを引っ張り出して、姿見の前に立つ。


「良し!」


 ホンの10数分前の腐女子とは別人で、今は美人オーラを出しまくっている美人魔法使いの完成だ。

 全力でおめかしをして、愛する魔王の前に転移魔法で戻る。


「先程の揺れは何事ですか? 魔王様」

 今来たと言わんばかりに魔王の前に現れた身長17メートルのナンシー。

 それでもゴウラに比べたら半分の身長しか無いので、彼の前では可愛い女の子を演じられる。


「おぉナンシーか、今日も可愛いな。早速で悪いが、天空魔法であの城を攻撃して見せよ!」


 流石は全ての魔族を統べるグレーターデーモンキング・ゴウラだ。こんな緊急事態でも女の扱いに隙が無い。

 魔王に褒めらてメロメロな眼で彼を見上げながら、

「はぃ魔王様! 仰せのままに」

 大好きなゴウラに一礼して魔術軍団の下に戻った。


 ちょっと前まで居た自軍の占めるエリアに戻ると、15メートルの副団長 ベーリンガーと、いつも彼女の身の回りの世話をする10メートル級の美少年ワーウルフ2人が寄ってきた。


 ナンシーは軽く頷き、彼女の身長よりも高い20メートル長の【虹のクウォータースタッフ】で近くの地面を指し示す。


 美少年ワーウルフの一人が指し示された場所で四つん這いになり、尻尾を振りながらこちらを見たのを合図に、美人魔法使いはその背に腰を降ろした。


「あぁ!」

 ナンシーに座られた少年は、獣耳をピンと立て、尻尾をブンブン振って歓喜の声を上げた。


 魔術軍団長は片手で椅子になった少年の頭を撫でながら、ドレスからニョキっと足を出して足組をし、おもむろに口を開いた。


「ベーリンガー、贄を200匹程魔法陣にぶち込みなさい! 魔術短縮を行うよ」


 ナンシーは傍に控える副団長に指示を与えた。

 もう一人の美少年が 、グラスに赤ワインをデキャンタージュして女主人に手渡す。


「は! ナンシー様。おい! シュショックーを200匹ほど連れて来い。ザッとで良い! 数えるなんて無駄な時間を使うな! 今、直ぐ、200だ!」


 副団長ベーリンガーはナンシーの指示を聞き、膝を付いて控えていた部隊長にキツく命令した。

 部隊長はすぐさま立ち上がり、自分の部隊員から転移魔法術師を連れ、食料庫に転移して行った。



 超弩級ロボット形態であるバトルフォーメーションに変形し終えた戦闘母艦パピロスが、魔王軍に迎撃の準備を与える間もなく一斉攻撃を開始した。


 魔王軍最大クラスのバケモノである魔王や魔龍王でさえ全高30メートルなのに、空に浮いているそれは430メートルだ。

 立ち上がりロボット形態となっているその威圧感は、凄まじい。


 人型の魔城が両腕らしき部位を持ち上げ、こちらに向けた。


 ヤツの攻撃が始まった。


 両腕から放つパピロスレーザーと胸部中央から放つ2連のパピロスミサイル、胸の放熱装甲板から放つ熱光線パピロスファイヤーを一斉掃射だ。


 ゴガガガガ!! ズバーッ、ズバーッ!


 魔王城が爆炎と幾重にも走る火線に晒される。


 魔王城は周辺の土地ごとミサイルの爆発によってえぐれ、たくさんのレーザー光線とブラスターによって切り刻まれた。

 その間にも超弩級ロボはグングン近付いて来て、その存在感を更に圧倒的なものにしていく。


 既に魔王城周辺はボロボロだ。

 がしかし、魔王城はほぼ無傷だった。


 屋上で魔王ゴウラが魔力バリアを展開していたのだ。

 ゴウラは左手を戦闘用祭壇に置き、右手を天空にかざしている。

 その右手を中心に上空50メートルの地点に傘の様な魔力バリアが広がって、魔王城をスッポリとカバーしているのだ。


「なかなかの攻撃だな。お陰で集めた魂を幾らか使ってしまったではないか。祭壇を用意しておいて良かったぞ。我とて危ないところであったわ」

 魔王は素直に感心している。


 横に並んでいたエンシャントブラックドラゴンのグクールも、ニタニタと笑っているようにも見える。


「なかなかどうして、世の中にはかくも強き者が居るものだな。一度はハデデス神のクソ野郎にほだされて地上に来ては見たが、俺様が出るまでも無いと、高みの見物を決め込んでおったわい。それがどうだ、神をも軽々と見下ろすあの者の巨大さ。一体どれほどの強さか知りたくなってしまったではないか。グッハッハッハ」


 3万年以上魔界一の座を守ってきた伝説の魔龍グクールは、自身の身長30メートルの二倍に当たる長さの翼を広げ、ゆっくりとその巨躯を空中に浮かせ、飛び立った。


 その時 、まるでグクールを援護するかのように、パピロス上空に多重魔法陣が大きく展開し、光るルーン文字がグルグルと回り始めた。




「何!? バトルフォーメーションのフルファイヤーアタックが効かないだと?」

 ジャイダーは焦った。

 全く無傷とは想定外だった。


「ならば直接攻撃だ! マニー、超次元戦闘車ジャイドルで援護を頼む」

 フ、フ、っとポーズを決め、大きく頷きながら宇宙刑事ジャイダーが指示を出す。


「了解!」

 ジャイダーの居る艦橋のモニターに、ジャイドルのコクピットに座る宇宙刑事マニーが映り、両手を突き出して、ババっと決めポーズを取る。

「超次元戦闘車ジャイドル、発進!」


 パピロスの格納庫から飛び立った、全長39メートル・総重量300トンのジャイドル。

 直ぐにジェット噴射でパピロスに取り付き、肩の辺りまで移動する。


 再びポーズジングを決めた宇宙刑事マニーが叫ぶ。


「スカイジャイドル、分離!」


 超次元戦闘車ジャイドルは上下に分離して、それぞれ『スカイジャイドル』『バトルジャイドル』として闘う事ができるのだ。


 普段はスカイジャイドルに搭乗して空中戦を行う事が多いマニーだが、今回スカイジャイドルはオートパイロットで、飛来してくる魔族の迎撃に専念させている。


 宇宙刑事マニーはバトルジャイドルで、砲台として火力アップの為に外に出たのだ。



 魔王がパピロスの砲撃を耐えきったあと、まるで蜂の巣を突いた時に、蜂が一気に巣を飛び出して来た様に、魔王城から沢山の空飛ぶモンスターが、迫り来る超大型人型要塞に、真っ黒い塊となってぶわぁぁっと一斉に飛び出し、向かって行った。


 ざっと20000体は居るだろうか?


 一般兵は【グレートイーグル】【ジャイアントオウル】【アイアンガーゴイル】【へレックス】【ジュリアン】まで居る。


 5メートル~15メートル級の中型部隊長クラスのモンスターには、【マンティコア】【ワイバーン】【グリフォン】・珍しいところでは、猿にコウモリの翼が生えた【タビ】・長い首と胴体と尖った鼻を持つ青い爬虫類の【サンダーヘッド】・超音波での索敵を得意とする【グレータービランハバード】などが見える。


 その集団の最後に、他を寄せ付けない圧倒的オーラを放ちながら悠然と飛ぶ、エンシャントブラックドラゴン・グクール。

 その姿は、正に唯我独尊。


 グクールが飛び立つのを合図に、魔龍軍団も飛び立った。


 少し離れてついてくる15~20メートル級のドラゴンを引き連れて飛ぶ勇姿は、魔龍の王に相応しい風格だ。




「天空より大いなる我が友よ。我が願いを聞いて欲しい。彼の者を撃ち滅ぼす破壊の王を寄越し給え。ギガメテオ」


 天はマスターリッチ・ナンシーの願いを聞き入れ、超次元戦闘母艦パピロス上空に、直径100メートルの流星を召喚した。


 魔龍との決戦時に使用した『メテオシャワーストライク』は、指定した直径1000メートルの範囲に、30センチ前後の細かい流星群を降らせる魔法だった。

 30センチの流星を降り注がせるだけでも1つの都市が滅ぶが、『ギガメテオ』は直径100メートル。たった1発で都市をクレーターに変貌させる威力を持つ。ナンシー最強攻撃魔法の一つだ。


 ゴウラの神魔法『黒い太陽』によって元々暗い空であったが、パピロス上空は『深い夜』以上に真っ暗い空間になった。光が全く届かなくなったからだ。


 GOGOGOGOGOGOGOGOGO


 燃え盛る隕石はパピロスの遥か上空から迫る。




 レーダーは全面真っ赤。モニターに映る画面全部が敵モンスターで埋まっている。

 警報器は鳴りっぱなしだ。 

 上空からの驚異も伝えてきているが、腕を上げて砲撃・粉砕するくらいしかやれる事は無い。


「何だあの数は? もう一度、フルファイヤーしかないな。マニー、直ぐにそこから脱出しろ! 上空から巨大な隕石が降ってくるぞ!」


 相方のマニーに脱出の指示を出し、ジャイダーは剣を抜いてブンブン振り回し、ポーズを決める。余裕があるのか無いのか。

「パピロス、フルファイヤーアタック!」

 大きく叫んでポチッとボタンを押す。


 魔法弾・魔法の槍・ブレス・怪音波など、様々な方法で人型の要塞に攻撃を仕掛けている魔王軍のモンスターたち。

 それに対して圧倒的な火力で対抗する宇宙刑事ジャイダー。


 目に見えて大きくなってくる隕石は、もはや表面が焼け溶けるほど燃えている状態が肉眼で見えるほどだ。

 フルファイヤーアタック時、右腕のパピロスレーザーで隕石を攻撃していたので、隕石衝突時は、1つだった隕石が4つに割れ、その威力を減少させていた。


 GAGAGAGAAAAANNNN!!


 にも関わらず、ガードする右腕に当たった隕石は、右腕と右肩部分を吹き飛ばし、粉々に千切れて落下していった。

 パピロス本体も大きく傾いた。


 隕石が爆発した衝撃波は、パピロスの幾つかの砲門や装甲板をへし曲げ、あわやというところで脱出した戦車型マシン・バトルジャイドルを木の葉のように空中でクルクル吹き飛ばした。


 同時にパピロスに取り付いて装甲板を攻撃していたモンスターも、7500体ほどが衝撃波と熱波によって消し飛ばされていった。


 上空に先程とは別の直径400メートルの魔法陣が映し出され、光って回り始めた。


 上空の魔法陣からは左から右へ、絨毯爆撃の様に雷と火炎弾の雨が降り注ぎ、パピロスを凹ませ、焼いた。

 天空魔法『ファイヤストーム』だ。



 GYAAAAAAAOOOOOOOOONN


 パピロスの艦橋にも響き渡る魔獣の咆哮が聞こえると、何故か前面を覆い尽くしていたモンスターがサササと左右に引いて行った。


 左右に分かれたモンスターの道を、悠然と飛んで来る一際大きい黒いドラゴンが現れた。

 手下のドラゴンは遥か後方に待機させている。

 飛んで来るのはたった一体。


 伝説の魔龍、エンシャントブラックドラゴン・グクール一体だ。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉

ゴ〇ラみたいに東京を好き勝手壊す話しをおちゃらけで書いていたら、世の中では本当に戦争が始まってしまって、流れてくる映像に『何て不謹慎な話しを書いているのだろうか』と凹みました。

しかし何とかモチベーションを持ち直し、書き始めた当初の目標『最後まで書く』を目指します。

気長にお付き合いくださいませ。

m(_ _)m

 


 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


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 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


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 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



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