第24話「魔王城強襲作戦開始!」

第二十四話

「魔王城強襲作戦開始!」





 自分より7メートルも大きい恐竜軍団長ガリガリムに、両手でガッチリホールドされた全高18メートルのモジンガーZ。


「クソッ。どうしたんだ、モジンガー? 動け! 動けってんだよぉっ」

 ガチャガチャとレバーを操作するコージーだが、ウルトラレックスのガリガリムのバカ力で包み込むように上半身を固定されていては、流石のモジンガーも身動きが取れない。


「GYAU渇JF亜TTEジュチGJOH------! JEEERF!」


 目の前の恐竜が何か言っている気がしないでも無いが、こう言う鳴き声なだけかもしれない。

 それでもコイツが何をしようとしているかは判る。

 モジンガーZを頭から食うつもりだ。


「ヤべ。喰われる?」


 ガバッと大きな口を開け、巨大ロボットのハズのモジンガーをめっちゃ噛んだ!

 モジンガーZの頭頂部にあるコックピットから、ガリガリムのバカでかい口の中にビッシリと生える無数の歯が見えた。


 ガキンッ、ガキンッ、ガキンッッッッ。

 ペッッッッ!


 上半身は穴だらけにはなったが、超合金Zは硬くて噛み砕く事も噛み切る事もできず、力いっぱい不味そうな顔をして吐き出すガルガリム。


 その瞬間を狙ったかのように1キロ向こうの魔王城の屋上から、紫色に発光する極太の高エネルギー体が一瞬で走り抜けて行った。

 その光のコースはガリガリムの顔面直撃!

 怪獣がモジンガーを吐き出すのが一瞬でも遅れていたら、コージーの乗るモジンガーZはガリガリムごと消し炭になっていたであろう。


 顔の半分が光線に削り取られたガリガリムは、ゆっくりと、まるでスローモーションの様に倒れていった。


 ドウッッッ!!!


 土煙を上げて横たわる恐竜軍団長。


 恐竜軍団副官・ギガニノトプスのアンギャは、無敵恐竜・ウルトラレックスのガリガリムが死ぬとは思ってもみなかった。


「ガリガリムぅ! まさか、まさかお前が死ぬなんて。ナンシーのヤツめ、遂に殺りやがった。それにしても、なんちゅーえげつない攻撃だ。あの距離から撃ってこの威力か!?」


 圧倒的な生命力を持っていたガリガリムが、まさか死ぬとは思ってもみなかったので、アンギャは呆然と軍団長が倒れゆく姿を見ていた。


「ガッチャ! 遂にあのセクハラトカゲを殺してやったわ。誰にも見せていない取っておきを使ってしまったのは悔やまれるけど、まぁ良いわ。冥土の土産ってやつね」


 普段は冷静沈着を絵に書いたようなマスターリッチ・ナンシーだが、珍しく興奮し、小さくガッツポーズまでしている。


「入り込んだネズミ一匹は他のトカゲどもに任せて、アタシらは引き上げるとしようか。お前たち、帰るぞ。祝杯だ!」



 モジンガーZがガリガリムの臭い口から吐き出されたその時、Zの上半身を軽く包み込む程の太さがある怪光線が掠めて行った。

 魔王城着陸の衝撃で禿げ上がったこの荒野を、埋め尽くすようにZを取り囲んでいた30000体の恐竜軍団に、城まで一直線上の恐竜が消失し、目の前にあったハズの大怪獣の口と頭半分も消失している。


「うわぁぁ! な、何が起きやがったんでい?」


 怪獣の筋肉が弛緩し、モジンガーを掴んでいる力が抜け、瀕死のZは尻餅をつく格好で地面に落ちた。

 大怪獣は横倒しに倒れていく。

 周りを取り囲んでいる恐竜どもも呆然と事の成り行きを見ている。


 数秒時が止まった。が、戦闘経験値の高いコージーがはたと気付く。

「今のうちに脱出だ。パイルダーオフ」


 モジンガーZの頭頂部に剥き出しで乗っているだけという、Zのコントロールユニット兼搭乗マシンが射出された。

 飛行形態がドローンと同じプロペラホバリングタイプの旧型ホバーパイルダーであったら厳しかったであろうが、今はジェットパイルダーなので、かなりのスピードが見込める。

 脱出するなら今しかない!


 敵が逃げ出そうとしていることに気が付いたプテラノドン部隊が、赤い小型機目指して一斉に襲いかかって来た。

 上空を埋め尽くしているプテラノドンの包囲網は厚く、コージーの乗っているパイルダーは無数のプテラノドンの嘴にバシバシと啄まれ、未だに飛んでいられるのが奇跡の様な状態だ。

 それはひとえにコージーのパイロットセンスと根性の賜物だったが、だがそれにも限界がある。

 彼の周りは恐竜の壁と天井が行く手を塞いでいて、もう打つ手は無い。

 そこにトドメとばかりに地上から身長40メートルを誇るパタゴティタンの頭が伸びてきて、パイルダーに丸ごとバクっと食いついた。パタゴティタンはそのままアンギャの前まで持っていく。

 捕まえた敵を副官に献上するつもりだ。


 アンギャが騎乗するパタゴティタンの上からパイルダーを受け取ろうとしたその時、落雷が超巨大首長竜の胴体を貫いた。


「グレーテストサンダーブレェェェク!」

 300万ボルトの雷が、プテラノドンの群れを貫通して首長竜を焼いた。


 ギガノトプスのアンギャは空を見上げた。

 魔界と同じ真っ暗な上空に、さらに暗雲が立ち込めており、その暗雲は帯電して稲光をビカビカと走らせている。

 その光を背に受けて、逆光で真っ黒い羽を持つ巨人の影が指先をこちらに向け、仁王立ちの状態で宙に浮いていた。


 その影の正体を確かめる間もなく、恐竜軍団に雨あられのミサイルが降り注ぎ始めた。

 ジェット噴射で空を飛ぶ恐竜(?)がキョンシーの様に前に突き出した両手の10本の指先から、ミサイルを乱射しながら近づいてくる。

 地球防衛軍関東支部が地下で密かに研究開発を重ねていたメガガッジーラ1号機だ!

 全高50メートル、が唸りを上げて飛んでいるその姿は勇壮だ。

 搭乗員は4名。パイロット・コパイロット・ガンナー・LIVE中継員としてチームカジのユウキ隊員が補助席に座っている。


 ユウキ隊員が補助席からおもむろに立ち上がり、自撮り棒をセットしてスイッチをONにする。


「準備はいいか? 敵は一匹残らず駆逐してやる! 配信スタート!」


 ユウキのスタートを合図に、魔王城に苛烈な火線が直撃をした。

 強力なエネルギー流は、何キロもある城の4分の1が消し飛ばし、その向こうの雲取山の一部も削り取った。


「最高だぜジャイダー! 俺の『配信スタート』に合わせて超次元波動砲ビッグマグナムを敵の城にぶち込んでくれたぜ」


 全高50メートル・総重量40000トンの【メガガッジーラ】の横には、全長430メートル・総重量68000トンの【超次元戦闘母艦パピロス】が並走している。

 戦艦の操舵室には宇宙刑事ジャイダーと宇宙刑事マニーが乗っていて、ジャイダーの掛け声と共に銃型形態に変形したパピルスがビックマグナムを発射したのだ。

 ちなみにミニスカートのマニーが画面に映る時には、顔のアップ以外はローアングルから撮られている画角が多いため、ミニスカートの中がチラッと見えてしまう事が多い。

 だから大きいお友達やお父さんたちから大人気で、ジャイダーがLIVE配信される時は、視聴率も一気に上がる。


 ジャイダーが来てくれている事に、戦力的にも視聴率的にも手応えを感じながらユウキが撮影を続ける。

「お前ら見えるか? あのとんでもなくデカい城を。アレがさっきの大地震の根源だ! 俺たち地球防衛軍はモジンガーZの救出と、あの城から際限なく湧き出てきやがる恐竜やモンスターを一匹残らず駆逐してやるためにやってきた」


 ユウキがメガガッジーラのコックピットから熱気の籠った撮影を始めた。

 ここからでは魔王城の影響からか、電波障害が生じていて、LIVE配信はできない。


 メガガッジーラのメインモニターには、敵城から何事かとワラワラ怪物どもが出てきた。

 その中でも特に足が早かったのがドラゴンだ。

 20メートル級ドラゴン5体と15メートル級ドラゴン10体を先頭に、城に後詰として残っていたプテラノドン300匹が超弩級決戦兵器・メガガッジーラ1号機目指して飛んできた。


 城の屋上では引き返し始めていた魔術軍団も戻り始めている。

 そして軍団長ナンシーをエスコートしながら魔王ゴウラも現れた。その後ろには魔龍グクールも控えている。


 魔王専属儀式隊もワラワラと出てきて儀式の準備を始めている。

 魔王と魔龍は並んで仁王立ちし、腕組みをしながら上空の敵を睨んだ!


 ジャイダーは調子に乗り過ぎた。先ずは恐竜軍団を殲滅しながら、コージー救出に専念するべきだったのだ。

 闇雲に巣をつついてしまったがために、恐竜軍団と魔王城の両方を相手にする二面作戦になってしまった。しかもヤバいヤツをつ突き出してしまった事は、この時はまだわからなかった。


「ここで恐竜相手には絶好のロボ、ゲッP1の登場だぁ」


「ゲッピービィィィィィム!」

 地上の恐竜軍団は、ゲッPロボ1の腹から出る光線によって一直線に焼き払われた。


 ゲッPロボは3機のジェット戦闘機、イグル号・ジャガ号・ベア号の3機が、合体と言うより衝突融合してロボに変形する、常識もへったくれもない、正にスーパーロボットだ。

 特にゲッP3の合体は凄い!

 ジャガ号の上面の真ん中にイグル号が頭から突き刺さり、更にベア号がイグル号のカマを掘る形でイグル号のケツに頭から突き刺さるのだ。

 普通なら衝撃的な大事故だが、【ゲッP線】と言う宇宙から飛来する特殊なエネルギーのおかげで、各機はパイロットの精神エネルギーを吸収して、とてつもなくミラクルなパワーを持つエネルギーに変質し、そのエネルギーがロボット形態に変形させるのだ。そのためパイロットも並の人間では無く、肉体的にも精神的にも『常軌を逸した』レベルの人間でないとゲッP線に取り込まれてしまうと言う、とんでもないロボットだ。

 その中でもゲッPロボは開発機であり、一番安全なロボットだ。操縦後も人間の形を保ったままでいられるからだ。

 【真ゲッPロボ】はゲッP線を使ったロボの完成系で、ゲッP線がメカのみならず、人間をも部品として取り込んでしまうので、人間として帰ってこられる保証が無い。それどころか地球を通り越して宇宙まで破壊しかねない危険な兵器になってしまったのだ。


「流石の威力だゲッPロボ。ちなみに真ゲッPは危険過ぎるため、地下に封印されたままだぜ」


「ブレストバーニング」

 高高度の雷雲の中に居るグレーテストモジンガーの足元にかたまっているプテラノドンの群れに突撃して、グレーテストが胸の熱線砲でまとめて焼き落としていく。

 グレーテストモジンガーは全高25メートル。モジンガーZよりも7メートル背が高い。


「グレーテストタイフーン」

 こちらはモジンガーのそれとは違い、酸の効果は無い。が、風速150メートルの風がプテラたちの空中姿勢を崩し、重なり合って落下していく。


「決まったぜ。グレーテストモジンガーのブレストバーニングとグレーテストタイフーンが、空いっぱいのプテラノドンらしき恐竜を、次々と地上にたたき落としていく。機長、俺たちもいこうぜ」


「了解。副長レーザーカノン、チャージ始め」

「レーザーカノン、チャージ始め・・・チャージ完了」

「チャージ完了確認。目標、地上恐竜軍団。攻撃始め。本機はこのまま敵集団に突撃を開始する」

「目標、地上恐竜軍団。レーザーカノン照射開始」

「地上恐竜軍団に向け、降下開始。アフターバーナー点火」


 メガガッジーラの背中からバーナーが噴き出し、急降下に加速をつける。

 50メートルのメカ怪獣は、40メートルのパタゴティタンに体当たり気味のキックを噛ましつつ着陸した。


 恐竜の群れに突入したメガガッジーラを追って、ドラゴンの群れも到達した。足元では体長2メートルのヴェラキラプトルが両足に取り付き、登り出した。

 死をも厭わない恐竜たちは、メガガッジーラの足首の関節に入り込んで 、片っ端から齧り始めたのだ。

 足首に入り込んだヤツらの多くは、ガッジーラが歩行するだけですり潰されていく運命だ。

 しかしそのすり潰されたヴェラキラプトルが関節を破壊するかもしれない。


 メガガッジーラのコクピットの中で、ユウキは更に熱くスマホに向かって語っていた。


「本来は大災害『ガッジーラ』に対抗する為に造られたこのメガガッジーラ1号機。だから、1対1で闘うコンセプトのロボットだ。だがしかし、強いぜ。俺たちのメガガッジーラは! 俺の目の前にはファンタジーな世界の敵がいっぱい居るが、コイツのコクピットから見たら米粒みたいなヤツらばかりだ! 俺たちは負けねぇ。応合言葉は、『コイツら一匹残らず、駆逐してやるぅぅだ!』 『いいね』と『フォロー』よろしくな!」





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉


 


 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、♡で応援。


 ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


 応援して頂けますと頑張れます。



 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆







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