第19話「急変」

第十九話

「急変」



 若い龍たちが偵察から帰ってきた。


 魔王城周辺は大地震によって壊滅状態になっており、多数の現住生物(シュショックー)たちが生活していると思われるたくさんの火の手と黒煙が上がっていて、魔王軍の第一陣が襲撃に言ったコロニーは、第一陣を含めて多数の死者が出ているようだ。


 龍たちの報告の中に、一つ興味深いものがあった。

 魔王城から50キロほど離れた土地に、とてつもなく大きなコロニーを発見したそうだ。

 かなりのシュショックーが生息しているようで、恐らくそこがこの世界の王都ではないかと言うのだ。

 それが本当であればたくさんの食料と魂が確保できそうだ。


〘全軍をもって襲撃するのだ。我の祝福を与えるが良い〙


 ゴウラの頭の中でハデデスが囁く。


「全軍に告ぐ。第一の目標が決まった。我らの友、ドラゴン軍団の協力により、シュショックーどもが五万と居る土地を発見した。現在ドラゴンたちがポータルを運んでいる。ポータルが接続され次第、直ぐに侵攻を開始する。直ぐにだ!」


 魔王の声が城中に響き、場内に居る魔物どもが活気に湧く。

 準備など、地上に出るまでの間にとっくに万全だ。

 

 魔王場前の広場に集まった魔王軍は綺麗に整列しており、大小合わせてその数50万近い。

 出陣の声を今か今かと待ち構えているのだ。


「一番槍はもちろんオレたち魔獣軍団と亜人軍団よぉ。野郎どもゲートが開いた瞬間、一気になだれ込むぞ! 遅れるな!」

「「「「「おおおおおおおお」」」」」

 魔獣軍団長【呀王】の声に、部下たちが一斉に鬨の声を上げる。


 魔王場前に広場に設置してある超大型ポータルに光が走り、ゲートが開く。

「第一陣進めぇぇぇぇ!」


 魔獣軍団・亜人軍団共に一個大隊ずつがウガルルム族の【呀王】とハイエストトロールキングの【貪る者】の大怪獣二体を先頭に進軍を開始した。

 特に呀王は、もう待ってなんかいられないのだ。

 第二陣以降の指揮は各大隊長に丸投げして、兎に角自分が暴れたいのだ!!





 『文京区 大石川動植物園』。東都大学の目の前だ!


 ここに赤色と翠色のドラゴンが2体ずつ、計4体が降り立った。


 ドラゴンはそれぞれ全高10メートルの巨躯を誇る。

 この世界では生物学的に有り得ない生き物だ。


 先ほどの地震で動植物園にも地割れが走り、いくつかの段差と亀裂が見て取れる。


 檻が壊れた動物たちが歩き回っている。


 遠くから動植物園の職員たちがのぞき見ている中、ドラゴンたちは運んできた設置型巨大ポータルを、前脚を使って器用に設置していた。


 ポータルに魔力が通じて青く光り輝くと、その光の中から魔獣軍団と亜人軍団の第一陣が飛び出してきた。

 オーク・ゴブリン・ホブゴブリンなどのおなじみのモンスターを始め、ブラックウィドウ・ファイアリザード・ヒュージベア・ロックボウ・ダイヤウルフ・マンティコア・ケツアルコアトル・5メートル級のサイクロプスやフロストジャイアントも含め、大小様々なモンスターが一斉に突き進んでいった。


 それぞれに咆哮したり、鳴き声を上げながら集団で町に向かっていく様は、さながらスタンピードだ。



 東京の町は大地震によってすでに壊滅状態だった。

 魔王城着地の衝撃波でガラスは粉々に砕け、古い建物は倒壊し、高架道路は落ち、道路には断層ができていた。


 突然の地震によって一瞬のうちに風景が変わってしまった町で、人々は呆然としている。

 あちこちのあちこちの瓦礫の隙間から『あぁぁ、あぁぁぁぁ』『助けてぇ』と呻き声が聞こえる。

 その声を頼りに瓦礫を退かそうと懸命に救助活動をしている人も居る横で、何処へ避難するというのか、ただただ歩いている人がたくさん居た。

 携帯で写真を撮っている人もチラホラ居る。

 みんな現実が受け入れられないのだ。 


 たくさんの人が倒壊した建物などによって亡くなった。



 モンスター軍団はそこに追い打ちを掛けにやってきた。


 ゴブリンはぼうっと立っている人間に、棍棒で無慈悲な一撃を与え、他のゴブリン共が手や足に直接かぶりつく。


 何千もの魔物の軍団は退去して壊れた町並みの東京を蹂躙している。

 小鬼どもや狼系・猫系のモンスターは瓦礫の中を走り回り、救助活動をしているレスキュー隊員も居たが、山のような軍勢が迫ってくる恐怖に撤退していった。


 ミノタウロス・スキュラ・スフィンクス・ラミア・キマイラ・ヒュドラ・巨大なカエルや・ワニ・火を噴くトカゲなど、およそ怪物と呼ばれる物体のオンパレードだ。

 小型中型のモンスターは瓦礫を踏み越え、5メートル級・10メートル級・更にそれよりも大きい15メートル級のモンスターは壊れた瓦礫を蹴散らし、逃げ遅れた人間をわしづかみにして頭から喰っている。

 火炎を服喪の・毒を吐く物・魔術を使うモンスターもいる。


 一瞬にして世界が変わってしまった。


 この様子は地球防衛軍本部直属のエージェントたちによってLIVE配信されているが、同時に日本中で救助が求められているのも実情だ。

 力押しだけでも十分に強い彼らに対抗できるヒーローは来るのか?


 

 モンスター軍団が一番目立つスカイタワーを目指して浅草に突入してきたときだった。


 プスゥゥゥン!


 10メートル級の羽を持つネームドモンスター、テュポーンのバテイヴがビーム光線によって打ち落とされた。

 テュポーンは、たくさんの蛇が生えている下半身と人間型の上半身、背中に羽が生えているグロテスクな生き物だ。


「GYAAAAAAGOGIKIBH!!!」


 魔獣が叫んでいるが何を言っているかは解らない。


 ヴゥゥゥゥゥゥガガガガガガガガガガガガ

 頭部バルカンを乱射して中小の魔物を蹴散らして、2機の人型マシンがビルの陰からヌッと現れた。

 全長18メートルのそれは、お台場からやってきた!

 月光戦士【ガンダムーン】と月光戦士【ツインコーンガンダムーン】だ。 


「月は出ているか?」

 日中ではあるが空に薄く月が出ている。


 月面で採取した太陽エネルギーはマイクロ波によって地上に送信されている。

 月光戦士は、人呼んで【ムーンプリズムパワー】と呼ばれる太陽エネルギーを受信する機関があり、上空に月が来ていてマイクロ波を受信できる状態であるならば、無尽蔵なエネルギーを使用しながら活動することができる、月の戦士たちなのだ。







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『ファンタジーぶち壊しな話し』


 この世界の常識では(細かい部分はかなりはしょるが)、象以上の重さになると、体を支える脚や身体の筋力がどんなにあろうとも、体重と重力のバランスが取れず、立ち上がる事すらできなくなる。

 たくさんのパワーを出すためにはたくさんの筋肉量が必要になる。必然的にその分体重が重くなってしまう。だから筋肉の性能から考えると、ある一定以上の物はどんなに筋力を上げても持ち上がらなくなる。

 計算上では自分の筋肉で立ち上がることのできる限界体重は、約9.5トンが最大。

 つまり現在の地球で活動するには、象が最大の生物なのである。

 ちなみに史上確認された象の中では、最大は6.5トン象だ。(知っているデータが古いから現在では違うかもしれません)


 そして血液の問題もある。

 生物が活動する為には身体中に血液を送らなければならない。

 巨大な身体に血液を送る為には強力な心臓が必要だ。

 しかし心臓のパワーだけ上げても血管がその血圧に耐えられずに破れてしまう。

 人間の2倍のパワーがある心臓を持つキリンでさえ、最高到達点である首の下の血管の中に、血液が下がらないように逆止弁が設けてあり、血管自体も分厚い上に首の筋肉で強固に締め付けていなければ、キリンのあの高さまで血液を運ぶことはできないのだ。

 だから昔の恐竜の絵は立ち上がって首を伸ばしていたが、あるときから首と尻尾を水平に伸ばしてバランスを取って立っている絵に変わったのだ。

 キリンは進化の過程で強固な心臓と血管のシステムを得たので、遙か昔の恐竜がキリンより高性能な心臓を持っていたとは考えにくい。

 

 更に物語ではドラゴンが空を飛んでいるが、現在の重力下で生物が飛べる最大の重さは14キロだとされている。

 過去最大に育てた鳥も11.4キロだった。(これもデータが古いので現在は違うかもしれません)

 鳥は空を飛ぶために歯を嘴に進化させ、骨を空洞にし、空を飛びながらでも糞が出せるようになった。

 兎に角体重を軽くする方向に進化していったのだ。


 以上の話しは、「あくまでも現代の世界と同じ重力下で考えるなら、巨大生物が存在することは限りなく難しい」と言う話しなのだが、恐竜時代が現在と同じ重力だったのかどうかは誰も判らない。

 彼らは確実に実在したのだから。

 ひょっとしたら木星が地球の直ぐ近くに来ていて、地球の重力が薄かったのかもしれない。

 「そんなアホな」と思うが、タイムマシンでも無ければ事実を確かめることができないのだ。



 巨大な翼竜が空を飛べたはずがないという証明をした生物学者は、最後に言った。


「それでも恐竜は空を飛んだ!」


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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉


 


 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、♡で応援。


 ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


 応援して頂けますと頑張れます。



 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



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