第11話「襲撃! トキオサマー島」
第十一話
「襲撃! トキオサマー島」
魔獣軍団集会場には第二次地上侵攻作戦に参加する魔獣軍団員が整列していた。
1番隊・2番隊はブラックウィドウ・ダイヤウルフ・ジャイアントワームなどの小型モンスター中心の部隊で、10体を1小隊、10小隊を1中隊とする。
3番隊・4番隊はゲート拡張後に突入するために中型モンスター中心で組まれた部隊で、5体を1小隊、10小隊で1中隊とする。
総勢300体の魔獣型モンスターの部隊編成である。
魔獣軍団として今回の出撃命令を賜ったのは第一中隊長でアクロマンチュラのマディソンだ。
アクロマンチュラは脚を入れると5メートル近くにも成る巨大な蜘蛛で、八本の脚と八つ黒い眼を持ち、硬い黒い毛で覆われている。知能が高く、八本の脚とは別に顎の下に二本の強力な鋏が付いた小型の腕を持っており、興奮すると鋏をガチガチと鳴らす習性がある。
マディソンは出撃前に自軍の4つの中隊を前に決起集会を開き、檄を飛ばしていた。
魔獣軍団は熱血野郎が多いのだ。
「諸君、今回の我々の任務は、我らのこれからの食料である『シュショックー』の捕獲である。そこで偵察隊の情報を吟味したところ、シュショックーどもがうようよ居る城を発見したという報告を見つけた。俺らが目指すのはその城だ! 野郎ども! 漢なら『城攻め』じゃろがい! 先攻しているワーカーアントどもの瘴気発生装置の展開がそろそろ完了する頃だ。ゲートが開き次第各中隊の第一から第五小隊は突入開始だ。野郎ども! 気合い入れて行け! よその軍団に後れを取ってんじゃねぇぞ。分かったか!」
「「「「「「サー・イエッサー」」」」」」
そのタイミングを見計らったかのように、ホールにゲートが開いた。
「第一中隊、進めえぇぇぇぇ」
山の中腹に第一中隊は出現した。眼科には湖を抱えた小さめの町(?)があり、その奥に城が見える。
第一から第五小隊のジャイアントスパイダー・スライムワーム・ジャイアントスコーピオン・ヒットバイパーなど、人間世界ではかなり大型の蜘蛛や蛇などではあるが、魔界では小型の生物たちが、尖兵として町に向かっていった。
第六から第八小隊は瘴気発生装置を追加で設置したり、自らの手や脚を切り、その流れ出る真紫の血で大地を腐らせて瘴気を発生させていく。
瘴気は更に大地や草花を腐らせてドロドロした真っ黒なタールへと変えていく。
魔界の入り口へと変えているのだ。
第九・第十小隊が簡易指揮所を設営し終えた頃、第二中隊がゲートを抜けて来た。
第二中隊の一部がゲート拡張作業に加わり、いよいよ中型モンスターの為のゲートが準備されていく。
人間の捕獲を目指したモンスターたちは、建物の前に集まっているシュショックーどもに襲いかかった。
今日はとても暑い日なので、ここ、あひる野市立【 トキオサマー島】には、たくさんの人たちがプールで遊ぶ為に来園していた。
トキオサマー島は、その名の通り一番大きいプールが一年中暖かい状態で入水できる、巨大なプールのテーマパークだ。
一番の目玉は施設の一番奥に建っているお城で、その最上階から一気に滑り降りるウォータースライダーだ。
モンスターはその城をシュショックーの城だと思い、その下の建物群を城下町だと思ったのだ。
その怪物どもは突如として、プールの駐車場に、入場口に、更衣室に、プールに、エントランスホールに、同時にたくさんの場所から一斉に現れた。
「うわぁぁぁ!!」
「バケモノぉぉ!」
「蜘蛛? サソリ? キモ」
「何? アレ!」
「逃げろ!」
「逃げろぉぉぉぉ」
「退け!!」
「キシャァァァァ」
「カチカチカチカチカチカチ」
人間の子供程もある大きくてグロい虫どもが、壁を乗り越え、地面を掘り進み、ガラスを叩き割ってドワーッと侵入して来た!
人々はあまりのグロさに逃げ惑い、プールの入場口に殺到し、すし詰めになっている。
館内放送ではサイレンが鳴り響き、『緊急事態発生』のアナウンスがずっとがなり声を上げている。
腰を抜かしてその場にへたり込む者、這って逃げる者、はぐれて泣きじゃくる子供、二階部分から降りる階段にも人が殺到し、上から我先にと集団の凄い力で押してくる。
集団の力に押され、階下で転んだ人は踏みつけられ、足を骨折して助けを求めたが、誰も助けてはくれなかった。
人々は完全にパニックに陥っている。
防御力0の水着を装備している人間たちに、魔獣軍団は容赦なく爪や牙を突き立てる。
抵抗する術を持たない人間たちは、為す術も無く死んでいく。
響き渡る悲鳴・怒号。
プールは血だらけだ。
程なく第一中隊より先攻で来ていたジャイアントアントチーム300体がワラワラワラワラ・ワラワラワラワラと到着し、瞬く間にプールサイドを埋めていく。
そして、死んでいる人間に群がりだした。
ジャイアントアントは一体一体が人間の靴くらいの大きさだ。
モンスター軍団の中では一番小さな部類になるので、早くからゲートを通って作戦行動をしていた。
彼らはその強靱な顎でゲート周辺の大地を噛み砕き、じわじわとゲートの拡大作業をしていた。
他にも瘴気発生装置の設置など、数々の工作作業をこなしている。
死体に群がっていたジャイアントアントは、その顎で人間を骨ごと噛み砕き、器用に肉団子に変えていく。
別働隊のアリ軍団がその肉団子をせっせとゲートに運んでいく。
アリのチームは働き者なのだ。
魔獣軍団本命の屋外プールにも沢山のモンスターが攻め込んでいた。
プールサイドをジャイアントスコーピオンが走って、逃げ惑う男や女を尻尾で背中を突き刺して麻痺毒を注入する。
モンスターにとって人間はただの食料だ。
『シュショックー』と命名するするくらい、食料としか見ていない。
50万にも及ぶ兵隊を食わせるのだ。魔王城にある分だけでは全然足りない。
蜘蛛のモンスターの中でも一番小さいサンドスパイダーたちは水に浮くので、流れるプールで流れて遊んでいた。
流れていってまだプールから出られないでいる人間に取り付いて首や肩に噛み付くのだ。
一番の目標だった『お城』にはたくさんのモンスター小隊が集まってきていた。
しかし、目的のシュショックーは一人も居なかった。
それもそのはず、『お城』はハリボテで、ただのウォータースライダーなのだ。
何体かの蜘蛛やサソリがウォータースライダーで降りて行った。
駐車場ではたくさんのジャイアントワームが、アスファルトを食い破って地中からニョキニョキと出てきた。
人間よりも大きいヌメヌメしたミミズが地面を割ってまるで通せんぼをしているかのように立ち塞がった。
ジャイアントワームは身体中にある無数の穴から、強烈な刺激臭を放つ酸性の体液を周囲に撒き散らして攻撃をする。
周囲に止めてある車に体液が当たると、塗装はブクブクと泡を立てて焼け溶けた。
人間に当たると服が焼け、突然鼻に全力で指を突っ込まれたような、強烈なパンチに似た刺激臭が鼻を襲った。
肌に直接当たると、強烈な熱を感じ、ジュッっと言う音を立てて皮膚が灼けていく。
服を着ている人間もいれば、プールからいち早く逃げ出せてきた水着のままの人間もいる。
海パン一丁だった男は運悪く全身にワームの体液を浴びてしまい、全身重度の火傷で死亡した。
あ
トキオサマー島は阿鼻叫喚の坩堝だ。
駐車場にはワームの他にもヒットバイパーも潜んでいた。
蛇どもは密かに車の下に隠れていて、通り掛かった人間の足にガブリと噛み付き、毒の牙を突き立てる。
突如として地獄絵図になったトキオサマー島の女子更衣室から、水着の上に地球防衛軍のジャケットを着た栄子と備井子がいた。
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