第9話「ニンジャ! 推参」

第九話

「ニンジャ! 推参」




「ああっっっとぉぉ、こ、これは、何があったぁ? ちょっと見ない間にライダーたちが大ピンチだぁ」


 ボス蜘蛛【ジャイアントシュラウトスパイダー】のあまりの不気味さに、『生理的にムリ』だったA子とB子だが、その様子をLIVEカメラで見ていた関東支部長に激怒され、嫌々帰ってきたら大変なことになっていた。


 瞬時に状況を察知したB子は、糸でグルグル巻きにされた上に、血を流して倒れているライダーアックスとライダーダガーをカメラに写さないように(子供たちの夢を守るために)、画面をレポーターA子の後ろ姿にした。


「これって、次の標的はわたしたちってことよね?」


 B子のその言葉に、カメラに写っている後ろ姿のA子がゆっくりと振り返る。その顔は恐怖に引きつっている。


「そ、そうみたい・・・じゃん?」


「逃げるわよ!」

「OK!」


 A子とB子に気づいた怪人たちが津波のように襲ってきた。


 ふたりはダッシュで逃げた。支部長が何と言っても関係ない。命あっての物種だ。

 ふたりが脱兎のごとく逃げたしたのと入れ替わりに、いくつかの影が彼女たちの横をすり抜けていった。


「おうおうおう、この腐れ怪人どもぉ、傍若無人な狼藉の数々、お天道様が許してもこの俺様たちが許さねぇ、【正義のお庭番・忍びレッド】たぁ俺様のことだぁ!」


 魔物の波の前に立つ15の影。

 増援が来たことを理解したA子とB子は、速攻で影の所に戻ってきた。彼らの前でカメラをセットする。


「いくぜぇ、忍びレッド!」


 忍びレッドがカメラの前でポーズを決めてクルッと回る。B子はレッドがクルッと回っている間に次の人を映す。


「忍びホワイト!」


 同じくホワイトがポーズを決めてクルッと回っている間に次の人を映す。


「忍びイエロー」

「忍びブルー」

「忍びブラック」


「「「「「【忍び戦隊 忍びレンジャー】 成敗!」」」」」


 五人揃ってポーズを決めるとドカーーンと廊下が爆発し、五色の爆煙が広がった。


「待ってましたぁ! 【忍び戦隊 忍びレンジャー】だぁ! そしてライダーのピンチに別のレンジャーも駆けつけてくれたぞぉ! 次は彼らだぁ!」


「アカニントウ」

「アオニントウ」

「キニントウ」

「シロニントウ」

「モモニントウ」


「「「「「【忍刀戦隊 ニントウジャー】 暴れるぜ!」」」」」


 やはり最後のポーズを決めるとなぜか爆発が起きる。


(備井子カメラ慣れてないのにたいへん! 詩衣子が居たらなぁ。なんで3戦隊も来ちゃたかなぁ・・・ま、おかげで助かったけど)

 A子は目で『B子がんばれ!』っと合図を送って見守った。


「「「「「時空忍・ジゲンチェンジ!」」」」」


「ジクウレッド」

「ジクウブルー」

「ジクウイエロー」

「ジクウカブトー」

「ジクウクワガー」


「「「「「次元の狭間で悪を討つ! 時空忍者戦隊・ジゲンジャー」」」」」

 

 ドカーーン!


「さぁみんな! スーパー忍者戦隊が大暴れだぞ」


 3戦隊分の長い決めポーズが終わるまで待っていてくれたゴブリンたちに、容赦なく殴りかかるスーパー戦隊!


 一斉に散らばって、各の場所で数体ずつを相手に大立ち回りを繰り広げるスーパー戦隊のメンバー。

 殴りつけ、投げ飛ばし、蹴りつけ、武器で殴り、剣でたたき切り、銃で滅多打ちだ。


「ここからは忍者戦隊たちの独壇場だよ。忍びレッドが《忍び流火炎車の術》を使っているよ」

「火炎車の術は、持っている忍刀が炎で燃え上がり、横回転で移動しながら敵を焼き切る斬る豪快な技です」


 A子の実況にカメラを回しているB子が解説を入れる。


「みんな聞こえた? 向こうで忍びブルーが《忍び流マキビシ爆弾》って叫んで爆弾を投げつけてるよ」

「発明家の忍びブルーが自作した爆弾で、爆発後にマキビシをまき散らす広範囲に攻撃できる武器ですね」


「あっちではジクウイエローが《大猿変化》して大暴アカニントウが《人間シュリケン》で豪快に敵を薙ぎ倒しているぞ」

「いやー、見てると爽快ですねぇ」


 数々の技が飛び交い、バタバタと倒れていく子蜘蛛とゴブリンども。


 雑魚が粗方片付いたところで、厄介なホブゴブリンは3人ずついる『レッド』『ブルー』『イエロー』が同じ色同士で固まって、それぞれ3対1の構図で有利に進めている。


 その間にシロニントウとモモニントウがお面ライダーアックスとダガーの救出に向かう。


「戦隊ヒーローたちはたくさんの敵と乱闘気味に戦うときにはとても頼りになります」


 ヒーローの活躍により、ほとんどのモンスターが倒され、やっと元理科室の前まで来られるようになった。

 こちらではお面ライダーソードがたった一人でボス蜘蛛と戦っているはずだ。



 ソードは見当たらなかった。


 理科室だった床は、真っ黒いネチャネチャドロドロしたモノで覆われており、そこにゴブリンたちが糸でグルグル巻きにされた何かを落とし込んでいた。


 ヒーローたちの後ろからこそこそ付いてくるA子とB子は安全な距離で足を止め、ひそひそ声でレポートを開始した。


「みなさん見てください。ボスです。めっちゃデカいよ! 脚に生えている毛の一本一本がすでにデカいし! キモっ!」 


「A子、あれ見て!」


 B子がカメラを回しながら指を差す方向を見てみると、ボス蜘蛛の足下にたくさんの繭玉のようなモノが糸で、ベタベタに固定されている。

 その繭玉はどう見ても人間だ。


「あれって、ひよこ村の村人たちじゃね? ソードも捕まっちゃってるし。 これチョーヤバイじゃん」

「それに見て、あの上の大きい蜘蛛の巣。廊下からだとボスの身体で見えなかったけど、アレはきっとこの蜘蛛のタマゴだよ。あの人たち餌にされちゃうって事じゃない?」


「あっちも見て! あの繭玉はゴブリンたちが床の真っ黒い沼に落としているけど、あの床どうなってるの?」

「緊急増援要請! 支部長! 村人がさらわれています。至急増援をお願いします!」

                                                                                                   

 A子の左腕の通信機からホログラムで映し出された支部長は、大きく頷いた。


「うむ、出動要請承認! ただちに新たなるスーパーヒーローを派遣しよう」 

 


「ジクウボール! レディ、ゴー!」


 時空忍者戦隊・ジゲンジャーがジャイアントシュラウトスパイダーに向かって、必殺技を繰り出した。


「ジゲンジャーがボスに対していきなりの必殺技ジゲンボールだぁ!」


 ジゲンブルーがボールをセットして、ジゲンイエローの名前を叫びながらジゲンボールを蹴り上げた。

 ブルーに名前を呼ばれたジゲンイエローが、今度はジゲンカブトーの名前を叫びながら、飛んできたボールをボレーする。

 同様にジゲンカブトー・ジゲンクワガーと繋ぎ、最後にジゲンレッドがボス蜘蛛にボールを叩き込む!


「シュート!」


 5人分のスーパー戦士のエネルギーを溜め込んだボールは七色に輝きながら、デカ過ぎる的に吸い込まれていった。


 ジゲンボールがジャイアントシュラウトスパイダーに直撃するかと思われたが、必殺技はボスの魔法障壁によって阻まれてしまった。

 あのライダーソードの必殺技、ダブルハイパーソードキックをも弾き返したバリヤーだ。


 しかし、ソードの技を受けていた所為もあってか、化け物蜘蛛のバリヤーにはヒビが入った。

 

「なんと言うことでしょう! ジゲンジャー必殺のジゲンボールが弾かれてしまいました。」

 ボスが前足を一振りすると、廊下の全てが炎で包まれた。まるで炎の壁だ。


「熱っっつ! すごい熱気で顔が焼けそうです! あの蜘蛛、魔法を使うみたいです」

 

《五忍合体奥義・忍刀大車輪手裏剣》


 炎の壁を割って、忍刀戦隊ニントウジャーの五人が剣をもって空中で足を絡め、グルグル回って飛んでいく。さながら五人で一つの手裏剣だ。


 必殺の大車輪手裏剣は、魔法の炎を切り裂き、ヒビの入ったバリヤーを見事に打ち破り、醜い大蜘蛛の体を回転しながらザクザク斬りつけた。


 GAYAAAAAAA!!


 ジャイアントシュラウトスパイダーは堪らず悲鳴を上げ、両前脚をメタメタに振り回し、理科室に残っている壁を叩き壊した。


《水遁・風遁合体忍術台風キャサリン》


 忍びブルーの《水遁スコールの術》と忍びホワイトの《風遁突風の術》の合体させて、局地的大型台風キャサリンを発生させ、雨と風の力で廊下の炎は消し去った。


 突然の雨でびしょびしょになっているA子がカメラに向かってレポートする。

「流石にこれだけの戦士たちが集まると、技の連発です。正直あーし追いつけてなくてごめんなさい。火が出て風が吹いて雨が降って、現場はひっちゃかめっちゃかです」


 《忍法 火炎三段疾風斬り》


 忍びレッドの必殺剣がバリヤーの消えた大蜘蛛の脚を斬り付ける。


「忍びレッドの必殺火炎三段疾風斬りがボスの前脚を一本切った。これは効いてる、効いてるぞぉ。明らかにボスはイヤがっています。その間に忍びイエローと忍びブラックが村人の救出に向かっています」


「怪物め、学童の学び舎をこのように破壊しやがって、叩きのめしてやる! 氷結!」


 壊れた理科室の天井に乗っている人影が居る。

 彼は『氷結』のかけ声と共に光る球体となり、天井から飛び降りつつ体当たりをかまして忍びレッドの横の舞い降りた。


「来ました! 『氷結』のかけ声! 宇宙刑事ギャリバン隊長です!」


 B子がギャリバンを回り込みながらズームするカットを敵の死骸だらけで足場の悪いこの廊下で、頑張って走りながらズームを決めている。

 そのズームカットは3回入れなければならない。


 ギャリバンはキラキラ輝くメタリックなコンバットスーツに身を包み、剣を持ってポーズを決めている。


「宇宙刑事ギャリバンは戦闘の際、コンバットスーツを氷結するタイムは僅か0.05秒にすぎない!」

 

 B子がカメラを頑張っているので、A子が解説を入れる。


「レーザーブレード!」


 ギャリバンが持っている剣の刃に手を添え、エネルギーを注入していく。

 刀身が光り輝き、全ての物を斬るレーザーブレイドが完成だ。


 ギャリバンは力強く地を蹴り瞬間的にボスとの距離を縮めて、レーザーブレードをジャイアントシュラウドスパイダーの頭を上から下に突き刺す。

 間髪を入れずに

《ギャリバンパンチ》

《ギャリバンキック》

 トドメの《ギャリバンダイナミック》

 必殺の連続技を叩き込む。


「トウッッ!」


 ギャリバンがボスの前からバク宙して離れ 、B子のカメラの前にレーザーブレードを構えたまま降り立つ。


 ブレードをブンブンと振って腰のホルダーに収めると、ギャリバンの上半身が映る画面で、遠くに映る大蜘蛛の首がズルりとズレ、蜘蛛の頭がゴロンと落ちた。

 蜘蛛の体が斬られた首から火花を散らしながら倒れ伏し、爆発四散した。


「遂に大蜘蛛が倒されました。今回はとてつもない数の怪人が発生して、一時はどうなることかと思われましたが、ライダー・戦隊ヒーローたち・宇宙刑事ギャリバン隊長の活躍によって一掃されました。しかしまだこの村にはいくつもの謎が残されています」


 A子が走って理科室に向かう。

 理科室では戦隊ヒーローたちが手分けをして、蜘蛛の糸にグルグル巻きにされている村人たちを救出していたり、僅かに残った雑魚モンスターを掃討したり、負傷したライダーたちの救助に手を貸したりしていた。


 B子はその様子をカメラで放送しつつ、A子の下に走った。


「何よりも初めて見る怪人たちばかりで、その存在は不気味です。そしてこの真っ黒い床です。どうやら怪人たちはここから発生してきた様です。しかも村人の何人かはこの黒い闇に落とされていました。先程まではドロドロした液体でしたが、今はもうこの床はただの黒い床になってしまっているので、村人たちがどうなってしまったのか、皆目見当もつかない状態です。これらの謎の解明は、あーしら地球防衛軍の調査チームの報告を待ちたいと思います」


 A子はビシッと地球防衛軍式の敬礼をして、

「今回はかなりのピンチでしたが、辛くも敵の侵攻を抑えられました。現場からは以上です。レポートはA子がお贈りいたしました。ばぁいばぁぁい!」





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉


 


 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、


 ♡で応援。


 ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


 応援して頂けますと頑張れます。



 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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