「地球防衛軍サイド」

第6話「あひる野市立中学ひよこ村分校怪事件」

「地球防衛軍サイド」


第六話

「あひる野市立中学ひよこ村分校怪事件」





「あひる野市立中学ひよこ村分校って、住所は東京都だけど、かなりのド田舎じゃん?」


「最近ここらで行方不明者が多発してるって報告があったのよ」


 のどかな田園風景の道を、屋根にパラボラアンテナを載せた白と青のツートンカラーのワンボックスカーが走っている。


 車の横にはデカデカと【地球防衛軍】と書いてあり、その後ろに流星のマークが描かれている。


「ところで詩衣子(しいこ)は今日何で来て無いの?」


「カレとデートだって」


「さいですか。いつもお忙しいこって」



 地球防衛軍関東支部隊員【田中 英子(たなかえいこ)】は同隊員【佐藤 備井子(さとうびいこ)】と、あひる野市立中学校ひよこ村分校で防衛軍パトロールカーを降りた。


 二人とも地球防衛軍の制服を着ていて、カーキ色のジャケットの背中には、でっかい流星のマークが描かれている。

 『この背中のマークがデカすぎる』と女子隊員には不人気だ。


 来る途中に見たこの辺りの村は閑散としていて、本当に人が住んでいるのだろうかと、訝しんでしまうほど、静かで長閑な風景だった。


「英子、何かここ、臭くない?」


「やっぱり臭い? 良かったぁ、あーしこのマスク4日目だからついに臭くなっちゃったかと思って、いーかげん洗わなきゃって思ってたとこじゃん? 外が臭いだけならまだ使えそうじゃん!」


「汚ったないわねぇ! いや、洗うとかじゃなくて、1日使ったら汚いから捨てなよマスクなんて」


「えー、もったいないじゃん。まだ使えるってぇ」


 二人は夏休み中の中学校に玄関から入った。


 校舎の中は更に酷い悪臭が立ち込めていて、

「うっ」

 っと嘔吐いてしまうほどだ。


 異変とかのレベルではない。


 異常事態だ。


 二人は腰のホルダーから光線銃を抜いて、顔の横で銃口を上に向けた状態にして、ゆっくり進む。


 一つ目の角を曲がった時、異様な光景が目に飛び込んできた。


 廊下が蜘蛛の巣で埋め尽くされている。


 まだ日中なのに、真っ暗だ。


「何これ!? あーしクモダメじゃん!」


 英子が被っているスモークシールド付きのハーフ型ヘルメットの横に付いているヘッドライトを点けながら、備井子の左腕にしがみつく。


 ライトに照らし出された廊下は、蜘蛛の巣で奥まではよく見えない。


 途中に繭みたいな何かがある。


 蜘蛛は餌を糸でグルグル巻きにして、後で食べるように取っておく習性があるという。


(大きさは明らかに人間大だけど、まさか人間じゃないよね?)


「私だってダメよクモなんて! 怪人の方がよっぽどマシよ。栄子はあの汚ったない部屋に住んでるんだから、クモの一匹や二匹部屋ん中で一緒に暮らしてるんでしょ? あんた行きなさいよ」


「怖いこと言わないでよ。部屋で寝られなくなるじゃん! もうこれ以上あーしらにはムリっっ。本部に報告して帰ろう」


「オッケー。緊急事態発生ビーコン発信! コレで良し」


 英子と備衣子がギャーギャー騒いでいたので、その声を聞き付けて、巣の奥から何かが高速で近づいてきた。


 蜘蛛は糸から伝わる細かい振動をキャッチして、瞬時にどの場所からどんな大きさの獲物が掛ったかを知ることが出来る。


 この場合は彼女たちの声の振動をキャッチしたのだ。


 中心にいくつかの赤い眼を光らせて、真っ黒い塊が脚をワサワサ動かしながら迫ってくる。


「キシャァァァァァ」


 それも一匹ではない。


 1、2、3・・・たくさんだっっっ!


「きゃぁぁぁぁぁっっっっ!」

「キモイぃぃぃぃぃぃぃっっっ!」


『チュイーン』『チュイーン』『チュイーン』『チュイーン』


 二人は無我夢中で光線銃を撃って撃って撃ちまくった。


「なに? あのデカさ?」

「ありえないっっっ。グロ過ぎ!」


 兎に角撃てば当たる。


 それ程廊下はクモだらけなのだ。


 二人はジリジリと後ろに後退しながら、チャンスを見て振り返り、ダッシュで玄関まで走ろうとした。


 しかし、玄関は人型の何かで埋まっていた。


 身長は子供くらい。


 全身が緑色で耳と鼻が尖っていて、手に手に棍棒を持っている。


 ゴブリンの群れだ。


「今度はなに? 第一村人発見?」

「馬鹿なこと言ってないで、どう見たって怪人じゃない!」


 その刹那、天井を這って追いついてきた【ヒュージウッドスパイダー】が二人の直上から降りてきた。


「キシャァァァ」


 人間よりもデカいその蜘蛛は、驚いて尻餅をついてしまった備井子を、気持ち悪いくらいに長い脚で取り囲む様に配置して着地した。


「イヤァァァァァ」


 備井子に覆い被さっている蜘蛛は、尻を彼女に向けて糸を出し始めた。


 先刻見た繭玉をわたしで作ろうというのか。


 人間の顔と同じくらい大きい顔に付いている顎が、ヨダレを垂らしながらワシャワシャと音を立てて迫ってくる。


「いいいいいぃぃぃぃぃ」


 備井子は完全に恐怖で硬直してしまっている。


『チューン』

『ザクッ』


 ヒュージウッドスパイダーの横から栄子の光線銃が走り、クモの体に風穴が開いた。

 同時に備井子は背中のサバイバルナイフを抜いて、ヨダレを垂らしながら迫ってくる蜘蛛の顔面に力いっぱい突き刺した。


 クモの緑色の体液がドバっと寝ている備井子の顔と体に掛かり、クモの顔が彼女の顔の横にゴチっと落ちた。

 クモの顔に生えている産毛が備井子の顔をさわさわっと撫でてゾゾ毛が立った。


「ヒィぃぃぃぃ」


「備井子! いつまで寝てるのよ! 早くそこから出て! 逃げるわよ」


 死んだヒュージウッドスパイダーにのしかかられている備井子は、気力を振り絞って巨大蜘蛛の下から這い出した。

 サバイバルナイフの回収は諦めた。


 皮肉なことに、身体中に掛った蜘蛛の体液が潤滑油の役割を果たして、ズルっと抜け出せることができた。


 栄子はその間、両側から迫ってくる化け物どもに向かって光線銃を撃ちまくっていた。


 エネルギー残量が点滅している。


 腰のホルダーから予備のバッテリーを取り出して交換する。


「ヤバイヤバイ、一体どんだけ居るのよ。もうそろそろ限界じゃん?」


 緑のこびとが棍棒を振りかざして突進してきた。


 ゴブリンが棍棒を振り下ろす前に、身長168センチの(女性にしては背の高い英子の)リーチの長い前蹴りが、ヤツの顎に決まった。

 ブーツの先端には超硬質カーボンが仕込まれているので(足先保護のため)、これで相手を蹴り飛ばすのが英子は大好きだ。


 防衛軍の制服はミニスカートなので、英子が履いている赤いTバックが丸見えだ。


 吹っ飛んだこびとはその後ろのゴブリンも2.3体巻き込んで倒れた。


 しかし怒濤の勢いで突っ込んでくるゴブリンの群れには全く効いていない。


 すぐさま光線銃を撃ちまくった。


「わたしまた蜘蛛の相手なのぉ?」


 備井子は自分の背中を英子の背中に預け、上下左右あらゆる所から廊下を這ってくる蜘蛛の群れに向かって、光線銃を撃ち続けていた。


「あーもう! キモい! クサイ!」


 さっき全身に浴びたヒュージウッドスパイダーの体液が、少し時間が経ったために悪臭を放つようになってきたのだ。

 しかもネチョネチョ感もアップしてきている。


 圧倒的に数で勝る化け物たちに対して、光線銃一本で立ち向かうにはあまりにも無謀すぎた。


(もうダメ)二人がそう思い始めたとき、

 ガッシャァァァァァン!

 モトクロス系のバイクに乗った何かが、二人の真横の窓ガラスをぶち破って飛び込んできた。


 バイクは着地しながら一体のブラックウィドウを踏み潰し、着地と同時にテイルスピンで二人の周りに居たバケモノを蹴散らした!


「「お面ライダーソード!!」」


 間髪を入れずにもう2台のバイクも飛び込んできた。


 彼らも着地と同時にバケモノを薙ぎ倒し、敵の横を走るだけでバケモノたちは「ぎゃー」っと声を上げてバタバタ倒れていく。

 魔界の魔物と言えどもキッチリお約束は守ってくれた!


「「お面ライダーダガー! お面ライダーアックス!!」」


 緊急事態発生ビーコンで駆けつけたライダーたちだ。


「待たせたな。もう大丈夫だ。後は俺たちに任せるが良い」


「良かったぁ、あーしら助かったよぉぉ」


 英子と備井子は抱き合ってへなへなとその場に座り込んだ。



 




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉


 


 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、


 ♡で応援。


 ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの暖かい応援をお待ちしております。


 応援して頂けますと頑張れます。



 応援してくださいました方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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