六話 1

 なにが悪かったのかな。


 あまりに唐突に出てきた言葉に驚いて、お前の意識は少し持ち直す。

 今の今まで後ろを振り返ることなんて一度もなかったのに、お前はそう思う自分自身を不思議に思う。


 同時に、本棚を倒したように過去の記憶がぞろりと溢れ出る。

 お前は床に落ちたそれを、はじめっから一つずつ手に取って眺める。


 ようやく、やっと、ついにお前は、お前自身に向き合うことを始める。

 お前に与えられた天賦の才。

 お前には目の前の人間の求めているものがわかる。

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