人を造った男
「こんにちは八折司だ。世間では人造人間の生みの親とか第一人者って呼ばれてるけど、見ての通りただのおじさんだよ」
白衣を着て椅子にと腰かけた様は研究者というよりも医者といったほうがしっくり来た。彼の恰幅の良さもあるが彼自身が纏うゆったりとした空気が場を弛緩させ、老練の医者と対峙しているような雰囲気がある。
「ただのおじさんなんていう人は普通、自分だけの研究室なんて持ってませんし、資料の山に埋もれたりしませんよ」
「うん、確かにそうかもしれないね、一理ある…よし、仕事をしよう。何が聞きたい?」
言葉を区切り、目を閉じ。数秒後開けた時には口調も纏う空気も変わっていた。何も知らないふりをしている個人からすべてを知り尽くしたいと願う研究者へ。
「あなたは人造人間を造ったと聞きましたが、どのような経緯があったのでしょうか?」
「人は人を造れないっていうのは、論理とか宗教とかそういうのに縛られてるからで、既存の技術の組み合わせで出来ることは分かっていたからそれを組み合わせただけだよ。なんなら僕自身の技術なんて一つもないんだよ。それを思い立っただけさ」
あらかじめ資料に目を通していたからわかったいたことだが本人の口から直接聞くと違うものがある。その言葉には諦めと微かな高揚感が含まれていた。
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