4-18. あの時のお願い
ボン! という音がして、上がった煙の中から銀髪の美少女、ルコアが二人現れる。
二人は見た目は全く同じで区別がつかない。
「主さま~!」「主さま~!」
同じ声を出して二人はヴィクトルに抱き着いた。
二人に抱き着かれて足が宙に浮くヴィクトル。
「うわぁ! 待って待って! 一旦離れて!」
焦るヴィクトル。抱き着かれるのはうれしいが、一人は宿敵ヒルドである。さすがに心臓に悪い。
ヴィクトルはちょっと距離を取る。
二人の娘は少しにらみ合い……、そして、ちょっと心配そうにヴィクトルを見つめた。
「あの約束、覚えてるかな? 僕が一つ言う事を聞くって奴。それを何にしたか教えて」
ヴィクトルは二人を交互に見ながら聞いた。
すると一人がすぐに答える。
「あの約束ですね。私ずっと考えてました。何がいいかな~って。それで、決めたんです」
その娘はそう言うと、愛おしそうな目でヴィクトルを見る。そして、ちょっと恥ずかしそうに言った。
「ずっと……お側に居させてください」
その娘の頬は真っ赤になり……、ヴィクトルは静かに微笑んだ。
廃墟と化したオフィスの中、二人はじっと見つめあう……。
ヴィクトルは一旦目をつぶり、大きく息をつくとその娘の手を取って言った。
「僕はあなたが居なくなって、初めてあなたの大切さに気がついたんだ。いつも隣にいて微笑んでくれたあなた……。もう僕はあなたなしでは生きていけない……。結婚……してくれないか?」
いきなりのプロポーズに目を真ん丸に見開き、手で口を押さえるルコア……。
ヒュゥ――――!
ヴィーナは驚いて思わず声を上げてしまう。
ルコアは涙をポロリとこぼし、両手で顔を覆うと、
うっうっう、と
そしてヴィクトルに飛びつくと、
「うわぁぁぁん! 一生……、一緒ですよ!」
そう言って涙をポロポロとこぼした。
「うん……。二人で一緒に生きて行こう」
ヴィクトルもそう言って、流れる涙をふきもせずルコアの頭を優しく何度もなでた。
パチパチパチパチ
自然と拍手があがり、壊れた部屋中に大きくこだました。
ルコアの格好をしたヒルドは焦る。策を
「と、なると、お主がヒルドじゃな!」
レヴィアは鋭い目でヒルドを射抜く。
くっ!
ヒルドは、テーブルの上に残っていた、ケーキ用のナイフを手にすると、そばに立っていたシアンを捕まえ、首筋に突きつけて言った。
「動くな! 変な真似をするとこの娘が死ぬぞ!」
目を血走らせるヒルドだったが……、なぜか白けた雰囲気が部屋を覆う。
ヴィーナたちは憐れみを浮かべた表情をし、首を振っている。
「な、なんだ? ……、ほ、本気だぞ!」
ヒルドは吠えるが、誰もシアンの身を案じない。
「お主……、そのお方は宇宙最強じゃぞ。お主がどうこうできる方じゃないんじゃ」
レヴィアはそう言って肩をすくめた。
「は? 宇宙最強? 宇宙最強って……確かシアンとかいう……」
ヒルドはそう言いながら、恐る恐る捕まえた娘の顔を見た。
「僕がシアンだよ! きゃははは!」
シアンはうれしそうに笑う。
「知るかそんなの!」
真っ青になったヒルドはナイフをシアンに突き刺そうと力を込めた。だが、ナイフの刃は水銀のようにドロリと溶け、床にポタポタとしたたる。
「ええい!」
ヒルドはそう叫ぶとドラゴンの力でシアンの首を力いっぱい絞めた。
ぬおぉぉぉ!
野太い声が部屋に響き、ヒルドはシアンを乗っ取ろうとハッキングを仕掛ける……。
ボン!
爆発音とともに煙が上がった。
「キャ――――!」「うわっ!」
ヴィクトルたちは思わず頭を抱える。
直後、ゴロンと、何かが床に転がった……。
それはしっぽを出した黒焦げの死体……ヒルドだった。ブスブスとあちこちから煙をふき出しながら完全に炭になったヒルドが無残な姿をさらす。
ヴィクトルは、あれほど手こずったヒルドを瞬殺してしまう宇宙最強の女の子の次元の違う強さに、思わずブルっと身震いをした。
死体はすぐにボロボロと崩れだし、やがてすぅっと消えていく……。
「悪い子はおしおき! きゃははは!」
シアンは
◇
「はい、顔だして!」
誠が濡れタオルを持ってきて、シアンの顔を拭いてあげる。
「お前も女の子なんだからもっと気を配らないと……」
「パパ、ありがと! きゃははは!」
シアンはうれしそうに笑い、誠も世話ができることを内心喜んでいるようだった。
誠はシアンを拭き終わると壊れはてたオフィスを見回し、ヴィーナに声をかける。
「美奈ちゃん、何でもいいけどオフィス直してよ……」
ヴィーナは面倒くさそうにレヴィアを
「あー、もう! レヴィア! あなたやりなさい!」
「えっ!? 私ですか!? でもこれ……相当大変……ですよ?」
レヴィアはめちゃくちゃに破壊された、瓦礫の山状態のフロアを見ながら答える。
「嫌なの? お前の星の査定をこれからやってもいいのよ?」
不機嫌を隠さずヴィーナは言う。
「やります! やります! やらせてください!」
レヴィアは敬礼して叫んだ。
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