訳ありで再就職した先は異世界からの出向会社。その社名は……株式会社異世界。新入社員は辛いぜ!
第9話 このままでは俺は「ひも」じゃねぇか! episode1 見かけは倒産寸前の会社だけど、中身は安泰説? 倒産寸前会社にまつわる父さんの事
第9話 このままでは俺は「ひも」じゃねぇか! episode1 見かけは倒産寸前の会社だけど、中身は安泰説? 倒産寸前会社にまつわる父さんの事
まじめに意味有りげな言葉を放つ王女。
新たな展開が俺を待つ。――――では次号にて!
て、ここで切るわけには絶対にいかねぇ!
「な、なんだその半分って……またそうやって俺の意識を、意味もなく引こうとなんかしていねぇよな?」
「別にこれは無理に話さなくとも良いのじゃがのぅ」と、ちらちら俺を見る王女。ああああ、絶対にその仕草は止めといた方がいい。あの幼児顔がそんな意味ありげにちらちらと俺を誘う仕草なんかされたら、気になってしょうがねぇだろって言うの!!(本性をようやく現したな俺! 俺はやっぱりロリコンだったんだ)
「やっぱり知りたいか?」
「べ、別に……。なんか知るとものすごく自己嫌悪に陥りそうな気がするんだけど」
「そうかならやめておくか……しかし残念じゃのぉ。おぬしの父親の事なんじゃがのぉ」
父親? 父さんのこと? 俺が物心ついたころにはもう父さんはいなかった。
幼少期、俺を一人で育ててくれた母さんはもうこの世にはいない。
父さんは死んだと母さんからはあの頃そう教えられていた。でも、今思えば位牌らしき面影もない。
婆さんと爺さんのところに引き取られても、父さんの話は一切出てこなかった。
そのまま、なんの意識もせずにここまで来た。
俺にとって父さんと言う存在は、始めっからなかったのだ。
そんな俺に父親の事? なんて言われてもいまいちピント来ない。
「なんだよ。その父親のことって?」
「やっぱり気になるんじゃろ」
「気にならねぇって言ったら嘘になるけど。俺は父親のことは何も知らねぇからな」
「だろうな……もしおぬしの父親が生きておるとすれば、おぬしはどうする?」
父親が生きてる?
「それにじゃ、この会社に関わっていたとしたら?」
「いや、ちょっと待て。出来すぎじゃねぇか、そんなこと」
おいおいいくら何でも話が飛躍しすぎてはいねぇか?
確かに俺はこの王女と幼いころ会っている。その記憶はおぼろげながらよみがえってきた。そして、異世界と言うものが本当に存在しているという事を認識し始めた。あながち嘘ではないようだ。それにこの会社事態この世界の監視役として、王室直下であるということを聞いた。つまりは日本で言う皇室直下運営と言う事になるのか? だとするならば、エリン社長、葵、茉奈は官僚クラスと言う事なんだろう。
つまりはこの会社は潰れねぇということだ。ただ、お役所みてぇな仕事がわんさかあるのだとすれば少し気が重たくなる。
それで俺の父親って言うのが、この会社に関わっていたっていたと言うのはやっぱり話が出来すぎている気がする。
こんなにも繋がりがありすぎるていうのは作り話のように感じてしまう。
「出来すぎている? 確かにうぬからすればそうかもしれぬ。されど、われはこうしてようやく一つの糸になりつつあるのが微笑ましい。実際われが望んでいることに近づいておるのじゃからの」
望んでいること?
いったいこの王女は何を裏で企んでいるのか分からねぇ。見た目は可愛らしい女の子なんだけど。実際は三百歳越えのババァだ!
「ま、聞いてやってもいいんだけど」
王女はニマリと笑う。
「
その名を王女が呟いた時、葵の顔色が一変した。
そして一言呟く「
「そしてうぬの父親は……この株式会社異世界の社長でもあった」
「あはは、まったく次はそう来たか。俺をおちょくってねぇか?」
「大真面目じゃ。政孝よ、うぬの父親は紛れもなくわしらの世界の人間なんじゃ。そしてお前はその血を受けついておる。これは事実じゃ」
人生が反転する。学生の頃そんな内容の本を読んだことがある。
急激な環境の変化と、今まで培ってきた人生がすべて否定され、その否定の中から生まれる真実。そのことを肯定して、己の中に埋め込むことはすぐには到底できない。それが人間と言うものであると。
まさしく今の俺がその状態である。
たった一月半で俺の人生は大きく反転してしまった。
順風満帆と思われていた俺の人生は突如崩壊し、社会的に抹殺された。
突如、訳の分からない恐竜を目にして、一瞬の間に俺は食われ。気が付けば見た目倒産寸前の会社に雇われている。
しかもだ、その会社はこの世界の管轄じゃねぇ。
最も社名が株式会社異世界と、なんともあやしすぎる社名なんだが。
そして俺の前に突如その姿を現した王室、第三王女のパンディーア・フルベアート・ラ・ルクセント。
その記憶はとうにうずもれていたが、俺はこの幼女。彼女とは俺が幼少のころの出会いの一コマに記されていた。
おぼろげながらよみがえる幼少の頃の記憶。
この王女と俺は一種の契約の儀式的なものだと思われる約束をした。
それが『加護の儀式』である。
王女の守護精である精霊の加護を受けた俺は、王女の影となったのだ。
当然の事ながらその時俺はその加護がどのようなものなのかなど、理解はできていない。
今も理解はできていなのが現状だ。
しかしながら、その加護と言うものが俺と王女にとって双方の人生に大きな影響を及ぼすもであるというのをなんとなく感じ始めている。
そこに来て、親父のことが明るみに出た。
ただ俺にとって父親と言う存在は皆無な存在だ。
その面影、存在さえないのだから。
むろん写真なども一度も見たことがない。母さんとどういう馴初めで出会ったなどと言う事も一切分からないままだ。ただこの俺が存在しているということは当然の事ながら、異なる異性との受精がなされているということはもう理解できる年だ。いや、その行為である経験もすでにあるのだから。
俺にとっての父親と言うものは単に俺が生まれたことについての事実立証の存在にすぎないのだ。
だから、親と子としての愛情なり、家族としての近親感などは一切わいてこない。
しかし、興味がないといえばまったくないという訳でもない。
俺の父親となる人物がどういう人物であるかについては、知らないことへの探索心がわいていることは事実だ。それにだ、その父親なる人物が異世界の住人であり
ただ、一番俺にその興味をかきだした言葉は、その父親なる存在がこの会社の社長であったということかもしれない。
なんだかんだ言っても、この反転してしまったような俺の人生を、この俺は少しづつ受け入れようとしている。いまだにまだ半信半疑のような、ふって湧きいでた事象ではあるが、もう先に進めるしかねぇんだ。
後戻りはできねぇ。
この先まだ何かが潜んでいる気配はありありではあるが、受け止める覚悟は出来たような気がする。
「さて、それじゃ俺の父親の事詳しく話してもらうじゃねぇか」
「……うむ、そうじゃの――――だが今は先約が出来たようじゃの」
「ええ、そうですわね王女」
王女とエリン社長は何かに感ずいたように、顔を見合わせてコクリとうなずく。
「葵、茉奈ちゃん。来たわよ」
「マジ! どんなの?」苦渋った顔をして茉奈が言う。
「リークアウトします」
「うげ! グロイの来たぁ!」
「肉肉肉! 美味しそうなお肉じゃん」
突如に俺の頭の中に描かれたその幻影。
なにこれ? まじやばいんじゃねぇの。こんなの本当にいるのかよ?
「さぁ政孝。おぬしの出番じゃ!」
「出番って?」
餌じゃ!
訳ありで再就職した先は異世界からの出向会社。その社名は……株式会社異世界。新入社員は辛いぜ! さかき原枝都は(さかきはらえつは) @etukonyan
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