第2話 再就職 episode1

「うわぁ―、ぬめっとしてるぅ!」

「ああ、ほんとそれにこの生臭さ……青臭いって言うの?」


「うんうん。でもこのにおいなんかなれると興奮するね」

「そぉ? そ、そうかもね」


「でもさぁ―、やっぱ固くなってきちゃったね」

「そうでしょそれって仕方ないんじゃない。男の人だからね」


「ああ、そう言うことか」


「そう言うことよ。さっ、一緒にいくわよ」

「ちょっと待ってよ。私初めてなんだから。もう少し……」

「あら、緊張しているの?」


「そ、そりゃぁね。あおいちゃんはもう経験済みなんでしょ」

「う――ん。あれを経験済みと言うのかな? どうだろ。た、たぶん私も初めてになるのかなぁ。まともにやると」


「へぇー、そうなんだ。意外意外」

「な、何よう! そんなに意外って言わないでよ!」


「だってさ、葵ちゃんの体誰かさんと同じでものすごくエロイんだもん」

「ふん! あんなのと一緒にしないでよ。もう、私先にいれちゃうわよ」

「ええっとじゃぁ見てるよ。どんなんか」


「マジ、見られるのってなんか恥ずかしい。そ、それじゃ、よいしょっと! うっ、あっ。うわぁあああ! なにこれ、この人本当に人間なの? ああああ! もう駄目」

「早! 葵ちゃんもういちゃったの?」

「何よ! そう言うんだったら茉奈まなもやってごらんなさい。この人すごいんだから」


葵は茉奈の体を押し付け、初めての行為をさせた。

「うわぁ! な、なにこれぇ――! どんどん茉奈吸われていっちゃう。茉奈だけじゃ足りないよぉ! 葵ちゃんも一緒に……お、お願い」

「もう、仕方がないなぁ。それじゃぁ」


二人は共に声を上げはてる。そして、その男の口からも「ううううううっ」とうめき声が上がってくる。

「はぁはぁ、よ、ようやく意識が戻ったみたいだね」

「そ、そうだね。よかった。でもクタクタになちゃった」

「だね」


その時、浴室のドアがガラッと開いた。

「あらあら、あなた達何遊んでるの? まだ気が付かないの? もう、だめですよ。そんなんじゃ、時間かかりすぎです。こういうのは……」

と言いながら、バシバシとその男の頬を平手打ちして「はぁはぁ」と息を高鳴らさせ、顔を高揚させていた。


「あのぉ―、社長。社長の方が遊んでいません?」

「あら、そうなの? だってこうすると気持ちいいんだもん」

よくもまぁ半死状態の人にこんな手荒なことができるものだと、この社長の本心を垣間見たようだ。


二人は自分のエナジーを分け与え、蘇生に力を注いでいたというのに。あ、もしかして、何かしらエッチな想像していました? それ……違うでしょ!

しかしまぁ、息を吹き返したようだから良しとしよう。


「さっ、体洗って……。特にこのぬめぬめはきれいに落としましょうね」

「ふぁぃ」そっけない返事をする二人だった。



ああ、なんだとても安らぐ。

こんな気分になるのは何日ぶり何だろう。


固く冷たいコンクリートの上に段ボールを敷き、そのうえで寝ていた自分が嘘のようだ。

やわらかく温かい。ふんわりと香るソープの香り。

この香りを洟に抜けさせるのは久しぶりだ。

いったい俺はどうしたんだ?


おぼろげな記憶が少しずつよみがえってくる。それと同時に思い出さなくてもいい忌まわしい自分に襲かった事件も思い出していく。

そうか……。俺は死んだのか? いやそれにしては、このソープの香りがリアルすぎる。


死ぬ間際。


そうかもしれねぇな。ああ、よかったよ。あんなダンボールの上で死ぬんじゃなくて。こうして普通に死ねるんだったらもう思い残すことなんか何もねぇな。

ああ、でもほんと俺、ついてねぇな。


「あ、気が付いたの?」

ふとその声の方に目を向けると、俺の記憶が途切れる前に見たあの金髪巨乳美人の女性の姿が目に入った。

「こりゃまた。死ぬ前に最後のご褒美かよ! ついてなかった分これで相殺しろって言うことなのか?」


「あら、どうしたの? まだ気分悪いの? そうだよねぇ、あなた野獣に丸飲みされちゃったんだからねぇ。咀嚼されなかったからよかったんだけど、胃袋の中で半死状態だったもんね」


「胃袋? 丸飲み?」

「そう丸飲みごっくんされちゃったのよ」


なんかこの人が言うとものすごくエロく感じるのは俺が欲求不満だからだろうか。

しかし、そう言うことで反応できるようになったということは、大分体調がいいって言うことだ。

そしてタイミングを計ったように、俺の腹は高らかにその音を鳴らしたのだ。

腹が減った。


あの干物、食いそびれちまったな……そう言えば、弦さんはどうしたんだろうか? 無事なんだろうか? それともあの野獣とやらに食われちまったのか?


「あのぉ、俺と一緒にいた人って……やっぱり」

「うん、ペロリ……」

「そ、そうですか」

弦さん。短い付き合いだったけど。楽しかったぜ。


「なんて嘘ぴょん! あの人にはリークしていなかったから大丈夫。食べられちゃったのはあなただけよん」

「はぁ?」


「あなた自分でも現状をまだ把握していないようね」


そんなことを言われても、正直、何が何だか全くわけわかんねぇ状態であることは言うまでもない。

余りに一気に環境が変化しすぎて、俺の精神状態は崩壊しきっているんだと、自分に思い込ませてやることが精いっぱいだ。


しかしだ! 今のこの状態を確かめるというか、認識するというのか? そう言うことよりも、とにかく腹が減った。

「ぐぅ――っ」また高らかに俺の腹は食を求めた。


「ま、相当おなか減っているみたいね。もう少し待ってて。今、葵が食事作っているところだから」

そう言われると、かすかにいい香りが漂っているのに気が付く。

この香りはカレーか?

カレーなんて久しぶりだ。


いや、こうして香りのある、温かみのある食事が用意されること自体、感極まる思いだ。

そしてドアがノックされ、ワゴンと共に部屋に入ってきた女の子。

少し赤茶けた髪色のショートボブが似合う子だ。


背丈は俺より少し低い感じだから、女の子としては背が高い方になるだろうか。スリムな体に安産型のしっかりとした骨盤。そしてやはり、この子の胸もそそる高さと豊満さを訴えるかのような巨乳。しかし、俺の目の前にいるこの金髪女性に比べれば若干迫力に欠けるのは若さゆえの敗退か? つまりは発達途中でもあるといえるのかもしれない。この子ももう少しすればあの狂暴極まりない巨乳バストになるのだろうか。


そんなことをマジマジと考えていると。

「ちょっと、何か変なこと考えているでしょ!」と、見抜かれてしまった。


「いや、それはその……」

「あら、いいんじゃない。見られるって言うのはそれだけ魅力があるからじゃないの? まっ、私にはまだ勝てないけどね」

「べ、別に社長となんか勝負していませんけど!! フン!」


やや、気性の激しい子のようだ。こうしてみれば高校生くらいなんだろうな。

それじゃ……でもそれでも、この発達ぶりは群を抜いているかもしれない。


「葵ちゃん、スープとお水忘れているよ」

続いて部屋に入ってきた子。


黒髪のツインテール。小柄であどけない幼児の顔付がまだ抜けきっていない子。

まるでリスのような子だ。


まだ小学性くらいなんだろうか。ふと見る胸はかすかなふくらみは感じられるがほとんど何もつけなくてもいけるぞ! と言わんばかりの平坦な荒野状態だ。


やはり視線を感じたのか。

「ねぇねぇ、おじさん。もしかしておっぱいフェチ?」


「はぁ?」

「だってさ、さっきから二人のおっぱいばかり見てんだもん。そりゃ、私は無いんだけどね」


「社長やっぱりこの人早々に追い出しましょ!」



「あら、それはダメよ。だってこの人うちの会社に入社させるから」


「はぁ?」

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