第9話

翌朝俺の部屋のドアを叩く音がした


神官達には不干渉と伝えてあるし

クラスメイトには知られていないはずだ


一体…


「和泉ー!!」


祐二の声、どこか怒っているようにも感じる


まだ皆に会うには早いけどバレたなら仕方ない


「よう、久しぶりだな」


ドアを開けたそこには祐二が1人立っていた


「お前なにしてんだよ…」


胸倉を捕まれ、そのまま壁に激突する


「なんの事言ってんのか分かんねぇよ!」


「昨日初島の様子がおかしかった」


「!」


「ようやく分かったみたいだな」


「あいつの事で祐二にキレられる意味が分からん」


「初島泣いてたぞ…」


「だから?」


プチンと音がしたように錯覚するほど祐二の表情が変わる


「なんでお前そんなになってんだよ!!」


思いっきり顔面を殴られる

口の中が切れて血が出る


「祐二が初島の事好きだからってここまでされる覚えはねぇよ」


「お前まだっ!!」


また顔を殴られた


「お前なら…って、クソっ!!」


「久々に会った親友をボコボコ殴る程大切ならお前が初島の支えになればいいだろう」


「ふざけんなっ!!」


また顔面を殴ろうとしてきた

今度は受け止める


顔面殴りたい気持ちを抑えて鳩尾に正拳突きをお見舞いする


祐二は見事にリバースして気絶した


流石にこのまま喧嘩別れするのは俺の望むところではないので柱に紐で縛って起きるのを待つ


剣の素振りをしていたら祐二が目を覚ます


「よぉ、気分はどうだい」


「最悪だわ」


「で?結局何が言いたかった」


「転移した日から姿を消したお前を心配してた。だけど半年も音沙汰なしだから皆気にしないようにしてたんだ、なのに昨日初島からお前の名前が出てきて、しかも泣いてたから…」


「まぁ確かに連絡すらしなかった俺も悪い。だがなお前らも悪いだろ?俺は言ったぞ2周目だってな」


「は?あれは冗談…」


俺の目を見て本気だと悟ったのか途中で言葉を止める


「あとな後半部分はマジでわからん。初島には悪いことしたと思ってるがお前に顔面ボコスカ殴られる理由がねぇ!」


「それは…俺も頭に血が上ってて、すまん」


「なら許す!!さっきも言ったけどそんなに大事なら自分で大事にしろ」


「だから…あーもういいや!」


なんとか和解出来たので紐を外す


「んでさっきの本当なのか?」


「だから最初っから言ってんだろ」


「じゃあ今何してるんだよ」


「下準備って感じかな?それに多分1年かかる。本当はお前らにもやって欲しかったけど信じてない奴が出来ることじゃないから」


「そっか…」


「そんな顔すんなよ!俺らの仲だろ?」


「おう…お前が無事で良かったよ」


照れながら言う祐二にこっちも照れくさくなるが男2人が照れ合ってる姿なんて需要はない


「そろそろダンジョンに入り始めた頃か?お前ら今レベルいくつだ」


「んー大体10前後かな」


「ダンジョンに行くなとは言わねぇけど教会で能力強化すんのは待ってくれ」


「??それも大事なことなのか?」


「あぁ、かなり…な」


本音を言うならレベルアップ自体やめて欲しいところだがそこまで縛る事は出来ないだろう


「出来ればダンジョンにいくより訓練とか模擬戦を増やして欲しい」


「よく分からんけど分かった!何とかしてやるよ」


こういう時の祐二は頼りになる

頼りついでにもう1つ頼もう


「こんなアイテムがあれば買ってきてほしいんだ、頼めるか?」


「たまに街にはいくし探しては見るけど…こんなの何に使うんだ?」


「それは秘密」


その後は少しだけ他愛ない話をして祐二は帰って行った

俺の部屋については神官達から無理矢理聞き出したみたいで祐二しか知らないと言っていたのでこのまま内緒にしてもらった


やっぱり仲間っていいもんだな

1人でいると無意識のうちに俺がやらなきゃって追い込まれていたみたいだ


もっと早く打ち明けてれば…

俺にはもうリセットボタンはない

今度こそ失敗出来ない

だからこそ自分の管理も万全にしなきゃ…だな

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