や ら か し 確 定
クラスに入る前に俺は「そうだ。」と思い出し忠告をする。
「俺はこれからあまり目立ちたくないんだ。それで陰気な印象を与えてイジメに遭うかもしれない。けど、奏は何も気にしなくていいぞ。優しそうだから気にかけてしまうのも分かるけど…」
「あんなにカッコよかったのに…」
「俺はこれからあんなタマじゃなくなるんだ。これから頼りない俺と関わらなくてもいいんだからな?」
下の名前で呼び合うと口約束はしたが、そもそも関わらなければそれは呼び合うこともなくなるためその契約はあまり効力をなさない。この口約束が彼女の良心を縛りつける強制力があるのならそれは不履行による破棄でもしようかと思っていたが、
「そんなの関係ないよ…私を智也くんが助けてくれたから知り合えたけど、それが私を縛ってるなんて思いたくないの」
「奏…ありがとな」
当たり前だよこんなこと。と気丈に笑いかけてくれることには感謝しかない。勇雅は俺のイメチェンにさぞかし驚くだろうが、絶交を言い渡すほどクズじゃない。これで現実世界で改たな人生の2人目の友人は無事にできたようだ。
「じゃ、じゃあ僕から入るねっ」
「(すごい変わりっぷり…)」
奏は何も言ってないが、顔に書いてあるなぁ…面白がってるような表情をしている。
後ろの方から遠慮がちにゆっくりとドアを開けるとちょうど全員の自己紹介が終わったところだった…ってチャイムが鳴った。一限目は完全に終わったぽいな。
「お前らが宵崎と宵宮か!ようこそ1ーJクラスへ!」
まだ名前も知らない先生からそう言われて黒板に書かれている座席表の通りに座る。
少し珍しい座り方で、基本は黒板を正面に左から名前順に座っていくのがセオリーなのだが、今回はその真逆で右から名前順に座ることになった。
「や」行は名前順だと後ろの方で無事に窓側の席を得ることが出来た。
「よいざき」と「よいみや」の並びで彼女が後ろで1番窓ぎわの後ろから一つ前の席を取れたことに安堵する。
「智也くん…よろしくね?」
こそこそっと奏が俺に囁いてくる。
手を軽く振ることで反応をする。
それに満足したのか後ろから漂ってくる空気感がとても喜色の強いものになるのが肌で感じられた。
初日から遅刻ということでやはり注目を浴びているな。
…お、いた。勇雅は目を白黒させながらあたふた驚いている。
そんなに俺の変わりっぷりにびっくりしてるのか…
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(お、おい!あいつやばいぞ!)
このときは陰キャになり切ることに必死で、周りを全く見ていなかったから智也が気づくことがなかったが、勇雅は気づいてしまった。なんなら接触をしてしまった。
(学区が近いとは言っていたが…まさか、まさか!宮野がこの高校にきてるとは思う訳ねぇだろ!)
そう、この俺が動揺している理由。それは今は一つ。「宮野雀と同じクラスになっている」ということだ。
(あの目はヤベェ!完全に病んでる!ヤンデレ気質にもなっちまうあいつのスペックは凄まじいんだぞ?!なんであいつ気付かねぇんだよ!)
俺から見える宮野は目からハイライトを消して【聴力】がかなりいい俺だからちゃんと聴こえるだけの小さな声量で、
「どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?…」
機械的に「どうして?」を繰り返す姿が確認されている。
これは…あっちの世界で止める方法がアレしかなかったやつか…
さて、頑張ってくれよ智也…!
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どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?
なんで智也くんが知らない女と一緒にいるの?
真凛ちゃんとかならともかく…知らない子と一緒にいるなんてありえない
アリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイ…
しかもなんでか雰囲気がくらい…どうしたんだろうな…あれだとみんなにいじめられちゃうよ…
私たち以外の女の子たちと仲良くなったていいことはないのよ…
私たちはずっとあなただけを思っていたのに…
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ゾワリ…
何かおぞましいものの地雷に触れてしまった…気がする。
何気なく辺りを見渡してみると勇雅が青ざめながら同情の瞳を俺に向けている…?
あれ?俺何かやらかしたっぽい?
でも心当たりが…
いや、待てよ。この感覚、俺は知ってるぞ…
この背筋が得体の知れない黒い影のようなものに舐められるようなそんな怖さ…
これはあいつがデチャッた時にやらかした時と同じ…!
まさか!
ガバッと顔を上げて辺りを見渡す。
後ろの奏がビックリしていたがそれよりも大事なことだ。
宮野…「みやの」…居た。
そしてやらかしたことが確定した瞬間だった。
異能最強なのに学校ではスクールカースト最底辺?!え?自らなってるんで大丈夫ですよ?決してドMではない(はず) 赤井錐音 @detsuterau
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