突撃ィィィィイ
「また負けた〜!」
悔しそうに駄々をこねる子供のようになる勇雅の年齢と合っていないシュールな光景に吹き出して笑っていた。
「これでまだ全力じゃ無いのがもっとムカつく!」
その後もう少しだけ修行をして仮想現実の修練場を出たのだった。
時間は夜の10時20分。
寝るのにはまだ少し早い気がするがやることもない。
さらに佳世はもう寝ているため襲われる心配もない。本格的に手持ち無沙汰なのだ。
「進化したもんだよな…まさかこの世界でもあんなに暴れれるなんてな」
手に持っているヘルメットのような機械に感慨を覚える。
-
通常「バーチャルダイバー」
新時代型のフルダイブ型のゲーム機である。
未だ特定の人とのみの交流しかできない未完成品だが、とても使い勝手が良く素晴らしい代物だ。
某フルダイブ型MMORPGとまではいかないがそれに匹敵するほどの性能だ。
これはまだ世の中に出回っていない非売品だ。
それを何故俺と勇雅が持っているのかだって?
簡単な話ではないが、
俺らが有志で作ったゲームを有名ゲーム会社に送り付けたときに送り先から送り返されたものだ。
開発段階だとネットに書いてあったが、
これの完成は後数十年だと言われていた。
それが送られてきて、俺らは喜んだ。
…のではなく、会社に乗り込んだ。
そりゃあそんな危なそうな機械を送りつけられたんだ。疑いもする。
結果…門前払いされた。
当然だ。小学生が2人なんの許可も無しに入れるわけがない。
「おい勇雅…」
「なんだい相棒や、…俺も同じこと考えたぜ」
このまま交渉に向かったって説明に時間がかかって「はいそうですか」で済まされる可能性すらあった。
ならやることはもう一つしかない。
そうそう、俺らには大の得意の遊びがあるんだ。
-こっからは俺らの"遊び"は少し危ないがな。
そんなカッコつけても俺らのやる遊びはただの「かくれんぼ」であって、なんも珍しいことでもない。
なに、少し派手にやるだけだけど。
しかし、この決意と技術は使われる前に終わった。
…が、この「かくれんぼ」が活躍したことがあるのはもう少し後の話だ。
2人して悔しい顔になっていたのは言うまでもない。
閑話休題。
俺らが会社に乗り込もうとした理由、それは社長である西園寺晴翔(さいおんじはると)に会って真意やら色々を聞き出す予定があるからだった。
その件の相手が今外周りから帰ってきているのか外に出ているのが見えたからである。
…社長が外周りって…
俺らは西園寺社長に近づきこう呼びかける。
「こんにちは!バーチャルダイバーの件で話したいことがあるのですが」
最初の挨拶は元気に、健気になるべく大きな声で。
その後に要件を小声で社長だけに聞こえるように囁く。
「っ!もしかして君たちがあの…?」
「あの」にどんな内容が入るかはもう想像がついている。
2人して顔を縦に振ると突然社長が笑い出し、こう告げる。
「ようこそ。我が城『西園堂コーポレーション』へ」
どうにかして密談まで持っていくことが出来たんだ。
そこから、まぁ、さまざまなことを話した…とだけ言っておこう。
結論からして、この突撃で得た成果はどれも実りのある素晴らしいものだった。
その一つがプログラミングの師を俺らに付けてくれるとのことらしい。
正直、独学だと限界を感じていただろうから嬉しい誤算である。
あとは、これからまたゲームを作るのなら送りつけてくれと言われた。
それに対する"見返り"も凄かったからな。…あぁ、この話はまだいいか。
それと、本題であるバーチャルダイバーの使い方などを聞き出して、自分たちで好きに改造をしてもいいという許可も得た。
その証拠に俺らのバーチャルダイバーのコードやら運営アクセス権を全て俺らに預けて貰えたからな。
俺らのバーチャルダイバーは特別製で普通のものと扱いを別物にしていたらしく、少し押し付けられた感が凄いな…
そんなことがあって俺らは非売品の特別製を貰ったのだった。
思い起こせば少し話が巧すぎる気がするな…
想起していた思考を置いていって久方の修行で疲れていた俺は案外すんなりと眠ることが出来た。
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「久しぶりだなトモナリ」
「あなたは…」
俺が今久しぶりに目にしたその方はルーガ・パラディーナイトさんその人で、
久しぶりと言うほど久しぶりでも無かったことに少し笑ったりして…
要件を思い出したようにハッとしたルーガさんと改めて向き合う。
「時間がないんだ。手短に話させてもらう。…そちらの世界でいつかはわからないが、此方の世界とそちらの世界の両方が蝕まれる危機が訪れる…」
そこまで聞いた瞬間俺の視界は何も見えなくなるほど眩しくなり、
重く閉じていた瞼を開いたのだった。
「なんだ…夢か」
どんな内容だったか…大事なことだった気がするが何も思い出せない不思議なもどかしい気持ちを感じながら新しい1日が今日も始まる。
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そろそろもう一つも動かします。
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