一方野郎どもは…
少女たちの決意を預かり知らぬまま、
男どもは稽古を行っていた。
「くっそー!やっぱ魔法はズリぃ!」
「ヒャッハー!やめらんねぇ!」
深夜テンションであるため勇雅はオーバーリアクションで悔しがり、俺は世紀末覇者のようにヒャッハーしていた。
「もっとお前のことを常識的な価値観で見てたのが間違いだったのか???」
「いや、コーヒー飲んだ時のお前のキメっぷりよりかは断然マシだわ」
思わず冷静になってしまった。
勇雅と一度有名カフェのチェーン店でコーヒーを飲んでいったことがあったのだが、カフェインに耐性がなくて目をギンギンとさせて完全に2人ぐらいヤッた目をしていた。
本当にあれは人としてどうかと思った。
なのでなるべくあいつにはコーヒーを摂取させないように努力していた。
でも、異世界だと結構そのキメっぷりに助けられたこともしばしば…だったり。
そういう俺も夜更かしに耐性がなく変にテンションが上がってしまうのだ。
それこそさっきのようなヒャッハーは当たり前。身体がフワフワして思考がいつもよりふざけようと必死になっている。
それでも構えはこちらに戻ってくる前のと変わらず…よりも少し覚束ない感じだが様にはなっている。
利き手である右手には重く、筋力をかなり強要する片刃のtheファンタジーな片手剣を、左手にはこれまた右手のものと同様の重さをした日本刀のような少し刀身の黒い刀だ。
俺の【
今の稽古では実戦を意識して本物の刀身でやっているし、魔法も使っている。
だから勇雅の一撃を刀をクロスさせて受け止める。その一瞬止まった瞬間を狙い魔法を使い無事に勇雅に一本をとる戦術も使える。
この職業は
二刀の剣撃による近距離戦はもちろん、
魔法による飛び道具の長距離戦も、
傷ついた仲間を治す【ヒール】で本当になんでもこなせる利点がある。
職業として大変優秀なのだが、難点もある。
その一つが「取得のするための難易度が高すぎる」というものがある。
そもそも人間は一刀を両手で持ち、腰を捻り加速を生み出したりして物質を斬ったりするのが常識としてある。
しかし、二刀流はその常識から逸れていて、そもそも利き手が片方しかない場合反対側の腕はまともに刀を触れず二刀流とはいえなくなる。
使えるようになってそこでようやくスタートラインに立ったのである。
そこから型を覚え、研鑽し、
技のエフェクトがつく程の精度を得る。
そしてより強く、より早く、より上手く技を出せるように…と自分らしさが出てくる工程を経てようやく職業を得る。
そんな事情もあって二刀を自在に操ることは至難の業である。
俺は3年間の修練でなんとか得たのだが、この修練が1番辛かった…
「ここからは少し本気で行かせてもらうぞ!」
そう言ってマチェットを器用に振り回して剣先を俺に向ける。
勇雅の職業は【
彼は器用でなんでもなれてしまうようなポテンシャルを持っていたのだが、その中でも際立って突飛に輝く才能が、「踊り」だった。
聖騎士らしからぬラフな格好で籠手と脛と胸を守るようにできた軽量の装備から放たれるとてもキレのある舞とともに無数の剣撃が敵を襲う…そんな技を得意とした職業である。
(職業系の能力を解放するのかな…)
それでもこっちは負けるつもりはない。
しかし、あいつの本気はそれまでではなかった。
どこからか手には茶色と黒の混ざったような液体の入った小瓶を持っていた。
「おまっ!まさか!」
「ぐへへへへそうだよ!お前の恐れていた
盲点だった!あいつ自身からコーヒーを飲むとは…
あいつはあれのヤバさの価値を知らないのか?!あれは本当にヤバい!
あれのヤバさは俺は知ってるぞ…
小瓶の蓋を開けて一気に喉を通り過ぎさせる勇雅。
…本格的に不味いかもな…職業系の能力を使う準備をしておくか…
そのあとすぐに勇雅の顔から表情がスゥゥッと抜け落ちて2人くらいヤッた目をしている。
もっと詳しく言うと6徹程経った時の俺の親父くらいの目をしている。
「アハッ!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
ここまで来ると素の状態だとかなり絶望だ。
もう一度言っておこう。素の状態だったらな。
【二刀流剣士】のスキルである【ブレイブヒート】を発動する構えを取る。
すると剣先からほとばしるように出てくる赤い炎のような光を纏わせて刀を逆刃を向ける。
稽古の時に刃をぶつけていい時もあるが普通にやってたら斬ってしまうからな。
凪いだように落ち着いた構えをしていた勇雅は突如津波の来たかのように、衝動的に剣を振り回してマチェットで床を抉らせながら突進をしてくる。
その狂気的ともとれる行動だが、不思議と隙はなく猛攻の嵐は止まる気配はない。
【ブレイブヒート】の力の片鱗の一つは
「圧倒的なゴリ押し」である。
凄まじい勢いで突進してくる勇雅のマチェットが、俺の射程圏内入った瞬間俺は刀を二刀下から搔き上げて猛攻を無理矢理止めさせる。
その時にできた隙を逃すことはしない。
そのまま右肩、左肩、左脇、右脇、を正確にそれぞれを順番に各12回ずつ叩き込む。
計48連撃の技を終わらせたあと、
勇雅はプツンと意識を失っていったのだった。
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