貴方に会うために。

「トモナリ!待っててネ!」


 鈴仙・ヤオは高らかに宣言する。

 有言実行するのはしばらく先のことなのだが。


 鈴仙の家系は中国の名家である。


 ヤオ家と言われたら中国を代表する武術と政治、経済学などを代毎に修め、極めていく風習があり、徐々に受け継がれていった技術や知識は当主を中心とした第8子までの子供に継がれる。


 この現実世界でもヤオ家は有数の子沢山なのだ。


 その技術を全て完璧…いや、それ以上に修めた鈴仙は、


「男だったら間違いなく史上最高峰のヤオ家が生まれる」


 と先代に言わしめたほどだ。


 …この名家は古いしきたり…というかしがらみによって女性が当主になることはないのだ。


 今回、そのしきたりのお陰で私はトモナリのところに行けるのだから!


 感謝しかないネ!


 それでも私はまだ高校2年生なんだヨ…

 大学を日本のところにする事情でトモナリに会いに行く…っていう案が理想的なんだよネェ…


 日本語はアッチの世界でトモナリとかスズメチャンと話す時に使ってたから結構使えるハズ!


 待ってロ!ニホン!


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「トモ…早く会いたいデス…」


 つい先刻までいた想い人を考え、ホームシックのような状態に陥る。


 トモが私のアナザ◯ス◯イ!


 …だめだ、虚しくなるだけだった。


 今すぐにでも大学を辞めて貴方の元に行きたくて堪らない…


 でも、トモと一緒に活動していくのならこの学歴はきっと武器になるハズ。


 そう考えて私はまだまだ踏ん張ってこれからのことの計画を立てていくのだった。


「私の日本上京を邪魔してくるのはやはりアイツらね…」


 何故か私に付き纏ってくる気持ちの悪い男どもだ。アイツらストーキングもしてくるから私が国外に行っても付いてきそうなのだ。


 そこまでするかは分からないけど。


 …とても気持ち悪いデス。


 私の周りの障害は私が超えなきゃ意味がナイ…


「私が私であるにはトモ…貴方の傍ではないといけないノ…!」


 強い決意を胸に彼女は動き出す。


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「智也くんがこっちでも私の近くにいてくれるだなんて…夢みたいなの…」


 一度離れてしまった幸せが近づいてきたであろう予兆を感覚的に肌が受け止めてうっとりとするの…


 一度私たちの勇者チームは世界を救った。でも、私は戦力になれなかった。

 だって私の役目は【付与師】でいわゆるバフ・デバフ専門家エンチャンターとしてみんなを支えてきた…と思っている。


 前衛で敵を倒すことができずに後衛でコソコソしてる【攻撃できない支援職足手まとい】なのだ。


 いつも戦っていたのは私以外の人たちだ。戦ってなくて後ろで縮こまっているだけの私が勇者さまなんて崇められるのは烏滸がましいにも程がある。


 みんなは私は役立っているんだって言ってくれてたけど実感がないからお世辞で言われてるように思えて不安が込み上げてくる。


 みんなは私が居なくても強いから私は要らないんだろうなぁ…


 ふと考えてしまっていた思考は私の自覚と周りの期待とのギャップと共に、


 重く、


 重く、


 のしかかっていた。


 それでも、智也くんは私を見捨てなかったし、私を必要だと何度も言ってくれた。


「壊れかけた私の心を支えてくれたのは貴方。だから、貴方の傍では支えさせるのは私。…それじゃあダメかな?」


 想いは募り、積もるのだ。


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「はぁ…私(わたくし)はいつ貴方に会えるのでしょう…智也…」


 最近の私は本当に忙しいわ。


 親の期待を背負い、立派な跡継ぎになれるように礼儀作法は当たり前、心理学に帝王学、経済学などの専門知識を教え込まれて、柔道、合気道、空手、キックボクシングetc…

 今まで教わってきた知識はこの異能が日常に溶け込んだ世界では当たり前となったこの世界で無駄にはならない。そう教わったし、私も今までも、これからもそう思っているだろう。


 しかし、その厳しい教育にまだ13歳の少女である私はとっくに限界を超えていました。


 勉強しようものなら、夜中に5分寝て、20分勉強、また5分寝て、20分勉強…の繰り返しで眠気を誤魔化したりして睡眠学習を会得していた時期もありましたし。


 そのあとすぐに身体が本能でショートスリーパーに目覚めてそんな地獄をわざわざやる必要なんてなくなったのですけど。


 そんな私を地獄から救ってくれた救世主が現れたのだ。


 この時は人ではなくて現象がメシアとなったのだけど。


 そう、異世界への転移だ。


 それを知った瞬間柄にもなく凄まじい勢いで喜びを体で表現していた。

 これであの地獄から逃げられる!


 もう体を休めていいんだ!


 でも、その願いは叶わなかった。


 魔王を倒せ。


 そう命令されて私は動いた。


 もともと体を動かしていたこともあり、戦いに参加することは簡単だった。


 しかし、それでもこんな世界に来たのだから…仲間との助け合い、仲間とくぐり抜けた死線を分かち合う姿…


 やはり"仲間"を欲してしまう。


 そんな私の"渇き"を助けてくれた。


 それが智也だ。


 最初は私は冷たい対応をしていたけど、諦めずに私と話そうとしてくれたことで私の見知らぬ土地で閉ざされ切った警戒と、

 仲間を欲していた欲求を同時に解していき私を助けてくれた。


「私は貴方から沢山…本当に沢山のものを貰ったわ。今度は私が貴方に渡す番ね」


 受けた恩を彼女は忘れない。これまでも。…これからも,

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 ギリギリ月曜日!


 次は木曜日!


 他作は今度動かします…多分。


 新作が思いついちゃうから…それのプロットも作りたいし、

 今も課題をやりながらの並行作業ですよ…終わる気がしない…

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