第2章 狩人、ノア・フリードリヒ

第10話 頼み事

今日は一日体を休めよう。


宿にて体を起こして、水を飲み、薬草を巻き付けた燻製肉を1つ食べる。


薬草にはカフェイン等の成分があるため、よく目が覚める。

その肉を食いきって部屋から出て。


そのまま右手に周り、階段をゆっくり降りてゆく。


「おはよう!紳士さん!」


「その二つ名はやめてくれ!恥ずかしい!」


朝から皆は元気に笑っている。


俺は朝からその空気には乗り切れず、酒場のマスターに話しかける。


「果実酒を頼む、砂糖水で5倍に割ってくれ。」


「はいよ…ってなんでそんなもの飲むんだい?」


答えるのは少し難しいな…


本来、甘酒というものがあって、その甘酒を飲むと少し身体が温まって血行が良くなるという話がある。


それに似せて、少ししかアルコールの入っていないものを飲みたかったんだ。


うーん…適当に誤魔化そう。


「ほんのすこしのアルコールなら、体にいいからだよ、故郷の医学で知った。子供も、ほんの少しなら寒い日に飲ませればいい。体が暖まる。」


「そうか…酒で体が良くなるなんて、聞いたことなかったよ、人外であってもそういう話は聞かなかったよ。」


当然だろう、本来酒は祝いの席などで思考力を弱めてはっちゃけるためのものだ。それに、酒に呑まれるとろくな事はないからな。


「どうだろうな、酒呑童子の如く酒を力とする者は量が多ければ多いほど良いと聞く。」


「酒呑童子って誰だい?」


たしかに、ここは異世界だから、酒呑童子を知らないのも当然だろう。


「酒を飲むと強くなる鬼のことだ、故郷では華奢な少女の見た目をしているとされている。」


「へぇ…飲み比べをしても勝てそうにないね…」


そんな話をしながら、その果実酒を飲み終えて、トマトサラダを注文する。


「ああそうだ、あんたに伝書だ。」


そういって、1つの封筒を渡される。


「一応口頭で伝えておこうか…それを渡した娘は1週間ほど前に両親を亡くしている。」


「両親を?今までどうやって生きてきたんだ?」


「みんなから色々もらって、本で勉強しながらいろんな作業を手伝ってたよ、あの子はなんでもできる子だ。たまにウェイトレスも手伝ってもらったよ。」


「…この村の人々とはかなり親しいようだな。」


「そうだね…ただ、あの子は両親と同じ道を歩むかもしれない。」


「と言うと?」


「冒険者になろうとしているんだ。」


やはり、異世界なんだな。


ダンジョンを攻略し、そこで得た物と情報を収入として生きる人々。


現世のアニメでも、ダンジョンを攻略し、魔石を手に入れてそれを換金して生きるような人々の話があった。


「それで、冒険者になることになにか問題でもあるのか?」


「…みんな彼女を失いたくないんだ。もし、引き留めることが出来なくても、生きる術を教えてやってほしい。」


「…俺には荷が重いが。」


「そうだろうね。でも、彼女は自らの師に、ヒル、お前を選んだんだ、これは、お前さんの仁義の仕事だ。」


「…できるかわからない。もしかしたら、彼女になにも教えられないかもしれない。」


「懸念することはないさ、少なくとも、彼女の心に変化を与えることはできる。」


「…わかった、行ってくるよ。」


「任せたよ。」


俺は食べ終わったトマトサラダの皿と、飲んだ果実酒のコップを下げてもらい、チップを置いて、居住区に向かった。

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狩人転生〈銃弾で異世界を救うファンタジーライフ〉 @IronRaven2757

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