第4話、汚食事注意!酒場の戯れ!
…酒場といえば、一番不味い酒を呑むんだっけか。
異世界ものの酒場のシーンでは定番だった気がする。
門を開けて中に入る。
「いらっしゃい、注文は?」
いざ入ると、酒場の店主であろう風格のいい体つきをした3メートルほどあるように感じてしまう威圧感をもった女性が、カウンター声をかけてくる。
俺は流れるように椅子に座り、こう言った。
「安くて不味い酒を1杯適当にもらおう。」
「はいよ…おめぇさん、吐いたりしないか?」
俺は心配される。
しかし、俺はあらかじめ、入る前に考えていた返すための言葉を口に出す。
「酒を飲んで酔うのに、絶対吐かないなんて訳があるか?残したりこぼしたりしても心残りのない不味い酒を頼んでいるんだ、マスター。最近は酒の心得が良い客に会ってないんじゃないか?」
マスターは声を上げて笑った。
「まさかそんなこと考えるなんてな!一本取られた!ほら、瓶まるごとやるよ!」
そういって渡されたのは何か…チョコレートと言えば聞こえはいいがこれはどう見ても…
「それは何も考えずに飲んだほうがいい。味はしないが、アルコール度数は高いし栄養価も高い。漢方薬の効果として二日酔い対策も出来るが…不味すぎて廃盤になった。価値が付かなかったからここで一番の安酒ってわけだ!実際、薬草をかなり食わせた動物から取れたものを使ってあるそうだぜ!」
マスター…酒に関しては物好きだなぁ…
…周りがざわついている。
「おいおい、マスターがついに客にあれを出したぞ!」
「ついに、マスターが言うところの本物の紳士が現れるのか!?」
うーん、なんかすごいことしてるらしい。
おおよそマスターが俺を試しているようだが…
辺りに熱気が上がる、賭けもはじまった。
おおよそのベットは飲む前に吐くで1.2倍らしい、要するに普通吐くんだろうな。俺は万馬券として売られているのか?まぁどうだっていい、飲みきってやる。
「なんかちょっとした大会みたいになってるが、俺はただの狩人だ!安酒で酔いたいだけなんだぜ!」
このクソみたいな糞酒をイッキ飲みする。
喉をごろごろと物が通っていく。
それと同時に身体にアルコールが回り、心拍数が上がっていく。
「おお…おお…!」
周りは興奮を隠さない声を上げる。
「アイツやりやがった!」
「頼む、吐いてくれ!生活費懸かってんだ!」
俺は周りに目もくれずに、吐き気をもよおす様なその酒を飲み干した。
「よっしゃ!大当たりだ!」
「クソっ…やっちまった…」
周りの人間たちはそれぞれに言葉を上げている。
よし、この一口で最後だ…!
あえて音を立てて一滴残らず飲み干す。
「よっし!飲みきったぞー!」
一同は「うぉおおおおお!!!」と叫び、面白い賭けができたと喜んでいる。中には生活費を無くした馬鹿も居るが、気にしないでおこう。
「お前…本当に呑んだのか……」
マスターとしてはびっくりだったようだ、それもまぁ当然だろう。
日本で普通に生きていればまず糞を食べたり飲んだりはしないし、まず飲もうとしたら吐く。
だがしかし、水がほとんど無い異文化や、極限環境ではどうだろう。
他の動物の糞尿から水や栄養を得たりするのは当たり前になる。
意外と身近にもあるはず。
ある国では、猫の糞から取り出した豆でできたコーヒーもある。
日本国内では秋田のマタギという民族が、スカ料理という兎の糞を使った料理の歴史的な文化がある。
実際、1週間も食えば慣れる。
ふつうだと嫌われるから、自らそうしようとは思わないが、ある事業のときに、2週間ほどそういったゲテモノを食べ続けたから俺は大丈夫だ。
「あ、マスター、この村について、いろいろ聞かせてくれるか?」
「おう!いろいろ教えてやるよ!今日の主役さん!」
ここの人たちは、そういったことを忌避したりしないようだ。
女神エルがなにか教えているのだろうか?
それとも、そもそもそういうことを笑い話にして酒を呑める優しい人たちなんだろうか?
この村はいい場所だ。
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