第2話 転生してはじめての獲物と自己紹介

「さて、一通り終わりましたか?」


「イグアナのような生き物を一匹獲った」


「多分イワナゲイグアナですね、背中の岩を投げてきますが、一つしか投げられないので避けてしまえばただの小動物ですね。」


「背負ったままだが?」


「そりゃぁ…自分の最後の防衛線を軽々しく投げないでしょう?あなただって意味もなく銃を撃ったりしないでしょ?」


「たしかにな、ところで、こいつはどうやって捌けばいい?」


「ああ、普通に内蔵傷つけないように取り出して肝臓以外捨てればいいんですよ、肝臓は他のと比べて黄緑色なのでわかりやすいかと。肝臓は薬になるので高く売れます、薬屋に渡せば日本円でだいたい2万くらいしますね。」


「本当か…」


「はい、あと革は耐久性があるので財布などに使われるため、6000くらいで売れます、サイズや質でピンキリ別れますがまぁ3000は固いです。骨とかは廃棄ですね、軟骨が体にいいらしいですけど、あまり期待されてないので値は付きませんね。」


銃弾一発630円、それだけで2万いくらか…


「税に関してはあまり気にしなくても良いですね、この世界の税は全て店舗負担ですし、個人取引には税が付きません。そもそも取り締まれないからですね。」


サボット弾頭のスラグ弾は再装填すれば再利用出来る、火薬代だけで済むからもっと安く…


「ああ、そうだ、ここはどこだ?少なくともさっきのイグアナは日本には居ない動物だし、植物の種類も全く違う、動物のサイズもあまり環境に左右されていないようだが…」


「はい、要約するに、異世界です!」


「そうか、異世界転生か…確かに、俺は一度死んだはずだ、なのに生きている。可能性としてはゼロではないな、輪廻転生が現実になったと考えればあながち間違いじゃない。」


「やけに受け入れが早いですね。」


「そういうことはよく知っている、俺が居た世界にはそういうジャンルの小説が山のようにあったんでな。」


「そういうことですか、では、自己紹介をしましょう!私はエルドラド・ファニー!エルと呼んでください!私は狩りの女神で、異界の狩りを学ぶためにあなたを転生させました、もちろん、文化は先に学ばせていただきましたが…肝心の猟について勉強するまえに少し想定外があったので出来てません、また教えて下さい。」


「わかった、俺は塩屋犬治(しおやけんじ)、52歳だ。医者になろうとして医者の道を進んだが、医者にはなれず、一般企業に就職。開発部門で業績をあげて、貯金も貯めていたが死んでしまったよ。私には妻がいる、5億の貯金はしてあるから老後は幸せに生きれる…と思うが、私が居なければどうなるか心配だ…」


「あ、奥さんについては大丈夫ですよ。株式投資でちゃんとお金増やしてちょっとした富豪になってます。」


「あ、そうなのか。」


「ええ、はい。奥さんは今小さい頃に描いていたイラストやキャラクターを使って小説を書いていますね。一年後くらいに出版社に持ち込むらしいです。」


「わりと元気そうでよかったよ。」


「そうですね…」


少し声色が怪しいな…


何かありそうな気はするが深く追求はしないでおこう。




「さて、これからのお話をしましょう!」


活発な声でエルは話す。


「これから街へ向かってください、道中では基本、敵対生物に遭うと思いますが、基本逃げ切れます。逃げてもいいし、殺してしまっても構いません。生物を保護する美学は存在しないので、自由に狩ってしまってもいいです。では、何かあれば無線をお願いします。」


「了解、ところで、弾はどうやって手に入れるんだ?」


「異世界転生物の相場で言えば、錬金術でしょうね。でも、そこは私が手を回しておきました。左腕の端末でほしい物資を選んで補給要請をすると、木箱が転送されます、その中に要請した物資が入ってるはずです。通貨は現地通貨の為替相場で扱われますのでご注意を。」


言葉が途切れたあと、左腕に目をやる。

左腕には薄い板のようなものがある、板に触れてみる。

画面が点灯し、ガイドメニューが表示される。

健康チェック表と気象表、あと写真機能に画像解析ソフト…

スキルツリーガイド?

…よくわからんが、役には立つだろう。


「何から何まで手厚いな。」


「それもそうです、私の都合で私の為に呼んだのですから、責任を持って支援させてもらいますよ!」


これで無線は終了した。


イグアナの皮はなめし、肉は手頃な岩や石器などを使って調理し、焼いて食べた。


端末を見て地図を確認する。


ここから1Kmほどに小さな村があるようだ。

そこを通るとおよそ3キロ、歩いて行くとだいたい大目に見て2時間ほどだ。


道中にいくつか獲物がいると考えると8時間ぐらいだろうか。


とりあえず、弾を補充するために金を稼ぎたい、村に交易する文化があればいいが…


鞄にイグアナの皮を吊り下げ、日本ではないため、散弾銃に銃弾を詰めて歩く。


そうして歩いていると、もう一度無線が来る。


「あ、犬治くん、伝え忘れていたことがある。」

「どうしたんだ?エル。」

「この世界の通貨だけど、そっちの端末に送った表のとおりになっている、確認しておいてくれ。」

「わかった。」


通貨レート表



鉄貨→1円

銅貨→10円

銀貨→100円

金貨→1000円

聖銅貨→10000円

聖銀貨→100000円

聖金貨→1000000円

聖石貨→10000000円



「高価な鉱物ほど価値が上がると覚えればいいか。」


「あ、そうそう、取引のとき端末が勝手にお金払ってくれるよ、左ポケットの中に移されてるからそれを出せば取引が終わるよ。」


「まぁ便利だこと、お姉さん。」

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