第38話
ふむ。
まさかこうなるとは思わなかったなぁ。
「ごめん巴さん! なんか広まっちゃって……」
そうだねー、クラスメイトならまだしも隣のクラスの子に事実確認とかもされちゃってちょっとどういう事かなー?
数日後の昼休み、まだご飯中のあたしと焔君のすぐ近くで、万里君が両手を合わせて頭を下げている。
クラスメイト達はもちろん、他のクラスの子達も廊下から噂の的であるあたしと万里君を見ていた。
モテるのに彼女なしな万里君の片想いが発覚したのだ。
有名税、みたいなものだろう。
……んでもお弁当食べにくいなぁ……せっかくの塩唐揚げ……。
「──食い
ぼそ、と焔君が呟いた。
「黒崎も、ごめんな?」
「はぁ? 嘘つけ。悪いなんて思ってねーくせによ」
え、ちょっと焔く──。
「──うん、思ってない」
「え?」
「あっそ」
「え?」
がつがつ、と残りのお弁当を食べる焔君にも驚いた。
軽く口を開けたままのあたしはそんな焔君と万里君を交互に見るしか出来ない。
「ごっそさん。帰る」
えー……。
唖然としていると、焔君は本当に教室から出て行ってしまって、教室が、しん、としてしまって、それから少しずつざわつきだした。
「ちょっと巴、いいの? 黒崎君行っちゃったよ?」
クラスメイト達が心配して声をかけてきた。
良いも悪いも、ぶっちゃけあたしもこの空間から逃げたい気持ちもあるので何とも言えない。
それに──。
「──いーよ。もう帰っちゃったのは帰っちゃったし」
あ、ポテトサラダ美味し。
リンゴ入り最高。
「あのさ巴、聞きにくい事聞いちゃうけど、いい?」
クラスメイトがあたしの前の席に、今まで焔君が座っていた席に座りながら聞いてきた。
何だろう。
「黒崎君と付き合ってるんだよね?」
あたしは眉を
「今更な質問だなぁ」
「今更だけれどさ、
すると聞いている他のクラスメイト達も相槌を打っていた。
「なんていうか……黒崎君に弱味でも握られてんのかなって」
……はぁ?
「だって苦労ばっかじゃん。付き合ってるってだけで、黒崎君の事あれやこれや頼まれたりさ。今だって──」
「──全部はーずれ」
あたしは少し大きくそう言った。
勝手な事ばっかり、憶測で何言ってるんだろう。
「弱味なんて握られてないし、苦労もしてない、感じてない。先生に言われたからって別に気にしないし、さっきの焔君は帰りたいから帰っただけ。あたしも今、言いたいから言ってるだけだよ。他に何が聞きたいの? 全部答えてあげる」
一気に言い終えてから、ちら、とクラスメイト達を見ると驚いていて、申し訳なさそうな顔をしていた。
わかってる、あたしを心配してくれているから言ってくれてるって。
焔君のせいって言ったらそうかもしれないけれど、あたしは焔君を理由になんかさせない。
はーあ、折れるか。
「ごめん、嫌な言い方しちゃった。ありがとね」
「……う、ううん。こっちこそごめん。巴がいいならいいんだ。でもまさかマリちゃんが参戦してくるとは思わなかったからさ」
すると次の興味である万里君に皆が注目した。
「お、俺が広めたわけじゃないよ? そりゃちょっと話の流れで軽くは話したけど、こうなるなんてさ……でも、嘘じゃないんで」
少し
応援が半分、面白がってるのが半分というところだろうか。
とりあえず注目されている事だし、あたしは軽く説明する。
万里君とは友達以上でも以下でもないっていう事、答えは万里君の提案を受けて保留中だという事。
「巴さんの言う通りだよ。そういう状況だから、まぁ黒崎が気分悪くなるのは当然だよ。だって彼女の巴さんが他の男に告白されてるんだもん」
……ん? そういえば──。
「──あたしと焔くんってどうやって付き合ったんだっけ?」
え? と万里君もクラスメイト達も首を傾げる。
あたしと焔君は小学校の時からの幼馴染で、中学ももちろん一緒で、今も一緒で、なんやかんやで彼氏彼女な関係になったのってここ一年くらいの事だ。
「……告白っていう告白、一度もないかも」
そうなると、あたしと焔君の関係って?
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