第15話
この懐中時計、結構年代物なのかなぁ?
廊下をぱたぱた、と走りながら私は手の中の懐中時計に目を落とした。
金色がくすんだような色──
蓋には綺麗な模様が彫られていた。
するとチェーンがついている先端を握ってしまった時、その蓋が開いた。
英数字の時間……十二時のところが──。
その時だった。
「──わっ!?」
突然目の前に人が来て、私は上半身を
どうやら二年生の女の先輩さんが階段からジャンプしたみたいで、先輩さんは慌てて謝ってくれて手を貸してくれた。
「ありがとうございます──あ」
懐中時計!
私の足元に落ちていて、慌てて拾って傷を確認する。
大丈夫そう……よかったぁ。
「あ、あの、急いでて不注意でした。驚かせてすみませんでした」
「ううん。急いでるとこごめんね!」
そうだった! 急がなきゃ!
私は一礼して下駄箱へと急いだ。
※
それにしてもさっきの先輩さん、とてもいい人だった。
元気いっぱいって感じで、赤いタオルも似合ってたな、と私はまずアキ君の靴箱をチェックした。
やっぱり上履きになっている。
慌てながら革靴に履き替えて、昇降口を出た時、男子生徒の後ろ姿が見えた。
ふわふわの髪の毛──アキ君!
「あ、アキ君!」
叫んでみたけれど、ちょうど校門の前をトラックが走っていったのでかき消されたようで、アキ君は気づかず校門を出て左の方へと行ってしまった。
鉄の柵の間から見えたアキ君は全く気付いていなくて、私は校門へと急いだ。
昇降口から校門までは結構広くて距離がある。
それに何でロータリーの真ん中には噴水があるんだろう。
太陽にきらきら光る
えっ、嘘、もうあんなところまで行ってるの?
アキ君は歩くの速いのか、もう小さく見えるほど遠くに行ってしまっていた。
道の反対側だし、先の横断歩道まで学校側の歩道を行くしか──。
──って、曲がっちゃった!
右折したアキ君が見えない。
このままでは見失ってしまうけれど、無情にも信号は赤。
うーっ、早く青になってぇ。
その場で足踏みしてしまうほどに私は焦る。
だって学校からこっち側の道は初めてなのだ。
この横断歩道だって初めてで、やっとで信号が青になってくれて、私はまた小走りでアキ君を追った。
※
ここら辺は商店街みたいだ。
学校帰りの生徒や、買い物している人達がいっぱいいる。
アキ君が道を曲がったその先をずと真っ直ぐに来たところがここで、私はまだアキ君に追いついていなかった。
「す、すみません」
人が多すぎて、ぶつかっては謝って、私はアキ君のふわふわな髪の毛を見失わないように時折背伸びしながら歩いている。
こんな商店街、引っ越してきてから初めて……。
前に住んでいたところは随分な田舎で、商店街とかもなかった。
もっと自然がいっぱいな感じのところだったので、私は通りに並ぶお店に目移りしてしまっていた。
古本屋に花屋、雑貨屋におもちゃ屋。
あっ、ジェラート屋! 苺の美味しそうぅ!
ずっと小走りで歩いているからもう暑くて仕方がない私は、一瞬立ち止まろうとしたけれど、ぐっ、と我慢する。
また今度、絶対にあれ食べる、うん。
するとアキ君はまだ商店街の向こうまで抜けていないと言うのに、途中で左に曲がった。
まさかお店に入ったのか、それだったらいいのだけれど、と私はもう一度ジェラート屋を見て、小走りで向かう。
もう、私、そんなに体力ないので!
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