幕間 宵闇に消えた独白

私は走る。


闇夜を駆ける。


この人並み以下の小柄は、身を隠すのにはピッタリで、だからこそ私は彼のパーティーで「盗賊シーク」を担っている。


マーチよりも背は少し高いけれど、それでもパーティーの中じゃ2番目に低い。


永久少女の呪いは、私にとっては不老のメリットも霞むほど疎ましい。


ケイオス……。嗚呼、ケイオス。

どうして、私にそんなことを言うの?


知っているでしょう?


盗賊が人を殺せば役職は変わり、私は「暗殺者アサシン」になると。


なのに、私に。


人を殺せと言うんだね。


──分かった。


走る足は重い。

今までにない程に。

そうだ。だって、ケイオスを殺すかもしれないんだ。


私の恩人を殺すなんて許せない。


忍び足で部屋に入る。

男はぐっすり寝ていて、殺されるなんて考えていないようだ。


殺さないと、彼が殺される。いや、あんなにも強い彼が殺されるはずないのだけれど。

だとしても、芽は摘むべきだ。


要は、ゴブリンと同じだ。


そう言い聞かせて、私は刺しやすい腹を、魔法を使われないように喉を貫いた。


刺す前に目が覚めたようだけど、そんなこと気にならないほど私は気が動転していた。


人を殺すのなんて初めての事だったから。

人。人なのだ。ゴブリンでもオークでもスケルトンでもなく、同じ──人。


「安心してください。もうじき、死ねます」


とっても苦しそうで、思わず口に出してしまった。

もう楽になってください。今世は殺されてしまったけれど、きっと来世は幸せな世界に転生して下さい。


そして私は逃げ出した。ステータスの職業欄が「暗殺者」に進化するのを感じる。

あーあ、嫌だなぁ。

これからは、対人に関するスキルしか手に入らなくなるのかな。

それはやっぱり、嫌で、嫌で、嫌だ。


──でも、ケイオスの役に立てたんだもの。

それくらい、なんともないか。


役立たずには、なりたくないもの。

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