第9話  葵

兄さん、大変です。


僕は今。原始人を捜しています―― 


 

 ◇


 事の発端は、今から数日前・・・



一学期の終業式を最後に、葵は学校へ来なくなってしまった――


未だに経緯いきさつを聞かされていない オレと悠真は、ただ指示に従うしかなかった

モテ男と何があったのか、気が気ではないオレだが...

本人が話したがらないので、仕方がない


 夏休み期間に、悠真と2人で、葵の家に押し掛けた事もあったが

対応は、かき氷ののように冷たかった。


 それでも、元気になってもらいたいと 願う気持ちに 偽りは無い...のだが、

かなりこじらせていると思うぞ、この状況!


 ◇


「なぁ、悠真! 原始人って いると思うか?」

「夕方に現れるって、学校では割と有名な話だ」


「それって怪談話だろ?それも他校の」

「この学校にも 現れると葵が言い出したんだ。だから、怖くて学校に行けないと」


「なぁ、悠真。原始人と宇宙人、どっちが 遭遇率 高いと思う?」

「宇宙人だ」


「――即答だな、おい。ひょっとして、出会ったことがあるのか?」

「ない!」 「ですよねぇ~」


 ◇


 二学期の始業式


「禁止事項」のおかげで、この教室内では、大きな騒ぎは起きなかった


 もちろん、学校外では大きな話題となりニュースや週刊誌の話題にも上がった

学校の前で、Newsキャスター や ジャーナリストさんに声を掛けられて、

立ち止まる学生がTVに映ったり雑誌に載ったりで、PTA側が それを問題視


 その反省から、学校側が異例の記者会見を開く事となり、それでも、学校に

報道関係者が現れた場合は、PTA役員が問答無用で警察に通報。大きな社会問題を

露呈する形となった。PTAの大きすぎる権力に、報道の在り方。プライバシーの保護

ジャーナリストを名乗る迷惑なYouTuberの存在など


まるで、世界の中心に 立たされているかのような感覚だった


 ◇


 外の騒動から隔離されたような教室。そんなオレたちのクラスにも

大きく変わったことがあった


 まず、担任だった坂口先生が責任を取る形で 依願退職 をした

世間の苛烈なバッシング耐え兼ね、外出が困難なPTSDを負ったそうだ


 後任として、数学を教えて下さっていた 土津はにつ 義治先生が

二学期からの教壇に立っていた

 始業式のときに、校長から「あくまで臨時対応として」と念を押していたが、

誰もが聞いていないと思えるほど、体育館が ザワついていたのを思い返していた


「――それでは、転校生を紹介する。すめらぎ君、こちらへ」


 土津はにつ先生は、いかにも不慣れそうに転校生を誘導して、

黒板の前で 自己紹介をさせる


「すめらぎ ましろ です。京都から 父親の単身赴任が 心配で

思わず宮城までついて来てしました。よろしゅう お願いします」


 自己紹介をしている間に、先生は彼の名前を黒板に書き記した

その書体漢字は、まるで龍が天に昇らんが如き上手さと 名前かんじにクラス中が、どよめいた




 ―― すめらぎ 魔城ましろ ――



京都人っぽい、すらっとした背丈に とした 顔とは裏腹に、

かなりエッジの効いた名前だった



 そして、オレは 確信 した! いや、直観とでも言うべきか

唾を飲み込み、息をする事さえ忘れて、凍える背筋が訴えかけてくる


悠真、モテ男に続く、第3の勢力が生まれるだろうと・・・


 そんな事を思いつつ、


悠真の方を見てみるとアイツは、


葵の空白の席を ちょっと寂しそうに見つめていた・・・



 ◇


土津はにつ 義治先生 イラスト⇓


https://kakuyomu.jp/users/tasogaleyorimosirokimono/news/16816700427618349458



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うしろの席の子が「死亡フラグ」立ててしまった・・・ 越知鷹 京 @tasogaleyorimosirokimono

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