第8話 悠 真



  いまさら、言う事でも無いが・・・





       オ レ 達 は、友 達 が 少 な い !




 ◇




 いつ頃からか、クラスで 浮いてしまった ― 3人 ―



 悠真は、天然パーマが原因で よく イジメっ子に絡まれていた

だからか、誰も寄り付かなくなり 独りでいる事が多かったように見えた

親の教育方針により、誰かを傷つける事が悪い事と思い込み、必要以上に怯え、

何も言い返せない子供に育ってしまったという


 葵は、小さい頃から可愛かった

もちろん、男の子から よく 告白をされていたと聞いた

そのせいで、同性からの陰湿なイジメが徐々に増えていき、気付いたときには

無視の対象になってしまっていたという


 オレは、自分が楽しく感じていれば、周りも楽しくなると思い込んでいた

要は、デリカシーが無いタイプの人間だった

空気が読めないせいで、先生からも 煙たがられるようになっていった



 そんなオレ達が 小学5年生のときに、初めて ひとつのクラスに 集まった

 仲良くなった きっかけは、“ライトノベル”だった



 小学生で読んでいる子は、そうはいないだろう

それこそ、年の離れた兄や姉,親戚とかそれを趣味として読んでいる父母などが

読んでいて、影響を受けるくらいだろうか


 共通の趣味を知ると、仲良くなるのに時間は それほど掛からなかった

読んでいるタイトルはバラバラだったが、ジャンルへの大人じみた固執が

無かったので、大抵の物は回し読みをして愉しんだ


 そんな3人が、より団結した出来事は、悠真が、

例のいじめっ子に絡まれていたのを 皆で撃退した事だった

そいつは、他の人をいじるのに、自分がいじられるとマジ切れするタイプだったので、その性格を上手く利用して 撃退してやった



 ◇



 世界で、たった3人だけの ――友 情――


 そんな関係が、ずっと続くと思っていた。それなのに・・・

葵が、 オレ達の葵が、 違う男に取られるなんて、 思いもしなかった

澄み切った 青い空に 手を届かせようとする奴が、出てくるなんて・・・



「なぁ、悠真。オレ達は、これからも友達だよな?」



ゆっくりと立ち上がり、傍にいた悠真に話しかけた


いや。さすがに これ以上 詮索すると嫌われると思うぞ?」

「 違ぅわッ! たしかに気には なるが・・・」


 オレは、思わずツッコミを入れてしまった


「そうじゃなくて、ほら。あれだよ、あれ!」

「アレ?・・・あぁ、盗撮の件か」


「してないわぁ! オレ達が、そんな事するわけないだろ!」

いや々。したのは、お前ひとりだろ? 何を言ってんだ?」


「は、、、はぁああああ?! そんな事するわけないだろ!」

「ほら。去年の運動会。100メートル走。こっそりと 葵を盗撮ってたよな?」


「・・・・・・」

オレは、ゆっくりとひざを折り 悠真に土下座した


「すみません」


 悠真は、オレの肩にそっと手を置くと、まるで弥勒みろく様の如く神々しい

笑顔と口調で こうおっしゃられた


「気にするなって。俺も盗撮しているお前をこっそり盗撮ったしな」

「・・・・・・」


悠真に、悪魔に、オレは再び、こうべを地べたに擦りつけた



 後で聞いた話によれば、遠くで オレ達のやり取りを見ていたモテ男が、

何やってんだ?あのふたり、と呟き。しっかりと、見られていた




 ◇




 一学期の終業式



 ― その日の夕暮れ、 再び犠牲者が出た ―



 特別授業の終わりの出来事が、クラス中に広がり、葵が吊るしあげられたという

特に酷かったのが、モテ男のファンクラブで親衛隊と言われる同じクラスメートの

2人の女子だったそうだ

 必要以上に、葵にマウントを取った その 2人 が・・・入れるはずの無い、

校舎の屋上で、天国の階段に足を掛けてしまった




 「禁止事項」



・必要以上に教室内で クラスメートに『』を取ってはならない




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