第3話 新たな犠牲者
黒南風(くろはえ) ―― 梅雨の初めに吹く南風
この日は、中間試験も終わり 少しだけ 解放感に浸っていた
オレの後ろの席は今だけ、空白となって 湿った風がよく通っていた気がする
「えぇ、今から席替えをする。あんな事があった後だが、このクラスだけが
席替えをしないというわけには、いかないからな」
担任の唐突な宣言で、クラスの皆が騒ぎ出した
「なお、新友(にとも)の席は、窓際の一番後ろにしようと思う
みんなも、それで良いヨな!」
ちょっと噛んだような気がしたが、気のせいだろう
この先生は、去年も 自分のクラスを受け持った 気心の知れた先生だ
無理強いをするような先生ではなかったけど、今年はこのクラスだから仕方ないか
「呪われた教室」
いつからか、そう呼ばれるようになったらしい
何年前からか?なんて事は、誰も知らないそうだ
このクラス…いや、この教室を使う クラス が呪われるらしい
信じられない眉唾物な話。嘘っぽい流言。つまり、色々と良くない噂が立っている
クラスメートは、半信半疑で、中には「悪質なデマ」と憤慨する子もいた
どちらにしろ、ひと筋縄ではいかないクラスになっていた
先生は、侮られて統率の取れない事態になる事だけは 避けたいのだろう
「いいか。番号を書いた紙が この中に入っているから、
1番から順番に、そっちから座っていくように」
廊下側の一番前の席を指し、次に 1~34 まで 書かれている紙のうちの
1枚を箱から取り出して、全員に見えるように持ち、
再び半分に折り直して、箱の中に入れた
「窓際の一番後ろの席は、
その言葉で、ざわついていた クラス が落ち着きはじめた
それを見計らたように、新友の
「先生。男女ごとに 列で 割らなくて良いのですか?」
「そういう事をすると【男女差別】と騒ぐ親がいるからな。まとめてやる」
そうは言っても、今は しっかりと男女に別れていた
(前々から、物事を面倒くさがる癖を持った 先生 だったな)
「えぇ⁉」「おぉ!」とか、思い思いの声を発して 再びクラス中が 騒めき始める
ぱん ぱんっ!と手を鳴らして、先生が音頭を取った
「それじゃあ、順番に引きに来い――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます