第2話 呪われた教室

 実質が無い 理解不能

    目茶苦茶 非建設的

     バカ臭い 意図不明 愚論 邪説・・・etc




 なにせ、「想像を訴えるに恥ずかしい話」ではあるけれど、

このクラスに まつわる噂の大半は 本当だった と思えてきてしまう


 それは、昨日の出来事。その 起きて しまった 超常現象――

その件をホームルームで、先生からの報せを受け ほとんどの人が、

声を押し殺してしまった


 ある友人は、机を大きく叩き、また違うクラスメートは

肩を揺らして、喪に服しているかのようだった


 これまでは、クラスメートの皆が半信半疑だったに違いない

「禁止事項」を犯せば、超常現象が、死を運ぶ――

そんな 感覚 で、ちょっとファンタジー的な少年心をくすぐる、

卒業生が広めた 遊び の噂だと、オレも思っていた



 ホームルームが終わると、オレの周りに2人の友人が集まってきた

小学校からの付き合いで、今や「親友」とも言える 2人 だ


 ひとりは、パーマ風で全体的に動きのある ミディアムスタイル が

よく似合っている。小さい頃は 天然パーマ をネタに揶揄(からか)われていた奴で

名前は、悠真(ゆうま)


 もうひとりは、レイヤーロングで、ゆるめのウェーブ。ストンと

下に落ちて、軽やかにキマまっているロングハイレイヤースタイルの、

葵(あおい)だ


オレは、2人に目を配らせたあとに、思わせぶりな声でこう言った


「呪われた教室」


「・・・ふっ・・・」

「バカっ。笑うなよ!」


「そうよね。こんな死に方、聞いたこともなくてっ・・ぷふっ・・」

「いや、クラス全員。今、必死で笑いを堪えてんじゃね?」

「そんなわけ無いだろ。見ろよ1番前の席のやつ

 新友(にとも)とは、仲良かったってきいたぜ

 あんなに必死に、拳を握りしめてさ・・・」



 オレは、振り返り、後ろの席をみた――



そこに座っていたクラスメートは、このクラスで初めて出会った お調子者 で、

よく大きな声で 皆の注目を集め、笑いをとることに人生を掛けているような

感じの子だった。新友(にとも)は、このクラスの ぴりついた空気 を和ませようと

必死になってもいた。とても接しやすく、陽気な子だった。

友達は少なそうだったけど・・


 昨日。それは 不意に起きた現象 だった。

4時限目の『数学』の授業中に、ゆっくりと黒板に 文字が浮かび上がってきた



・他人の背中に、文字を書いてはいけない



 突然の事に、小さな悲鳴を上げる女子がいた

教室の空気がいっきに、凍り付いた。このクラスに流れる 噂っぽい話 が

事実だと、はっきりと知らしめるには、この上なく最高のタイミングだった

――と、オレは思っていた


後ろの席の子が、こんな事を言い出すまでは――


「今さ、背中になんて書いたでしょう?」

「「「はっ?!」」」


 クラス全員が、注目したんじゃないかと思う

静まり返った教室に、あり得ない ひと言


「え、わからなかった?じゃあ、もう一度、書くね」


 そう言って、もう一度、オレの背中に文字を書いてきた新友(にとも)に対して

「空気読め。お前、死ぬぞ」

そう言って、黒板に浮かんだ『消えかかった文字』を指した


それを見た新友は、驚いたような、注目を浴びて嬉しそうな表情で言った


「だ、だいじょうぶだよ。今のは、文字じゃなくて 絵 だから」


 その言葉に、張り詰めた空気が和み、先生が 間髪入れずに こう言った


「新友、真面目に授業をうけろよ」


その言葉に、クラス中が どっと 笑いだしたのを思い出した



 ――それが、まさか口元に飛び込んできた「カエル」を

思わず飲み込んでしまい、運悪く 喉元に詰まらせて、死んでしまうとは


 これが下校中に起きた、最悪の不幸だったとは・・・



 ばんっ!と、音を立てて、

1番前の席の子が、クラスメートに向かって真顔でこう言った


「みんなも、気を付けよう」


「たしかに、カエルは怖ぇよな」

「たしかに」

「たしかに」


「ミラクルだな・・・」

誰かが そう言ったとき、また 教室内で笑いが起きた




 そう、これが「呪われた教室」の真相だと


   ――思い込んでいた――



 たまたまの 偶然の死が――「呪われた教室」の噂のもとに、

なった だけ なんだろうと・・・


 これから始まる 恐怖の序章 に過ぎない事を――


 黒板に浮かんだ 不可解な現象 の事を忘れて――






これが、最初の犠牲者では、無かった事を 知るまで は・・・













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る