第2話:貴女を知りたい
「……私は愛海さんが好きです。付き合いたいって思ってました。けど、二番目の女で満足できるほど都合のいい女じゃないです」
「二番目じゃないよ二人目」
重要なことのように言うが、私には違いがわからない。違いを問うと彼女は「恋人に順位はつけたくない。つけられない」と答えた。つまり、私と彼女を平等に愛していると言いたいのだろう。
「いや、そもそも恋人が二人もいるのがおかしいんですよ。ここは日本ですよ? 一夫多妻制が認められてるわけじゃないんですから」
「それを言うなら、同性婚も認められてないじゃん」
「……それとこれとは別でしょう」
「……ごめん。嫌な言い方した。けど、別じゃないんだ。私にとっては。……私ね、今まで何度も恋をしてきたけれど、好きな人を一人に絞れたことがないんだ」
「……浮気性なんですね」
「ポリアモリーって、知ってる?」
「知りません」
「一夫多妻制のように、複数の人と同意の上で恋愛関係を築くこと。同意の上で。ここ重要ね」
一応、スマホで検索をかけてみる。出てきた。彼女が作った造語ではなく、本当にある概念らしい。一夫多妻制が認められている国があるくらいだから、おかしくはないかもしれない。だけど、やはり私にはまだ理解出来ない。理解は出来ないが、彼女は罵られる覚悟で打ち明けたと言っていた。自分を知って欲しいからと。そこまで言われてしまっては、理解出来ないからと拒絶するわけにはいかない。
「……彼女さんは、私が愛海さんの恋人になることを同意してるって言うんですか?」
「まだ。けど、君が好きという話はしてる。会ってみたいって言ってた」
「彼女もその……ポリアモリー……? ってやつなんですか?」
「いや、違うよ。彼女は一途に愛されるのが嫌なんだって」
「一途に愛されるのが嫌?」
「うん。まぁ、昔色々あったらしくてね。一途な愛情は重く感じちゃうらしい。だから私が良いんだって。自分だけに執着しないからって」
「……自分だけに執着しない……」
自分だけを見てほしいと望む私とは真逆の考えだ。
「嫉妬とか、されないんですか」
「しない。彼女はあんまり人に執着しないんだってさ。だから他人から向けられる恋愛感情に恐怖を抱くんだろうね。多分、彼女の恋も一般的な恋とはちょっと違うんだと思う。恋というか、愛?」
話しているうちに、気付けば彼女に抱いていた最低だという印象はすっかりと消えていた。一瞬消えた恋の炎が再び灯る。やっぱり私はこの人が好き。だけど、他に女が居ても愛せるかと問われると、まだ分からない。
「……会わせてください。恋人に」
私がそう言うと、ずっと陰があった彼女の表情に光が差した。
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