無自覚
はる
無自覚
「俺と康平は幼馴染だったからね。康平は小さい頃から泣き虫で、よく俺の後をついてまわってきた。俺は彼のことが心配だったから、彼が自力で友達を作れるようにそれとなく水を向けたりしたよ。康平は苦手な食べ物も多くて、俺が先に全部食べて、食べられるかどうか判定してやらないと、出されたものを口にすることはなかったな。幼稚園に入園して2ヶ月くらいでやっと環境に慣れてきたみたいで、俺はやっと手が離れるぞって安心したよ」
「僕と遼太は幼馴染だったんだ。彼は僕にとっての灯台だった。いつも導いてくれて、毒味までしてくれて、なのに嫌な顔ひとつしなかった。彼大抵落ち着いていて、口数少なだけど、話すときはみんな彼の言うことを注意して聴いていた。彼はみんなに人気があったけど、でも、一番気にかけてくれたのは僕だって密かに自負してる」
「康平とは小学校で一旦離れたけど、高校でまた一緒になったんだ。それまでも、通っていたプール教室が一緒だったからよく話したりはしていたけれど、制服を着た彼を見るのは初めてで、よくここまで成長したなと感慨深くなったよ。彼は美容に興味が出ていたみたいで、年中肌がつるつるしてた。大抵の女の子より気を遣ってたんじゃないかな。そういえば、高校の頃はクラスであまり話すことはなかったな。少し寂しかったのを覚えてる」
「高校生の遼太はなんか……大人びてた。昔はヤンチャなところもあったんだけど、その頃にはそんなこともなくなって。ちょっと寂しかったのは内緒。グループが違ったから、クラスではあんまり喋らなかったな。彼のほうがカーストが上でね。変に気を遣ってしまっていたかも。家にはよく遊びに行ったよ。彼は料理が上手くてね、特にスパゲティが得意なんだ。よく食べに彼の家に行ったよ。イカスミパスタ、旨かったなぁ。必ず歯が黒くなるから、歯磨きしてから帰ってた」
黒髪の女の子は言った。
「あなた、肌がきれいな子が好きだから」
茶色の瞳の女の子は言った。
「あなた、スパゲティ好きだものね」
彼女たちは、分かったわ、というような顔をして去っていった。
青年たちは首を傾げた。二人の左手の小指には、金のピンキーリングが光っていた。
無自覚 はる @mahunna
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