第68話
『電話してさっそくだけど、ちゃんと自炊だよね?』
天王寺からの電話を受けて、最初に聞いた言葉がこれだ
「ちゃんと自炊だ。メッセージでも伝えただろ。ご飯に関しては冷凍だけどな」
『まぁ声を聞く感じだと、ホントだったみたいね。ご飯に関してはとりあえず今はそれでいいけど。ちゃんとご飯も炊いたヤツ食べなさいよ。炊飯器あるんでしょ?』
やっぱ、前の天王寺とは違う
こうやって電話で話すと、それがよくわかる
『これじゃ、まるで……』
いや、やめとこう
「ちゃんと炊飯器はある。最初の頃は自炊してたしな。まぁたいしたやつは作れないけどな』
『木崎さんの場合、そのたいしたやつじゃないのが心配なのよ。偏ったヤツになってないかってね』
俺の言葉に天王寺がそう言ってきた
「あんな不味い弁当しか作れないお前に言われたくない」
反撃とばかりに、そう言ってやった
『うるさいわね。なんだかんだ言って食べてたくせに…。今に見てなさいよ。驚かしてやるから』
天王寺が拗ねたような感じで、そう言ってきた
「なんだ?今にって?なんか企んでんのか?」
『なにも企んでないわよ。まぁ楽しみにしといてよ』
やっぱなんか企んでんな
まぁいいか
「用件はそれだけか?てっきりデートの誘いかと思ったけどな」
からかい混じりでそう言ってやった
『まぁね。それも悪くないんだけど。次の休みは愛花の家に行くことになってるから。その次の休みかな?デートに誘うのは』
天王寺がそう言ってきた
意外と冷静な反応だな。やけに
『いいよね?とりあえず予定空けといてよ。まぁ大丈夫だろうけど』
「なんだ?休みに一人で可哀想だから、デートに誘ってあげようってことか?」
またからかい混じりでそう言うと
『違うよ。そんなんじゃないよ』
天王寺が少し怒ったような。だけど真剣な声で言ってきた
『わたしもさ、よくわからないけど。でもそういうのでデートに誘うわけじゃないから。それだけは確かだから』
「そうか…」
天王寺の言葉に俺はそう答えた
やっぱり、今までの天王寺とは違う…
『とりあえず、ちょっと聞きたいんだけど。柊からメッセとか電話来てる?答えてほしいんだけど』
天王寺が、少し圧のこもった声で聞いてきた
ヤバい!今それを聞かれるとヤバい!!
「え~と、その……」
『なんでオドオドした声になってんの?変な隠し事しないでって言ったでしょ?やましいことないなら言ってよ』
天王寺はさっきよりも、圧のこもった声で言ってきた
『ショッピングモールの時より怖い…』
そんなことを思ってしまった
「…わかった。ちゃんと話す…」
俺は天王寺に、柊から毎朝LINEメッセージが届いていることを話した
そして、胸をチラチラ見せたノーブラ写真が送られてきてることも
『これはよけいだったな…』
だが言ってしまった以上、もう遅い
『ハァ!?毎朝メッセが届いてる!?しかも胸をチラチラ見せたノーブラ写真が送られてきてるですって!?』
天王寺が怒った声で、そう言ってきた
『毎朝のメッセはまぁいいわ。問題は写真よ!送られてきてる写真!!ノーブラ写真ですって!?あんた!変なことに使ってないでしょうね!?』
「使ってないって。本人は使っていいらしいけど…」
俺がそう言うと
『ふざけんじゃないわよ!!本人が使っていいって言ってても絶対使っちゃダメ!!絶対ダメ!!』
さらに怒った声で、そう言ってきた
『そういうのに使うんだったら……』
「使うんだったら?」
『な、なんでもない!!』
俺がそう聞くと、恥ずかしそうな感じでそう言った
「他には?他には隠してることない?あるなら全部言って!!」
「…わかった。あとは…」
俺はあの日、天王寺に会った夜に柊からメッセージが送られてきたことを話した
内容は話さなかったが…
『その夜ってあの日よね?わたしが木崎さんのほっぺにキスした日よね?……まぁ今日はその内容は聞かないでおくわ。でも次のデートの時に聞くから!削除なんかしないでよ!!やましい内容だったって判断するから!!いいわね!?』
「わかった…」
俺がそう返事すると
「わかったじゃダメ。いつもならそれでいいけど、今回はダメ!返事変えて!!』
「はい。わかりました…」
圧に押される形で、俺はそう返事をした
『それでいいわ。とりあえず今日はこれで電話切るけど、自炊はちゃんと続けること!!いいわね?』
「わかった。ちゃんと続ける」
「よろしい。じゃあまた。とりあえずお休み』
「ああ。お休み」
そう言うと、電話が切れた
「なんかデートの日が怖いな…」
そんなことを呟いた
でも天王寺の奴、最初の時とホント態度違うな
『なんかまるで……』
…変なこと考えるのはよそう
ただの誤解かもしれないし
だけど、少し期待している自分がいる
「そんな期待持つな。あの時と同じみたいだろ」
俺は不意に昔のことを思い出した
なんで今ごろになって思い出してしまうのか
それは天王寺のあの態度が原因だろう
「シャワー浴びて寝るか…」
とりあえず、そうすることにした
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