修羅場編

第54話

「あの!!」

後ろから声がした

「ん?」

なんだ?と思って、振り向くとそこには…

『えっ?』

俺はもちろん、天王寺も他の二人も驚いた

そこには松永さんをフッた、あの男子の彼女

あの黒髪ロングの女の子が立っていたのだ

『なんでここに?』

俺がそう思っていると、彼女は満面の笑みを浮かべた

そして

ガバッ!!

「うわっ!!」

いきなり俺に抱きついてきた

「なんだ、おい!いきなり!!」

「会いたかった!!あれからずっと会いたかったんです~!!!」

そう言いながら、彼女はギューッと俺の体を抱きしめてきた

「はぁ!?全然意味わかんねぇんだけど」

そう言っても彼女は離れようとはせず、さらにギュッと抱きしめてきた

しかも俺の胸に顔をスリスリさせてきた

「ちょっとやめろ!離れろ!!」

「嫌です!!」

ハッ?

「また会いたいって思ってたのに!また会えたのに!!今離れたら、またいつ会えるかわからないじゃないですか!!名前と連絡先!!できるなら住所も教えてください!!お願いします!!でないと、ずっとこのまま離れませんから!!もう絶対!!一生!!死ぬまで!!」

そう言うと彼女は、またさらにギュッと抱きしめてきて、さらに顔をスリスリさせてきた

「ああ、でもずっとこのままでもいいかも🖤だって食事する時も、お風呂の時も、寝る時も一緒ってことですもの🖤でも食事の時はともかく、お風呂とかは恥ずかしいかしら?だってお互い裸ってことですもの🖤でも全然平気🖤むしろ私の裸見てください🖤あなたの裸見せてください🖤そしてその後一緒に寝ましょう🖤そしてそのまま……。キャー-🖤」

『なに言ってんだ、この子?』

ていうか、こんな子だったか?

カラオケルームの時と全然違わないか、おい!

タッタッ

なんか足音が聞こえる……

なんかすごい圧を感じるんだが……

バサッ!!

誰かが、俺とこの子を無理やり引き離した

その人物は

天王寺だった

「あんた、いきなり現れて何してんの?なにワケわかんないこと言ってんの?えっ!?」

その顔は、明らかに怒りに満ちている

元カレにフラれた時や、ごみ処理場で見せていた時とは、比べものにならないぐらいの怒りに満ちた顔だ

「ちょっと!!何するの!!この暴力女!!」

彼女は天王寺に向かって、そう言った

「暴力女!?ただこいつとあんたを引き離しただけでしょ!?それのどこが暴力だっていうのよ!?」

天王寺は彼女に対して、そう言い放った

ものすごい怒気がこもった声で

「そっちこそ何言ってるの!!私見てたんだから!!何度も何度もこの人の足を蹴ってたじゃない!!そんな人が暴力女じゃないって言えるの!?そうでしょう!?その上私とこの人の抱擁を邪魔するなんて!!このお邪魔虫女!!!」

いや、そっちが無理やり抱きついてきたんだろ

「お邪魔虫女!?そっちこそ何ふざけたこと言ってんのよ!!」

天王寺が、顔をヒクヒクさせてそう言った

「あなた、もしかしてずっとつけてたの?いつから?」

相澤さんが、彼女にそう聞いてきた

「ええ、まぁ。この人とあなたたちが待ち合わせですか?それを見かけた時からでしょうか?」

彼女はそう答えた

というと、最初からか?

「なに?あんたストーカーしてたわけ!?ずっと!!

天王寺が、彼女にそう聞いた

「まぁ、そうなりますね。でも私だって、したくてしてたわけじゃありません。この人が一人になるのを待とうと思ったら、そうなっただけです。やましい気持ちはありません」

彼女はそう答えると

「でもでも!もう耐えられなくなって。一人になるのを待ってるなんてできなくて!!だからこうして現れたんです!!」

ガバッ!!

そしてまた、俺に抱きついてきた

「ああ🖤こんなことなら、もっと早く現れてたらよかった🖤そしたらもっと早くあなたのむくもりを感じられたのに~~🖤」

「だーかーら!!いちいち抱きつくな!!」

そう言うと天王寺は、また俺と彼女を引き離した

「どうして邪魔するのあなた!!親戚だからってそんなことする権利はないはずよ!!そうでしょう!!」

彼女は天王寺に向かって、そう言った

「なっ!!わたしとこいつは親戚じゃ…」

「あの~、香織ちゃん。ちょっと聞いてもいいかな?」

松永さんがそう言って、二人の会話に入ってきた

「ああ、愛花さん。あの時はどうも。あなたの聞きたいことはわかってます。洋太君のことですね?」

「うん。洋太はどうしたの?一緒じゃないの?」

「そうよ!愛花をフッた、あんたの最低彼氏はどうしたのよ!?」

松永さんと天王寺の問いに対し、彼女は

「洋太君とはお別れしました。もう彼とは会ってませんし、連絡も取ってません。元々クラスも違いますし、顔も合わせることもなくなりました。お別れした当初は何度も連絡してきましたけど、着信拒否もメッセージもブロックしました」

そうはっきりと言った

なんかあの時とは違う、意思の強さを感じる

「別れた!?どうして!?」

松永さんは、そう聞いてきた

相澤さんは、なにか察したような、これはまずいといったような顔をしている

「どういうことよ、一体!?」

天王寺がそう聞くと

「そうですね。そう思いますよね。当然です。でもしょうがないじゃないですか。『覚めてしまった』んですから。そう。目が覚めてしまったんです私。あの日を境に。もう自分を美化するのはやめよう。自分を着飾るのはやめよう。これからは自分に正直に生きようって。誰になんて言われようと!誰になんて思われようと!」

そう言うと彼女は、俺の方を向いて

「ずっとあなたのことを考えていました!ずっと忘れられないでいました!どうか私と!お付き合いしてください!!」

その瞬間

んんっ!?

彼女は俺にキスしてきた





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る