第50話

書店売り場から、さらに場所が変わって、次に来たのはCD売り場

「なに?なんかみんな、リアクション薄いっていうか、全然な気がするんだけど?」

天王寺が、俺たちを見てそう言ってきた

「なんか二人と違って、意外っいう感じがしないしな。むしろ、やっぱそうかって感じがする」

「うん。全然意外って感じじゃない」

「休み時間とかよくウォークマンで、音楽聴いてるしねぇ~。木崎さんの言う通り、やっぱりって感じだよ」

俺がそう言うと、相澤さんと松永さんが続けてそう言った

「なによ!わたしがどんな音楽聴いてるかは知らないでしょ!?今日はわたしがおすすめのヤツをみんなに教えてあげようっていうのに!」

天王寺がムキになってそう言ってきた

すると

「ハイハイ。ありがと♪よしよし🖤」

そう言って、松永さんは天王寺の頭をナデナデした

「うっー!!だからそういうのやめて愛花!!ただでさえ恥ずかしいのに、こいつの前でされるとよけい恥ずかしいのよ!!」

天王寺が、俺を見てそう言った

顔真っ赤だぞ。お前

「フフッ♪木崎さんに子供っぽいとこ見られたくないのかなぁ?」

松永さんがからかうように、天王寺にそう言った

フッ

俺は思わず笑ってしまった

「だから笑うんじゃないわよ!!全く…。愛花、なんであれ以来子供扱いしてくんの?」

「さぁ?なんででしょうねぇ?♪」

「くっー!!」

意地悪っぽく言う松永さんの顔を、天王寺は悔しそうな顔で見た

「はい。じゃれ合いはおしまい。まぁ咲耶がどんな音楽聴いてるのかは興味あるし。教えてくれると嬉しいわ」

二人の様子を見ていた、相澤さんがそう言ってきた

「よし!さっそく行くわよ!」

そう言うと天王寺は、CD売り場のコーナーに向かった

そのコーナーは、アイドル系のCDが並んであった

「でね。この子なんかいいのよね。顔も可愛いけど、歌声がすっごく良くてさ!わたしの一番の推しなのよ!」

天王寺は意気揚々とした感じで語り出した

『俺がオタクって知った時、すげぇ引いてたけど、お前も似たようなもんだろ』

そう思ったが、あえて言わなかった

人間、好きなモノ語り出したらこうなるもんだ

それにイチャモンつけるのは間違いだ

「へぇ~。咲耶って、こういう可愛い系のアイドルの歌好きなんだ」

「まぁね」

松永さんの言葉に、天王寺はそう答えた

「でもカラオケでは、こういうの歌わないわね?どんな音楽聴いてるのか興味あるって聞いたけど、カラオケで歌うのと同じようなヤツだと思ってた」

「うん。自分が聴いてる歌とカラオケで歌う用の二つに分けてたんだよね。カラオケでは、盛り上がる歌とかがいいかなぁと思って…」

相澤さんの問いかけに、天王寺はそう答えた

『黙って見てるつもりだったけど、少し口出しするか』

そう思って、俺は天王寺に近づくと

ペシッ

頭を軽く叩いてやった

「ちょっと!いきなりなにすんのよ!?」

「お前な。友達同士で楽しむのに、そんなもん分ける必要ないだろ」

俺はそう言うと

「ホントの友達だったら、お前がどんな歌歌おうがちゃんと聴いてくれるし、盛り上がってくれるもんだ。友達をもっと信用しろ」

「別に信用してないとか、そういうわけじゃ…」

天王寺がそう答えてきた

「それなら自分の好きな歌を歌えばいいんだよ。変に壁を作るな。友達のことであんなに悩んで、あんなに泣けるお前なら大丈夫だ」

俺がそう言うと

「ええっ?咲耶、まさかあの屋上の後泣いたの!?悩んでてくれてたの!?」

「へぇ。もしかしてのけ者にされたって考えちゃった?」

松永さんと相澤さんが、天王寺にそう言ってきた

「よ、よけいなこと言うなぁー!!この大馬鹿中年男-!!!」

天王寺がムキになって、俺にそう言ってきた

「ありがとね♪咲耶🖤これはご褒美だよ♪えいっ🖤」

ギュッ

松永さんはそう言うと、天王寺を抱きしめて、自分の胸に天王寺の顔を押しつけた

「ちょっ!やめて愛花!!そういうのいらないから!」

「もう🖤自分の胸の方がおっきいからって、そういうこと言わないの♪ナデナデしてあげるから♪ねっ🖤」

そう言うと松永さんは、天王寺の頭をナデナデした

「うっー!!完全に子供扱いじゃん、わたし!!いつからわたし、こんなポジションになっちゃったのよー!!!」

天王寺は半泣き声で、松永さんの胸の中でそう言った

ホント面白い。こいつ

「さ、最後はあんたの番よ!どうせあんたはガンプラとかでしょ!?」

天王寺は、松永さんの胸から顔を離すと、俺にそう言ってきた

「まぁそうだな。そうなるな」

「ほら見なさいよ。あんたの方がよっぽど意外性ないじゃない。この意外性ゼロ中年男!!」

「まぁ、俺の方はいいって」

俺がそう言うと

「いえ。むしろあたし、そっちの方が興味あるんで。あたしもガンプラってよく知りませんし。弟がそういうの好きなんですけど…」

相澤さんがそう言ってきた

弟がいるのか、この子

「私も咲耶の作ったヤツ見たら、なんか興味出てきちゃって。それにこれは木崎さんへのお礼を兼ねた親睦会ですし。遠慮することないです」

続けて、松永さんがそう言ってきた

俺への礼っていうの忘れてなかったんだな

てっきり忘れてると思ってたけど

「まぁ、二人がそう言うならそうするけど…」

「「はい!!」」

俺がそう言うと、相澤さんと松永さんが同時に言ってきた

『なんかこういうの悪くないな』

俺がそう思って、笑みを浮かべると

ドカッ!!

天王寺が思いきり蹴っ飛ばしてきた

「お前な。そうやっていきなり蹴飛ばすのやめろ」

「うるさい!!デレデレしちゃってんじゃないわよ!!!さっさと行くわよ!!」

イヤ、悪くないなとは思ったけど、デレデレはしてないぞ

たぶん

ていうかお前

『そんな不機嫌な顔すんな。勘違いするだろ』

なにを勘違いするのかはわからないが、天王寺の顔を見て、何故かそう思ってしまった





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