第49話

ぬいぐるみ市場から場所は変わって、今度は書店売り場

俺たちがいるのは漫画コーナー

そして、今俺たちがいるところは

「ねぇ卑弥呼。ここって少女マンガばっかだね」

「なんか恋愛モノがたくさん並んであるね」

天王寺と松永さんが、相澤さんにそう聞くと

「うん…。あたしさ、少女マンガ好きなんだよね。特に恋愛モノの…」

相澤さんは照れくさそうな顔で言った

まぁ、気持ちはわからなくはないな

「へぇ~意外だねぇ♪卑弥呼って、こういう乙女なマンガ好きなんだぁ~♪」

松永さんが、からかう感じで言ってきた

「空手二段の有段者の卑弥呼がねぇ~♪」

続けて天王寺が、そう言いながら、相澤さんに顔を近づけていった

「それとこれとは関係ないでしょ!!」

相澤さんが、天王寺にそう言い返した

確かに関係ないないな

「あたしの父親ってさ、その、武道家気質っていうの?『健全な肉体にこそ健全な精神が宿る』って感じでね。小さい頃から空手の道場に通わせてさ。女の子っぽいこととかさせてくれなかったのよ。その反動かな?一度読んだらハマっちゃって」

そういう親、まだいるんだな

「なんかさ、ほら、イメージっていうの?そういうの気にしちゃって…。なんか二人に話したらからかわれそうな気がして…」

「確かにねぇ~。女子から王子様みたいって言われてるからねぇ~♪」

「そうそう♪確か告られたことあったね。女の子から♪」

天王寺と松永さんが、それぞれそう言った

「やめてよ、その話!未だにそういう子がたくさん寄ってくるんだから!」

相澤さんが、恥ずかしい顔で言ってきた

「相澤さん。親には隠してんの?こういうの好きってこと?」

俺は、相澤さんにそう聞くと

「ああ、いえ。親にはもうバレてて…。『こんな本、好きになる娘になるなんて』って父には泣かれて…。でも母の方はなにも言いませんでしたね。むしろなんか喜んでました。『ちゃんと女の子なところがあって良かった』って」

相澤さんはそう答えた

どうやら母親は理解がある方みたいだな

「別にこういうの好きだからって、恥ずかしがることないんじゃないか?むしろ逆に好かれるかもな。ギャップ萌えってヤツで」

「そうだよ。木崎さんの言う通り!だって猫のぬいぐるみ見てる卑弥呼、すごい可愛かったよ♪」

俺の言葉に、松永さんが続けてそう言ってきた

「ああ。俺も少しは読むしな。少女マンガ」

「えっ?木崎さんも読むんですか?少女マンガ?」

俺がそう言うと、相澤さんが驚いた様子で聞いてきた

「まぁ雑誌は買わないけどな。コミックスの表紙見て、面白そうな感じしたら買うな。昔はどうも買いづらかったけど、一度買ったら平気になるな。そんなもんだろ?」

「はい!その気持ちわかります!!あたしも最初そうでしたし」

だろうな。みんな最初はそんなもんだ

「あの。これ、こないだ出た新刊なんですけど、良かったら読んでください。すごい面白いですから!」

相澤さんが並んでいる本から、一冊取って、俺に渡した

「ああ。じゃあ、俺も読んでみるか」

「はい!ありがとうございます!!」

俺がそう言うと、相澤さんが笑顔でそう言った

『天王寺とは違って、素直だな』

俺がそう思っていると

ドカッ!

天王寺が、足を蹴ってきた

「何すんだお前。いきなり」

「うるさい!この少女趣味中年男!!デレデレしてんじゃないわよ!!」

「別にしてねぇだろ。だとしても、お前には関係な……」

ドカッ!

また足を蹴ってきた

「うるさい!卑弥呼に色目使ったって無駄よ!正拳突き食らって、病院送りにされるだけなんだから!!それに卑弥呼は巨乳じゃ…」

そこまで言うと、天王寺はハッとした顔で相澤さんを見た

「あたしは…なに?なんて言おうとしたの?咲耶?ちゃんと言ってくれる?場合によっては、あなたに正拳突き食らわせることになるけど…。それでもいい?」

相澤さんは笑顔でそう言った

だがその笑顔には殺気を感じる

また地雷踏んだな。天王寺

「い、今のなし!ほんの冗談だから。だから落ち着いて、ねっ?卑弥呼」

「ええ。わかったわ。でも次はないから」

「は、はい!!」

相澤さんのその言葉に、天王寺はそう答えた

次に地雷踏んだら、死ぬぞ天王寺。マジで

「じゃあ一緒にレジ行きましょうか、木崎さん。二人はそこで待っててね」

相澤さんは俺にそう言うと、二人に向かってそう言った

すると

「わ、わたしもついてくわ!大切な友達をそんな中年男と二人きりになんてさせられないし!」

天王寺がそう言うと、松永さんが口を押さえていた

『なんか笑ってないか?』

相澤さんの方を見ると、彼女も笑っていた

どういうことだ?

「じゃあ咲耶も一緒に行きましょ♪邪魔しないでね♪」

相澤さんはイタズラっぽい感じで、天王寺にそう言った

邪魔ってなんの邪魔だ?

「っ!意味わかんないこと言わないで卑弥呼!」

天王寺が、顔を真っ赤にしてそう言った

なんなんだ一体?

「さっさと行くわよ!どうせ次はわたしの番だし!」

「ああ、そうか…」

俺がそう言うと

「なによ?反応薄いわね?」

「ああ、お前の趣味って意外性なさそうなんでな」

ドカッ!

またもや天王寺は足を蹴っ飛ばしてきた
















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