第45話 咲耶side①

時は放課後

今、わたしと卑弥呼と愛花の三人は、ファストフードにいる

わたしは、先日の木崎さんとの電話のやり取りを二人に話していた

「というわけよ。なんだかんだで、美味しい手料理が食べたいんだね。あいつ」

「ふーん。手料理ねぇ。お礼してくれるなら、それがいいって言ったわけだ。木崎さん」

わたしの話を聞いて、愛花がそう言った

チクッ

まただ

『木崎さん』って愛花が言った瞬間、またチクッってした

「まぁ、ある意味無難な答えだね。ていうか咲耶、なんか無理やり言わせたって感があるよ?」

卑弥呼が、そう聞いてきた

「そうかな?」

「そうだよ。だってお礼なんていらないって言ってたんでしょ?木崎さん」

チクッ

まただ

卑弥呼が『木崎さん』って言った瞬間、またチクッってした

二人とも、深い意味で言ってるわけじゃないのに…

どうして…

「あとさ。咲耶、なんかお礼を口実にしてない?木崎さんに会うための」

「えっ?そんなことないよ。あるわけないじゃん」

卑弥呼の問いに、わたしはそう答えた

またチクッってしたけど、それよりもお礼を口実にしてるっていう言葉の方に、より反応した

「そう?まぁいいけど」

卑弥呼。だからその見透かしたような顔やめて

「でも咲耶の話だと、コンビニのお弁当ばっかり食べてるんでしょ?そんなのばっかりで、よく今まで平気だったね」

「でしょ?あいつ、今年で40のアラフォーよ?今までは大丈夫だったろうけど、これからもそんなん続けてたら、今に倒れるわよ」

愛花の言葉に、わたしはそう答えた

すると

「ねぇ、咲耶…」

「ん?何?」

「なんでもない」

愛花がなにか言いかけたが、途中でやめた

「何よ。はっきり言ってよ。そういうのは無しにしようって言ってたくせに」

「それとこれとは別。ただね…」

「ただ?」

「前の咲耶より、今の咲耶の方が良いなぁって感じがするよ」

そう言うと愛花は、わたしの頭をナデナデした

「ちょっ!何すんのよ。いきなり!」

なんかすごく恥ずかしい

「フフッ🖤」

あの一件以来、愛花はいつもこんな感じで接してくる

まぁいいけど。悪い感じしないし

でも、いきなり頭ナデナデはやめて

「二人でじゃれあってないで。話の続きしよ」

「う、うん」

「は~い🖤」

卑弥呼の言葉に、わたしと愛花はそう答えた

「まぁ、家に押しかけるわけにもいかないでしょ。まだよく知らない人の、しかも大人の男の人の家に入るっていうのには抵抗あるし。咲耶だって、木崎さんの住んでるとこ知らないんでしょ?」

またチクッとした

でも平静を保てないほどじゃない

「当たり前でしょ?まだそんな仲じゃないし。それに想像だけど、大人の人の部屋って感じじゃないと思うな。強いて言えば『男子の部屋』ってイメージがするよ。たぶん」

「まだ、ねぇ…」

わたしがそう答えると、卑弥呼が意地悪な顔で見てきた

「へ、変なこと想像しないでよ!そんな仲になるつもりないし!!」

「じゃあ、なんで『まだ』って言ったのかなぁ?」

今度は愛花が、からかうような顔で言ってきた

「やめてよぉー!!二人とも!!」

「ハイハイ。怒らない怒らない。いい子いい子🖤」

愛花はそう言って、またわたしの頭をナデナデした

『くっー!子供扱いされてる。これも全部あの中年男のせいよ!』

そんなことを思っていると

「でもさ、なんで『男子の部屋』ってイメージがするのよ?」

「ああ。それはね…」

卑弥呼がそう言ってきたので、わたしは自分のスマホを出して、ロックを外し、木崎さんのLINEのプロフィール画像を見せた

「これ何?ロボットだよね?私、そういうの詳しくないからよくわからないけど…」

愛花。あんたの気持ち、よくわかる。わたしもまだ、よくわからないもん

「ああ。これ、ガンダムだね。なんか最近のやつみたいだけど」

木崎さんのLINEのプロフィール画像を見た、卑弥呼がそう言った

「卑弥呼、あんたわかるの?!これ」

思わず聞いてしまった

「ああ。ウチの弟が好きでさ。よく観てるんだよね。あたしもそんなに詳しくは知らないけど。それ関係のプラモデル、よく買ってきてるの見るよ」

卑弥呼、弟がいたんだ。初耳だ

「それってもしかして、ガンプラっていうヤツ?」

「ああ。確かそういうのだって言ってたっけ」

「へぇ。木崎さんって、そういうの好きなんだ。だから咲耶、『男子の部屋』ってイメージがするって言ったんだね」

またチクッとした

「ま、まぁね。木崎さんって、そういうの好きみたいでさ。なんか色々作ってるみたいなんだよね。前に誘ったのが、実はそれがなんなのか知るためなんだよね。で、一個買って、作ってみたんだけど…」

「ああ。咲耶からのお誘いデートね」

「まぁね…。そういうこと…」

愛花の言葉に、わたしがそう答えると

「今度は否定しないんだ」

しまった!!

卑弥呼の言葉でハッとした

デートだって認めたようなもんじゃない、今の!!

「え~と。その…」

「咲耶。それ写真に撮ったりした?そうだったら見せて」

さっきの言葉を、なんとか否定しようとしてる時に、愛花がそう言ってきた

仕方ない…。諦めよう

「ああ。これなんだけど…」

わたしは愛花に、自分が作ったガンプラの写真を見せた

「なんかちっちゃいね。もっと大きいのかと思った」

「そうね。弟が買ってきてるヤツは、もっと大きいのなんだけど…。色々あるの?」

卑弥呼も、その写真を覗き込んで見て、そう言った

「ああ。なんか色々あるみたいなんだよね。HGとかMGとかRGとか。自分で選んだヤツ持っていったら、なんかこっちにしとけって言われて。SDとかいうらしくてね。一回きりにするなら、これがいいって」

わたしがそう答えると、二人は「ふーん」と言って、わたしを見た

「で、どうだったの?作ってみて」

「思ったより楽しかったかな…。意外と面白かった」

愛花の問いに、わたしはそう答えた

これは本当だ

一回きりにするには勿体ないくらい

「ふーん。でもなんか思いついたかも」

「なにが?」

「木崎さんへのお礼」

チクッ

「何それ?教えて」

卑弥呼にそう聞くと

「まぁ、これから説明するけど、親睦会みたいなもんかな?」

「「親睦会?」」

わたしと愛花は、顔を見合わせて、そう言った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る