親睦編
第44話
「初夏も終わりか」
社員食堂で昼食を食べ終えた俺は休憩室にいた
俺はタバコは吸わないので、他の社員がいる所とは別の所にいる
そういうこともあるのか、俺は他の社員とは、あまり馴れ合わない
高橋ぐらいか。色々話してくるのは
あのカラオケ店の一件から数日が過ぎた頃、天王寺からメッセージがきた
あのポニーテールの女の子
愛花っていう女の子は、どうやら元気になったそうだ
そのメッセージのあと、天王寺は電話に切り替えて、その喜びをものすごいテンションで伝えてきた
『あいつって、あんなキャラだったんな。意外だった』
その時の天王寺の声を思い出して、思わず笑みがこぼれた
『まぁ、あいつも元気になって良かったな。すげぇ落ち込んでたし』
あいつが元気ないと、なんか調子が狂う
まだ数回しか会ってないのに、何故かそう思ってしまう
『あいつに出会って以来、なんか目まぐるしい感じになってるな』
まぁいいか…
『そういえば、あの時の電話で……』
天王寺が、愛花っていう女の子が元気になったことを伝えてきた際の電話のやりとりを思い出した
『でね。二人ともさ、木崎さんにお礼しなきゃって言うのよ。お礼されるなら、どんなのがいい?』
「お礼ね…」
俺が一瞬、沈黙すると
『言っとくけど!!エッチなのとか、そういうのはダメだからね!!わたしの大切な友達にそんな要求したら、ぶっ飛ばすわよ!!!』
まるで釘を刺すかのように、天王寺が言ってきた
「そんな要求しねぇよ。安心しろ」
俺がそう言うと
『それならいいのよ。あんたがそういうことしないってことはわかってるし…』
なんか最後の方はゴニョゴニョした感じで言ってきた
「なんか恥ずかしがってないか?お前」
『は、恥ずかしがってなんかないわよ!自惚れないで!!この巨乳派ドスケベ中年男!!』
「なんでそうなんだよ」
俺がそう聞くと
『うるさい!わたしの胸ジロジロ見てたくせに!!あんたが巨乳派だってことは、もうわかってんのよ!!あんたなんかにわたしのFカップの胸は、絶対触らせないから!!』
「Fカップあんのか、お前」
いいこと聞いた
『しまった!口が滑った!!いい?変な妄想は絶対しないでよ!そんなことしたら、卑弥呼に頼んであんたに正拳突き食らわせてもらうから!!わかった?!』
「ハイハイ。そんなことしないから安心しろ」
やっぱ、こいつと話してると面白いな。ホント
『クッ!ま、まぁいいわ。で、どうなのよ?お礼されるなら、どんなのがいいの?』
「そんなもんいらねえって。別に。二人にもそう言っとけ」
天王寺の問いに、俺がそう言うと
『人の善意はちゃんと受け取りなさいよ!だから彼女できないのよ!!』
「余計なお世話だ」
『そう思われたくないなら、真面目に答えなさいよ!!わたしだって……』
「どうした?」
『な、なんでもない!!いいから答えて!!』
お礼ね…
そんなもんいらないんだが、とりあえず答えとかないと、引き下がりそうにないな
「……飯」
『飯?』
「ああ。あの時お前に言われたからか、なんか手料理みたいなのが食べたいって気分になってな。お礼してくれるなら、そういうのがいい」
半ば適当にそう答えた
別に期待はしてないが、あの時の天王寺との電話でそう思ったのは事実だ
なんとなくだが…
『そうきたか。う~ん……』
「いや、無理ならいいぞ。ホントに」
なんか真剣に考えてないか?おい
『わかった。二人にそう言ってたって伝える。やっぱ、ぼっち飯は寂しいんだね。木崎さん』
天王寺が、からかうような感じで、そう言ってきた
「いや、ホント無理するなって。マジで」
『まぁ、とりあえず伝えとくことだけはするから。それから木崎さん…』
「まだなんかあんのか?」
『木崎さんが、わたしの親戚のおじさんじゃないってこと、バレちゃったから。それじゃ!!』
「おい!ちょっと待っ…」
ツゥーツゥー
「一番肝心なこと、最後に言って切りやがって……」
俺はあの時の電話のことを思い出して、そう呟いた
『そういうのは、最初に言えよ。全く…』
俺がそんなことを思い出していると
「先輩、ここにいたんすか。そろそろ午後の仕事始まりますよ?」
高橋が俺に、そう声をかけてきた
「ああ、わかった。すぐ行く」
俺はそう言って、座っていた椅子から立ち上がった
「先輩」
「なんだ?」
「やっぱなんかあったんすか?なんか楽しそうっすよ。最近」
ドカッ
俺はそう言った高橋の足を蹴り飛ばした
「痛いっすよ。先輩。何すんですか?」
「うるさい。さっさと行くぞ」
楽しそう…ね
確かにそうだな…
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